第三者委員会による調査が進む中、イット!では「フジテレビの反省」と題し、一連の問題を巡るフジテレビの対応についてシリーズでお伝えしています。
5回目の3月12日は、旧ジャニーズ事務所の性加害を巡る問題で陣頭指揮を執った林眞琴元検事総長に宮司愛海キャスターが話を聞きました。
宮司愛海キャスター:
一連のフジテレビの対応は、どのようにご覧になりますか?
元検事総長・林眞琴氏:
一番の今回の問題点は、フジテレビが当該事案を把握した後の対応の問題、そこに表れているフジテレビという会社のガバナンスの欠如、あるいは、ガバナンスの不全、ここにあると考えています。
検察トップの検事総長を務めた林眞琴弁護士。
在職中にはブラックボックスとの批判もあった検察の取り調べの可視化など、様々な組織改革に携わり、退官後は旧ジャニーズ事務所の性加害問題で再発防止特別チームの座長を務めました。
宮司愛海キャスター:
当時の旧ジャニーズ事務所の会社の皆さんには、どのようなことをおっしゃったのですか?
元検事総長・林眞琴氏:
ガバナンス不全を解消するため、当時の社長の辞任を求めた。一企業として、再出発するだけじゃなく、この際、ジャニーズ事務所が率先して、積極的にエンターテインメント業界を変えていくんだと、こういった姿勢で臨んでもらいたいと伝えた。
旧ジャニーズ事務所に対して、率先して変えていく姿勢が大切だと伝えた林元総長。
今のフジテレビに必要なものを聞きました。
元検事総長・林眞琴氏:
フジテレビにはぜひ、「ビジネスと人権」という考え方に立って、再出発してほしい。
フジテレビは2月末に再発防止と再生・改革に向けた6つの施策を公表。
「コンプライアンス体制の強化」「ハラスメント・人権侵害等への処分の厳格化」「通報制度の範囲の明確化・周知徹底」「会食・会合ガイドラインの策定」「研修・トレーニングの実施」「人権デューディリジェンスとしての『対話』」の6つの中で、林元総長が評価したのは、「人権デューディリジェンス」です。
人権デューディリジェンスとは、企業が自らだけでなく、関係取引先も含めた人権のために努力するという考え方です。
元検事総長・林眞琴氏:
(社内外と)対話を始めるのは非常に重要。従来の人権方針というのは、企業は専ら、自分の会社の中での人権侵害を防ぐ、この責務があり、それに主眼が置かれていたわけです。「ビジネスと人権」では、それだけでは不十分だと考えます。事業を通じて関係のある取引先であるとか、ビジネスパートナーに対しても人権尊重を求めて、そこにおける人権侵害を防いでいく責務があるんだと。人権デューディリジェンスでは、自社だけではなく、例えば芸能事務所などの取引先など、ビジネスに関わる全ての人が対象となります。
この考え方のもと林元総長が指摘したのは、トラブル発覚後の中居氏への対応です。
元検事総長・林眞琴氏:
中居氏はフジテレビにとって取引先、あるいはビジネスパートナーです。「ビジネスと人権」の考え方に立てば、フジテレビは中居氏のもとで行われている人権侵害(の可能性のある問題)に対し、決して無関心であってはいけない。
そのうえで、中居氏への正式な調査が行われていなかったことやトラブル発覚後も番組を継続したことを問題視しました。
また、林元総長は「第三者委員会の調査報告を待たずにガバナンス改革を行うべきだ」と話し、最後にこう強調しました。
元検事総長・林眞琴氏:
私は常々、不祥事は組織を変える最大のチャンスだと思っています。ぜひ中堅・若手はワーキンググループで大暴れして改革を進めていってもらいたい。
フジ・メディア・ホールディングスでは、旧ジャニーズ事務所の問題を受けて2023年に人権方針を示しています。
その適用範囲には、役員と従業員だけでなくビジネスパートナーも含まれていました。
今回はこういった人権方針がありながらもトラブルが起きてしまったということです。
青井実キャスター:
フジテレビは再生・改革に向けて6つの施策というのを進めているわけですが、ここからどういうことが必要になっていくかですよね。
宮司愛海キャスター:
林さんに伺いますと、現場が取引先に強い意志を伝えることは時に難しいこともあると。これを乗り越えるためには、会社のトップによる「やり遂げるのだ」という強いメッセージを内外に発信して、フジテレビの強い意志を示すことが必要だとおっしゃっていました。さらには、それを社員一人一人がしっかり受け止めて理解して守っていくことが必要だと感じました。