3年前、浜松市で偶然見つかった新種の桜。浜名湖桜と名付けられ、企業の力も借りながら市が苗木を増やそうと取り組みを進めている。
園の入り口付近にひっそりと…
浜松市中央区にある「はままつフラワーパーク」。

約30万ヘクタールに及ぶ広大な園内では、四季折々の草花を楽しむことができ、年間40万人が訪れるなど多くの人に親しまれている。
このフラワーパークの入り口付近に立つ1本の木。

2024年に“浜名湖桜”と名付けられた桜だ。
職員が植えたわけではなく、種から自然に生えたことから建物と花壇の間で窮屈そうに立っていて、同園の山下重善 技監によれば「木の状態からすると10年近く前に種が落ちて、そこから大きな木になったと認識している」という。
専門家の調査で“新種”の桜と判明
園内ではないこともあり、当初は職員も気に留めていなかったが、ソメイヨシノよりも開花が1週間から10日ほど早く一回り大きな紅色の花を咲かせることから専門家に調査を依頼。
すると3年前に新種の桜であることがわかった。

カンヒザクラやオオシマザクラ系統の桜が関係する雑種とみられ、山下技監は「ここで誕生した桜だと認識している。地域に根付いた浜名湖の名前が付いているので、来園者に親しまれる、見て喜んでもらえる桜になってほしい」と期待を込める。
浜名湖桜を広めるために頼ったのは…
しかし、現状では国内に1本しかないため、市は地元の象徴とすべく、貴重な浜名湖桜を守り、広めていこうとキリンビールを頼った。

キリンビールは花見や花火大会でビールが楽しまれてきた恩返しとして、地域の風物詩の保全や継承を支援する「晴れ風アクション」に取り組んでいて、今回、売り上げの一部を浜松市に寄付。
そして、市はこの支援金をもとに茨城県の生産者に苗木を増やすことを依頼した。

成功した暁にはフラワーパークの園内に植えるほか、倒木を防ぐため市内で老朽化した桜の植え替えに使うなど保全に向けた活動に生かしていく考えで、浜松市緑政課の二橋浩司 技監は「非常にありがたい。自分たちだけではなかなかできないところを支援してもらうことで、(浜名湖桜を)多くの人に知ってもらえる」と感謝の思いを口にする。

いつの日か浜松市を“象徴”する桜に
3月27日。
浜名湖桜は早くも見ごろを迎えていた。

来園者たちからは「かわいくて色も濃いしキレイ」「(浜名湖桜を)初めて知ったが、地元の名前が付いていて親近感が湧くし有名になってほしい」といった感想が聞かれ、二橋技監は「早咲きの桜とソメイヨシノとの間をつなぐ、フラワーパークならではの桜になってほしい」と話す。

いまは1本しかない浜名湖桜。
しかし、関係者はいつの日はフラワーパークを、そして市を象徴する桜へと成長させていきたいと意気込んでいる。
(テレビ静岡)