今月はピンクリボン月間。 女性の中で最も罹患する確率が高い『乳がん』。
多くは40代でかかるのだが、実は60代以上の罹患率も高く、特に近年その数が増え続けているのだ。 その理由を取材した。
関西テレビ・加藤さゆり報道デスク:今月は乳がん検診を呼びかけるピンクリボン月間。このバス、マンモグラフィ(検査)ができる検診車なんですね。こちらの中で市民の方が検診を受けられています。

■乳がんの罹患率は60代以降も増加傾向

やってきたのは、大阪市内のショッピングモール。
大阪市では、市内に住む40歳以上の女性を対象に2年に一度、市の検診を安く受けられる制度がある。
この日は50人近い人が受診したが、ほとんどが40代だった。
検診に来た40代女性:子どもがまだ小さいので子どものためにも長生きしたいと気持ちもあって、誕生月は検診の月と決めてて。家族と喜べるきっかけにもなるし、自分の安心にもつながると思って。
いま、9人に1人の女性が、生涯のうちにかかるとされる乳がん。
多くの場合、10代のころから出始める女性ホルモンが、体の中に蓄積され、それを餌にしてがん細胞が増殖することで発症する。
■60代以上の罹患率は20年前の2.5倍

関西テレビ・加藤さゆり報道デスク:乳がんは40代から罹患する人が増え始めますが、実は最近では、60代以上でも乳がんにかかる人が増えているのだ。
これは乳がんの罹患率を示したグラフ。
40代でかかる人が急増しますが、60代以降も増えていて、その割合は20年前と比べると2.5倍の水準だ。
一体なぜか…これには女性の出産と授乳回数が関係していると医師は指摘する。
なかもず女性クリニックヤギ 八木潤子院長:戦前は6、7人産んでるのがザラだったのが、2人3人になり、2人になり、今や1.32人なんですけれども、少子化で授乳する機会が女性には極端に減ったということですね。

少子化の影響で乳腺を使わない人が増えたことで、60代以上でも乳がんにかかる人が増えたというのだ。
■60代以上になると検診受診率が減少

一方で気になるデータも…
関西テレビ・加藤さゆり報道デスク:60代以上で乳がんにかかる人は増えているのに、逆に60代以上になると検診に行く人が減っていくという現状も見えてきました」 これは乳がんの罹患率と検診の受診率を比較したグラフ。 60代以降になると検診を受ける人が減っていくのがわかります。 なぜ検診に行かなくなってしまうのでしょうか。
■「閉経したら乳がんにはならない」という誤った認識も

70代女性:昔は受けてましたよ。今はちょっともう、行ってないですね。まだ親(の介護)かかえてるからね。
70代女性:ないです。ちょっと痛いとか。
なかもず女性クリニックヤギ 八木潤子院長:閉経もして、『私卒業してるからもう乳がんいいんじゃないの』っていうふうに思われている方は多分あると思います。
(Q実際に閉経との関係は?)
なかもず女性クリニックヤギ 八木潤子院長:閉経したから乳がんが減るっていうことはないですね。
『閉経したら乳がんにはならない』という誤った認識があることもみえてきた。
■70代で乳がんと診断された女性「閉経後に検診の必要性感じていなかった」

医師:コレですね。超音波だいたい1センチぐらいですけどね。
漆垣貴代美さん(78):よく見つけていただいて。
神戸市内に住む漆垣さん。6年前に初めて乳がんと診断された。 受診しようと思ったきっかけは右わきのしこり。 72歳で摘出手術を受けたが、がんはリンパ節にも転移していて、ステージ2だった。
漆垣貴代美さん(78):すぐ乳がんやって言われて。小さいから初期やなって言われたんですけど、でもやっぱりすごく怖かったです。 手術まで。取っちゃっても怖いんだけど、今でも怖いんですけど。再発とか転移とか。
乳がんは、手術後10年間の経過観察が必要とされているため、再発や転移がないか検査のため、毎月病院に通っている。
若いころから健康には自信があったという漆垣さん。
閉経したあとも検診の必要性を感じていなかったことに後悔している。
漆垣貴代美さん(78):手術したら(リンパ転移が)いってたから、ちょっとでも早い方が、(がんが)進むときがあるんでしょうね。もっと早く(検診に)行けばよかったなとはすごく思います。
早期に発見し、治療をすれば治る可能性が高いとされる「乳がん」。
大切な人たちのためにも、自分の身体を守るという意識が大切だ。
■出産や授乳が乳がんのリスクを減少させるが…

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:60代以上の方で増えているということなのですが、もう一つ、乳がんと出産、授乳との関係性を裏付ける、新しい研究があります。
京都大学の小川誠司教授らの研究によると、『加齢とともに蓄積される「がんのリスクとなる遺伝子」は、「出産」や「授乳」によって減少し、閉経後も変異のスピードが落ちる』ということが分かった。
つまり、出産や授乳が、乳がんのリスクを減少させるということが分かる、画期的な研究なのだ。
60代以上で罹患率が上がってきているということは、やはり少子化によって乳腺を使う機会が減ったことによるということだ。
ただ、ライフスタイルは変わってきていて、全ての女性が出産や授乳をする時代ではない。
生活習慣やストレスといったことが大きな原因になってきているので、注意して生活してほしい。
■検診による「早期発見」が何より大切
Q:少子化が進んでいくと、乳がんのリスクは相対的に高まっていくのか。
ジャーナリスト 安藤優子さん:少子化を止めるための施策と、乳がんとの関係性って、私たち、はっきりとは分からなかったじゃないですか。 京都大学の新しい研究もあるわけですから、予防する手立てというよりは、きちっと検診を続けていって、早期に発見するというところに落ち着くのかなと思います。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:早期発見することが何より大切ですから、まずは検査を受けていただきたいと思います。 『閉経したら大丈夫』といった誤った認識や、『痛いんじゃないか』という方もいらっしゃると思います。怖いのは分かるのですが、ぜひ検査に行って頂きたいと思います。
竹上キャスター:私自身は30代になってから、自治体の助成を受けて、毎年、エコー(検査)を受けるようにしています。 母がもうすぐ60歳になるのですが、なかなか行ってくれなくて。 理由を聞いてみると、『検診というもの自体に行ったことがなくて、未知の世界で怖い』というのと、『今さらいいよ』と言っていました。 ですが、やはりきちんと行ってもらうように話してみようと思います。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:自分の体も大切ですが、周りの家族や友人たちにも影響があります。 乳がんは、手術後、10年間は様子を見た方が良いと言われています。 高齢になればなるほど、毎月、通院をするのも大変になってきますから。40代以降は、マンモグラフィで見つけやすくなるというのもありますので、ぜひ検診に行ってみてください。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年10月16日放送)
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク 2006年入社。行政、神戸支局、FNNベルリン特派員などを経て現職。 医療問題やジェンダー問題を精力的に取材。