“閉園決定”のノースサファリ―動物移転には高いハードル
「ノースサファリサッポロ」で飼育されている150種500匹以上の動物たち。
行き先が決まらず宙に浮いたままだ。
札幌市民から「動物を引き取れないか」という意見が寄せられている札幌市円山動物園では。
「われわれの施設はこれが限界だと思っています。安易に受け入れることはできない」(札幌市円山動物園 前野 良史 飼育展示・診療担当課長)
動物の移転には高いハードルが。
そんな中「ノースサファリサッポロ」の運営会社が、静岡県のテーマパークの経営権を取得。
一部の動物の飼育を検討していることが明らかになった。
動物たちの行方はどうなるのだろうか?

開発制限区域に“無許可建築” 札幌市が内部資料公開
ずらりと並ぶ獣舎などの写真。
「ノースサファリサッポロ」の違法建築物の数々である。
UHB北海道文化放送の情報公開請求により開示された札幌市の内部資料で全554ページ、6cmの厚さとなる。
開発が制限される市街化調整区域に、無許可で156棟の建物を建設していた。
運営会社の「サクセス観光」は3月10日に突然、9月末での閉園を発表した。

こちらは3月16日の園内の様子。
撮影した人によると、来園者からは動物の行き先を心配する声が上がっていたということだ。
「動物の移動について、いつ、どこへ、どのようにという内容は知らされていないので、その内容が現実的なのか判断がつかない」(秋元 克広 札幌市長)
札幌市に提出された違法建築物の撤去計画には、150種500匹以上とされる飼育動物をどうするか記載されていなかった。
札幌市には市民から「札幌市円山動物園で引き取れないか」という意見も寄せられている。
それは可能なのだろうか。

札幌市内の動物園への移動は可能か?
札幌市円山動物園ではオスとメスのライオン2頭を、冬は屋内の2つの部屋で飼育している。
広さは合わせて約80平方メートル。
ここで新たなライオンを飼育することができるのだろうか?
「われわれの施設はこれが限界だと思っている。他の個体を入れるとなると、闘争を起こしてしまう危険性がある。仮に依頼があっても、受け入れは難しいと答えざるを得ないと思う」(前野課長)
ライオンは群れを作る動物で、ひとつの群れにオスは原則1頭である。
同じ空間で2頭を飼育するとストレスがかかり、傷つけ合ってしまうのだ。

ライオン1頭の餌代は“年間35万円”―費用への懸念
さらに、こんな懸念も。
「一般的に動物を入れる場合、動物園同士で個体の情報のやり取りをする。例えば病気の状態や健康の状態など」(前野課長)
好みの餌や飼育の仕方など細かい情報をやり取りして、数年単位で調整するのが一般的だという。
そのような情報がないと。
「感染症などの病気を持っている可能性が非常に高いので、健康状態をチェックしてから入れることになる。そうしなければ、われわれが飼育している動物たちに健康上の影響が出てしまうことになる」(前野課長)
飼育のための費用も問題だ。
オスのライオン1頭の餌代は年間35万円。
動物園全体の144種類606匹では、年間約6600万円かかる。
ライオンの飼育員は主に2人だが1頭増えれば増員が必要で、その費用もかかる。

「動物を飼う以上、最後まで面倒をみるということが必要」
ライオン以外の動物でも。
札幌市円山動物園では4頭のアザラシを飼育している。
仮に1頭増えるとなると、こんな問題が。
「水が汚れやすくなるので、病気や皮膚炎を引き起こす可能性が出てくる。水をきれいにする『ろ過装置』は今の飼育頭数で限界。現在飼育している動物に影響が出てしまうので、受け入れられないということになってしまう」(前野課長)

このように、他の施設が動物を引き取るにはかなり高いハードルが存在する。
「同じ動物を私たちも扱っているのでわかるところもあるが、動物を飼う以上最後まで面倒をみるということが必要。その責任を果たせないということになる」(前野課長)
「ノースサファリサッポロ」の閉園まで、あと半年あまり。
飼育されている動物たちの行方は一体どうなるのだろうか。
