悩んでいる人も多いのではないだろうか。管理が大変などの理由で「墓じまい」をする人が今増えている。
そんな中、神戸市は新たな“墓のカタチ”を作ることを決めた。変わる“お墓”のニーズについて取材した。
■【動画で見る】新しい“墓”樹木の下に粉末状の遺骨を埋める「樹林墓地」 神戸市が整備進める
■200年以上前から続く…遠方にある先祖の墓じまい

20日、堺市で開かれた「お墓なんでも相談会」。
霊園や永代供養について相談する人がいる一方で、最近、増えている相談が…。
相談にきた人(80代):母親が死んで30年になる、お墓をどうするかという問題が持ち上がったんです。(お墓は)岡山県なんです。帰るとなると大変なんですよ。
担当者:お墓じまいとか、お墓を新しくするとか、すごく多いので。
男性が相談に来たのは先祖代々、継承されてきた墓を処分する「墓じまい」についてだ。
相談にきた人(80代):私の子供も大阪だし、私も大阪から帰ることもない。お墓の掃除ひとつできない。一番古い位牌(いはい)は『文化』(江戸時代)で、200年以上ですから…墓石も20ぐらいある。
遠方にある先祖の墓じまいを考える男性。
■「兄弟はいるけど…」祀り手不足で墓じまい

しかし、家の近くに墓があっても、墓じまいを検討する人も…。
「墓じまい」を検討(60代):兄弟はいるけど、家を出て僕と離れているので、結局、私が親の墓を守ってるかたちなんで。私も1人なので、将来的に祀(まつ)り手がなくなるので…。
■墓じまい件数は10年前から2倍以上 「後継者、守る家族いない、遠方」

かたむいた墓石、雑草におおわれる様子も、放っておくと荒れ果ててしまう墓、みなさん悩みは尽きないようで…。
厚生労働省が去年発表した墓じまいの件数は、全国でおよそ16万件。10年前に比べ2倍以上に。
また2月、東京の葬儀業者が公表した調査では、お墓を管理している人のおよそ7割が、管理を負担に感じているという結果が明らかになった。
メモリアルアートの大野屋 古賀有輝さん:今までのお墓であれば、墓石で霊園を代々つないでいくっていうお墓だったんですが、承継する人がいなくても、代わりに誰かが見守る、祀ってくれる墓で出てきている。
きょうも大阪府内の霊園では、墓じまいを依頼された業者が墓石を撤去していた。
(Q.どういう理由で「墓じまい」を依頼?)
「まごころ価格ドットコム」の担当者:後継者、守る家族いないということと、遠方でお墓参りしにくということで…。
業者には墓じまいの相談が2024年度で、およそ6900件あり1年で2倍ほど急増したということだ。
■政令市で初 神戸市が整備する「樹林墓地」

そんな中、神戸市が今週発表した来年度の予算案に、新たな取り組みが加えられた。
それはなんと、この森の中で。
記者リポート:ここは公園の遊歩道なんですが、まさにこのあたりで神戸市は、遺骨を土に埋める樹林墓地の整備を始めるんです。
神戸市が始めるのは、樹木の下に粉末状の遺骨を埋める「樹林墓地」の整備。
個別の墓石はなく、20年で1600体を埋葬する共同のお墓になるということだ。
市によると自治体が整備するのは、政令市で初めてとのこと。
市がすでに造っている共同で入るお墓や、自然志向の埋葬のニーズが高まっていたということだ。
■森自体が弔いの対象に 骨を直接土の中に埋める「循環葬」

骨を自然に返す埋葬の形は、すでに大阪でも。
それは、大阪府能勢町にある妙見山の壮大な森にあった。
atFOREST 小池友紀代表:道と道の間が埋葬エリアになります。
神戸市の企業が運営を担うのは、骨を直接土の中に埋めるという「循環葬」。
atFOREST 小池友紀代表:細かくパウダー状にした遺骨を、掘り起こした土と(骨を)混ぜ合わせて土にかえして、地表の葉っぱもそのまま戻す形で埋葬しています。墓標に対して手を合わせていたのが、山に変わる感じ。森自体が弔いの対象になります。
全国から問い合わせが相次いでいて、およそ7割が生前契約。
2年前から始まり、これまでに10人が埋葬されている。
■「自然に還る方がええ」 お墓に対する考え方の変化

大阪府に住む後藤金丸さん(84)。
この場所を気に入り、生前契約を結んだ。
生前契約した 後藤金丸さん:(墓に)めったに行かないのに、行って、ものすごく荒廃していたら、やっぱり寂しいというかね。今度は自然に還(かえ)る方がええなという考え方もありますわな。
一度は一般的なお墓に入ることも考えた後藤さんだったが、家族への負担も小さく済む循環葬を見つけ、娘に提案した。
後藤さんの娘 エイ子さん:父の自由だし、私もいいなと思っているので、いい選択をしてると思います。墓じまいも手続きが煩雑なのを体験したので、ここだったら何も考えずにいいなと。
遺族や生前契約した人が、いつでも森に来てゆっくり過ごせる場所。
人生の最後を前向きに考えることで、新しい“墓のカタチ”も受け入れられた。
生前契約した 後藤金丸さん:自然に『あっこにおるよ』ぐらいでもいいんちゃう。死んだら。
後藤さんの娘 エイ子さん:お参りに行かないといけないではなく、時が来た時に、『あそこにいてるな』と思ったり。行きたい時に、お花見がてら行こうかなという気持ちでいい。
お墓に対する考え方の変化。
納得できる形にはさまざまな答えがありそうだ。
■お墓、お墓参りの在り方も多様化

お墓のカタチも変わってきているようだ。
山口県の出身の関西テレビ藤本景子アナウンサーは、 実家のお墓については、「元気なうちに話し合っておくことが大切」と考えを明かした。
関西テレビ 藤本景子アナウンサー:実はうちの実家は、山口の代々のお墓を父が墓じまいもしてくれて、子供たちもみんな田舎から出ている、わざわざ帰ってこらせるのも申し訳ない。関西の方にすべて持ってきて、みんなまとめて手を合わせられるような所に入れていただいてというのを、やっぱり生前に決めておいてもらえると、残された者としては助かるって言ったらあれですけれども、お父さんお母さんの意思の通りにしてあげられるので、生きてるうちに、元気なうちに話し合っておくことが大切なのかなと思いました。
関西テレビ神崎報道デスクは「子供の墓参りが便利な場所に応募している」と語った。
関西テレビ 神崎博報道デスク:妻の実家のお墓の敷地では、墓じまいが進んでいるので、順番にお墓の募集をすることがあるので、今そこに応募してる状態です。同じ敷地であれば子供が墓参り1回で済むので、言葉悪いですけど、非常に便利になると思って、いま応募しています。なかなか当たらないんですけど。
(関西テレビ「newsランナー」2025年2月21日放送)