北海道帯広市で2023年に閉店した人気の喫茶店が、2025年1月に復活した。

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経営に乗り出したのは、地元出身の20歳の女性。

店には「ある条件」がつけられていた。

40年以上続いた喫茶店を引き継いだ若者

ナポリタンにクリームソーダ、そしてサクランボがのった固めのプリン。

帯広市大空町にある喫茶店「イエローストーン」だ。

「おはようございます。よろしくお願いします」(伊藤瑠花さん)

イエローストーンを経営する、伊藤瑠花さん(20)。

開店前におにぎりセットの卵焼きを作るという。

「(自信は)ないです。いつもうまく焼けなくて…。(Q:出来はどうですか)かなりうまくできました」(伊藤さん)

「イエローストーン」引き継いだ伊藤さん

伊藤さんはこの町で生まれ育った。

高校卒業後、市内の専門学校で調理師免許を取得し、19歳で上京。

渋谷のレストランのキッチンスタッフとして働いていた。

「夏に帯広に帰って来る予定があって『間借りカフェ』をやろうかなって思ってて、店舗を探していた時に母から『イエローストーン空いているよ』って」(伊藤さん)

40年以上続いたイエローストーンは、2023年に当時のオーナーが体調不良のため閉店。

伊藤さんの家族も手伝い、朝から晩まで壁紙の張り替えや清掃作業に追われた。

店名をそのままに、2025年1月にオープンした。

「壁の色をぜんぶ赤くして、赤が好きなので。ステンドグラスは親戚のおばさんが作っていて、貸してもらって付け替えました」(伊藤さん)

伊藤さんがメニューで大切にしているのは、ソーセージやマッシュルームなど具だくさんのナポリタンや、地元の焙煎所の豆を使ったコーヒー、そして自家製の固めのプリンだ。

QUEEN流れる昭和レトロな店内

「ジャケットみて決めてるんです。友だちがレコード好きで持ってきてくれて。最近、QUEENを流しています」(伊藤さん)

午前11時、開店。

平日にもかかわらず、続々と客がやってくる。

「きょう初めてなんですよ。いいですね、昭和の雰囲気の喫茶店」

「前のオーナーの時から来ている。変わらずおいしいです」(いずれも男性客)

こちらの2人組、まず注文したスイーツの撮影タイムだ。

「かわいいし、おいしい」

「だんだんなくなってきているので、少しでも残ってほしい雰囲気のお店」(いずれも女性客)

伊藤さんの「好き」が詰まった喫茶店。

昭和レトロな雰囲気の店内には、ゆったりとした時間が流れる。

しかし、この店にはタイムリミットがあった。

経営の“条件” 「2年後に取り壊し」

住宅街にたたずむ「イエローストーン」は、夕方になるとステンドグラスの灯りで昼間とは違う印象に変わる。

2025年1月、20歳でこの店の経営を始めた伊藤さんは、建物の所有者から示された「ある条件」を受け入れていた。

「『もう取り壊す予定です』と言われて」(伊藤さん)

「条件」とは「店の取り壊し」だった。

店が閉店したのを機に、所有者はイエローストーンの取り壊しを予定していた。

伊藤さんは取り壊しを2027年3月まで延ばしてもらい、「2年間限定」で店を開くことを認めてもらったのだ。

「2年しかない。終わりが決まっているので、自分がやりたいことを詰め込んで、楽しめる2年にしたい」(伊藤さん)

取材中、伊藤さんの家族が様子を見に訪れた。

「一から20歳から(喫茶店の)仕事を始めるのも難しいことだと思うのでかっこいい」(弟・理人さん)

「本人の自由に楽しく、幸せにやってくれればいいかな」(父・隆朗さん)

「準備の段階から家族や親戚が手伝ってくれて、人に恵まれているなと実感しています」(伊藤さん)

コンセプトは「ときどき・ドキドキ」 “好き”を追求する2年間へ

「ときどき、ドキドキする場所を作りたいと思って。カフェに来てドキドキ、ワクワクするような心躍る瞬間を提供できたらいいな」(伊藤さん)

店のコンセプトは「ときどき、ドキドキ」。

伊藤さんのときめく2年間は、始まったばかりだ。

「ありがとうございました」(伊藤さん)

北海道文化放送
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