もしものときに備える生命保険。
その生命保険に加入している人が支払う「保険料」が、どのように運用されているのかを知っている人は少ないのではないだろうか。
環境や社会に配慮した活動を行っている企業に積極的な投資を行い社会課題解決を目指す「責任投融資」で保険料のサステナブルな“運用”をしているのが、日本生命保険相互会社(以下、日本生命)である。
この記事の画像(8枚)また、日本生命はこのことを「にっせーのせ!」というプロジェクトを通じて広く発信している。
地球環境や社会だけでなく、私たちの人生、そして次世代の持続可能性をも高めるという「責任投融資」とは一体どんなものなのか。フジテレビの小山内鈴奈アナウンサーが聞いた。
日本生命が推進する「にっせーのせ!」
多くの人が加入している生命保険。
大勢の人が保険料を負担し合い万一のことがあったときや病気になったときに保険金や給付金を受取るものである。保険会社は、将来の保険金・給付金支払に備えて、集めた保険料を“運用”している。
保険大手・日本生命はその運用にあたって「株式投資」や「債券投資」以外にも、たとえばスタートアップやベンチャー、先進的な技術開発の分野などへ投資するという形でも運用しているという。
中でも、サステナビリティに資する投融資のことを「テーマ投融資」と呼び、目標額5兆円を掲げて積極的に資金を投じている。
こうした運用によって増額した分を「配当」といった形で契約者に還元している。
そんな日本生命がサステナビリティ活動の一環として展開しているのが、「にっせーのせ!」プロジェクト。
サステナビリティ経営推進部・課長補佐の谷川真裕子さんはこのプロジェクトの意義を次のように語る。
「『にっせーのせ!』プロジェクトは全国各地の“小さな希望”を “大きな希望”へ育てていく取り組みとして、2024年5月にスタートしました。日本生命の職員が各地で行っているサステナビリティ活動を写真に収め、特設サイトやSNSで発信しています。
一つ一つは小さな活動かもしれませんが、日本生命の役員・職員、約7万人が取り組むことで社会にインパクトを与えられると思っています」
――なぜ保険会社でそのような取り組みをされているのでしょうか。
「サステナビリティ活動を推進することで『誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会』の実現に貢献したいと考えているからです。
日本生命グループは『人』『地域社会』『地球環境』の3つの重点的な領域で取り組みを進めています。『人』の領域では保険商品・サービスの提供を通じた安心・安全の提供を、また『地域社会』の領域では地域課題に応じた取り組みとして、たとえば『がん検診』受診の勧奨活動を展開しています。
そして『地球環境』の領域では、事業者として『紙の使用量削減』等を進めるとともに、機関投資家としての立場から『責任投融資』にも取り組んでいます」
「責任投融資」ってなに?
日本生命が行う「責任投融資」はどんなものなのか、責任投融資推進室課長・宮下雄一さんはこう説明する。
「私たちはお客様からお預かりする保険料を投資・融資して運用していますが、その『投融資』や、企業との『対話』を通じて多くの企業等に働きかけを行いながら社会課題の解決に取り組んでいます。それを『責任投融資』と呼んでいます。
特に近年の酷暑に象徴される、地球温暖化をはじめとした人間の営みを原因とする社会課題は“待ったなし”です。そこに私たちは危機感を持っています」
――具体的にどのような投融資をされていますか?
数多くの投融資の中から、地球温暖化対策の一つとして、風力発電所の建設プロジェクトに投融資した事例があります。
地球温暖化の原因に二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの影響があげられていますが、経済の伸展とともにその排出量が森林などの吸収力を上回り、大気中の濃度を高めていることが問題になっています。
風力発電は発電の際に二酸化炭素を出さないため、環境負荷が低く、人間の生活と地球環境の保全を両立できると考え、その建設プロジェクトに投融資を行いました。このような再生可能エネルギーへの投融資や、温室効果ガスの排出量が多い企業への排出削減に向けた対話などを進めています。
日本生命は、風力発電所を海上に建設したり、水素を活用して火力発電の環境負荷を低減させるといったイノベーティブな技術にも投融資をしている。もちろん、資金の使途が脱炭素に資するものになるかどうかの厳正な検討は欠かさない。
また、サステナビリティへの貢献度合いがそのまま企業価値に結びつく時代でもある。つまり、サステナブルな活動が「人」「地域社会」「地球環境」はもとより、その企業自体の継続性をも高めるのだ。
同社は対話を通じて、そのことを多くの企業に伝えているという。
「私が子どものころは30℃を超える夏はそれほど長くありませんでした。今はそれが長期化しています。この“変化”を感じてきた私たちの世代には、この“負の変化”を断ち切る責任があると思うのです」(宮下)
「いざ」とは「今」のこと
――未来の世代に向けて日本生命が行う責任投融資の「これから」について教えてください。
地球温暖化をはじめとした社会課題の解決に残された時間は多くありません。そして、多くの社会課題は相互につながっていて、複雑です。
お客様が保険金や給付金を受取るその時にも、またその先も「誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会」が続くように、責任投融資を通じてサステナビリティに貢献していきたいと思います。
「保険」は人生の「いざ」という時のためのもの。一方で「責任投融資」は地球の「いざ」という時のためのもの。そしてその「いざ」に向けて取り組むべきは「今」だと日本生命は考えている。
このことを意識するのは、意外と難しい。なぜなら、その「いざ」は急にやってくるというより、長い時間をかけて徐々にやってくるものだからだ。
日本生命としてそこに危機感を持てるのは、人生をトータルで見るという「長期的な視点」が欠かせない「保険」という商品を日常的に扱っているからかもしれない。
そんな危機意識を安心・安全につなげるために、同じく「長期的な視点」を持たなければ対応することができない「サステナビリティ」の分野において、日本生命は責任ある行動を続けている。