元受刑者などの更生支援に取り組む建設会社社長のドキュメンタリー映画が、宮城県石巻市で上映されました。支援の取り組みのきっかけとなった石巻の地で、更生支援への理解や、命の大切さを訴えました。
3月22日、石巻市で上映された「おまえの親になったるで」。大阪の建設会社社長・草刈健太郎さん(52)が、罪を犯した人の更生支援に取り組む姿を追ったドキュメンタリー映画です。
草刈さんは2005年、当時25歳の妹・福子さんをアメリカ人の夫に殺害されました。犯罪者への憎しみを抱いていた草刈さんが、更生支援に取り組み始めたきっかけ。それは、石巻市の日和山で行った復興支援でした。
草刈健太郎さん
「ここガラッと変わって。家も手前まで流されているような状態で墓石も全部倒れているような状態で」
東日本大震災発生直後から、支援物資の配布や炊き出しを行っていたという草刈さん。復興支援イベントの協力をもらった飲食店経営の社長から、元受刑者に就職先や住まいを提供する活動への協力を持ちかけられました。当時、その社長は草刈さんが犯罪被害者の遺族であることを知らなかったそうです。
草刈健太郎さん
「なんで俺なのって。いろいろ協力してもらったので断わることができなかった。恨みもまだありますし、ちょっとやって、ある程度やったらやめようと思っていた」
草刈さんはその後、元受刑者や少年院を出た人、35人を雇用してきました。約束を裏切られるなど一筋縄ではいかない更生支援ですが、感動することもありました。
草刈健太郎さん
「ギャンブル依存症のやつが仕事依存症になって、むちゃくちゃ仕事頑張ってくれるやつもいる。人って機会の提供で分からないもんだなって思った。加害者支援を何ですんねんって言われたら、ほんまに被害者を作りたくないから」
法務省の調査によりますと、刑務所や少年院を出た後、仕事があるかないかで再犯率には約3倍の違いがあることが分かっています。石巻での支援を通じて、命の大切さや今後の生き方について考えさせられたことも背中を押しました。
草刈健太郎さん
「妹を亡くしていつ死んでもええわって思っていたんだけれども、こういうところに来させてもらって、命のありがたみを反対に感じさせていただいた」
草刈さんが参加している更生支援は「職親プロジェクト」と名付けられていて、2022年には宮城支部が発足しました。保護司に加え、企業も親代わりとなって職と住まいを提供することで再犯を防ぎ、犯罪被害を減らすことを目指しています。
草刈さんの映画の上映会には、宮城支部に参加し、実際に雇用に取り組んでいる人の姿もありました。参加14社でこれまであわせて7人を採用し、人材定着を図っています。草刈さんは、支援の始まりとなった石巻の地で、更生支援への理解や地域の子供たちの孤立を防ぐことの重要性を訴えました。
草刈健太郎さん
「自分の子供のようにかわいくなってくる。そういう中で関心を持っていただいて、みんなで、まちで一緒になって今の子供たちを、犯罪をひとりでも起こさない子供たちを育てていってもらえたらうれしい」
来場者
「被害者の遺族なのに再犯しないように力添えするのは並大抵のことではない。こういう人がいるから世の中が良くなっている」
「居場所がないとまた罪を犯すということがある。あのように迎え入れて仕事を与えるということ、すごく感動しました」
東日本大震災の発生から14年となった3月11日。児童と教職員合わせて84人が死亡、または行方不明となった大川小学校に草刈さんの姿がありました。復興支援の縁で、児童の遺族とつながり、追悼行事を支援しています。
草刈健太郎さん
「災害はいつ起こるか分からない。それを風化させないためにやることが私の使命なのかなって思います。命はもう帰ってこないので、それに対して私らが次のこういうことが起きないようなことを伝えていくっていうのが私らの仕事」
災害からも犯罪からも命が守られることを願って。これからも、できる支援に取り組み続けます。