衆議院は臨時国会の会期末となる10月9日に解散し、事実上の選挙戦が幕を開けた。8選挙区ある静岡県では計28人が立候補する見通しとなっている。立候補予定者を紹介するとともに注目選挙区を探った。
静岡1区
静岡1区からの立候補を予定しているのが自民党の前職・上川陽子 氏(71)、立憲民主党の元職・高橋美穂 氏(59)、日本維新の会の新人・山下洸棋 氏(33)、共産党の新人・鈴木節子 氏(69)の4人だ。

上川氏は直近まで外相、過去には法相を3回務めるなど圧倒的な知名度を誇り、地元の市議・県議を中心に組織力も高い。
対する野党は分裂状態での選挙戦が確定的だ。
高橋氏は日本維新の会に所属していた際に衆議院議員(比例北海道ブロック)を1期務め、前回選は国民民主党から静岡1区に立候補したが、今回は立憲民主党からの挑戦となる。
日本維新の会県総支部で幹事長を務める山下氏は静岡6区で立候補した前回選から学生時代を過ごした静岡1区へと選挙区を変えた。
共産党の鈴木氏は静岡市議を5期、静岡県議を1期務めたベテランだが、国政選挙に立候補するのは今回が初めてだ。
静岡2区
静岡2区からの立候補を予定しているのが自民党の前職・井林辰憲 氏(48)、立憲民主党の新人・鈴木岳幸 氏(51)、参政党の新人・提坂大介 氏(48)の3人だ。

自民党県連の会長を務める井林氏は政権を奪還した2012年の初当選以来、小選挙区で4連勝。これまで順調に得票を伸ばしているが、今回は裏金問題に端を発した党への逆風の中で真価が問われる。
生まれも育ちも藤枝市の鈴木氏は10年余り務めた藤枝市議の職を辞しての挑戦。“藤枝っ子”らしく藤色をイメージカラーに、地元出身を前面に出して強敵に挑む。
元島田市議の提坂氏は静岡県内では唯一の参政党公認候補となる予定で、党からは小選挙区での必勝はもちろん、比例票の積み増しにも期待が寄せられる。
静岡3区
注目選挙区の1つ、静岡3区からは自民党の新人・山本裕三 氏(41)、立憲民主党の前職・小山展弘 氏(48)、日本維新の会の新人・釜下由佳子 氏(43)、無所属の元職・宮澤博行 氏(49)、無所属の新人・杉村義夫 氏(65)の5人が立候補を予定。

前回選では2009年の初当選以来となる小選挙区での議席を獲得した小山氏。ただ、この時は一騎打ちの構図だったものの今回は野党共闘が実現せず、保守分裂の選挙戦となる見通しではあるものの気を引き締める。
裏金問題をめぐり一躍名が知られるようになったものの、自身の女性問題が原因で2024年4月に議員辞職した宮澤氏は、「再出馬を望む声も多く熟慮を重ね決断した」と述べ、「禊が済んだのではなく、この戦いが禊だと思っている」と話す。
宮澤氏に代わって自民党が擁立する山本氏は掛川市議会議長も務めた期待のホープ。とはいえ、公認候補となる支部長に就いてから2カ月足らずと知名度不足は否めず、保守分裂にも危機感を抱く。
釜下氏は選挙区内で唯一の女性候補。夫の実家がある静岡3区を舞台に、1児の母として女性票の取り込みに加え、保守層の切り崩しを目指す。
杉村氏はリニア中央新幹線のトンネル工事に伴う大井川の水問題を訴えている人が少ないことを理由に、「大井川の水を守るため」立候補を決意。
静岡4区
静岡4区は自民党の前職・深澤陽一 氏(48)と国民民主党の前職・田中健 氏(47)の一騎打ちとなる公算が大きい。

選挙区内の有権者の約6割を占める静岡市清水区の出身で、市議2期、県議3期、衆議院議員2期務めた深澤氏は地元での知名度の高さを武器に今回も完勝を狙う。
対する田中氏は前回選で比例復活ながら、3回目の国政挑戦にして初めて当選。清水区で善戦しないと勝ち目がない選挙区なだけに、3年間の経験を武器に切り崩しを図る。
静岡5区
静岡5区から立候補を予定しているのは自民党の前職・細野豪志 氏(52)、立憲民主党の新人・外山和之 氏(60)、共産党の新人・下山一美 氏(71)の3人だ。

かつては“民主党のホープ”といわれ、毎回無類の強さを見せる細野氏は自民党に入党後、初めての総選挙。今回は18万票の獲得を目指している。
元高校教師の外山氏は「反自民票の行き場がない」として9月下旬になって立候補を決意。「選挙が人気投票になっている現状を変えたい」と意気込む。
下山氏は三島市議を6期務めたベテランで、自民党の裏金問題については「国民の怒りは収まっていない」として「解明が必要」と有権者に訴える考えだ。
静岡6区
毎回激戦となる静岡6区には自民党の前職・勝俣孝明 氏(48)、立憲民主党の前職・渡辺周 氏(62)、れいわ新選組の新人・冨谷皐介 氏(55)の立候補が見込まれる。

3年前は4度目の総選挙にして初めて小選挙区を制した勝俣氏。この3年間は党の政調副会長や農林水産副大臣、衆議院の外務委員長を歴任するなど経験も積んできたが「前回選も渡辺氏と維新公認候補の得票を合算すれば自分は及んでいない」と油断はない。
一方、前回選では比例での復活当選こそ果たしたものの、1996年の初当選以来、初めて小選挙区での議席を失った渡辺氏。静岡6区はかつて“渡辺王国”と言われ、旧民主党が大逆風の際も強さを見せただけに捲土重来を期す。
冨谷氏は衆議院の解散直前になって立候補を表明。スルガ銀行の不正融資問題をめぐっては被害者団体を立ち上げ、自ら代表を務めた。ある意味で自らの人生を一変させたスルガ銀行の本店がある静岡6区で、前職2人に割って入りたい考えだ。
静岡7区
静岡7区からは自民党の前職・城内実 氏(59)、立憲民主党の元職・日吉雄太 氏(56)、共産党の新人・吉川奈緒子 氏(64)の立候補が見込まれる。

石破内閣で経済安保相として初入閣した城内氏。2024年5月の静岡県知事選が理由で経済界とはしこりが残るが、浪人時代に築いた“城内党”と呼ばれる根強い支持者の支えを武器に、今回も大差での当選を狙う。
前々回は城内氏に対して約10万票差、前回は約7万票差と厳しい戦いを強いられているが、上記の通り城内氏が経済界との間に溝が出来たことで、今回は経済界の後押しを受けながら票の上積みを目指している。
吉川氏は共産党が掲げる賃上げや労働者の待遇改善、消費減税などを訴え、自民党でも立憲民主党でもない選択肢として、票の掘り起こしを目論む。
静岡8区
自民党の安倍派で座長を務め、裏金問題に端を発し離党勧告処分となった塩谷立 氏が地盤としていたことから全国的にも注目されている静岡8区。
塩谷氏は政界を引退したが、自民党の新人・稲葉大輔 氏(50)、立憲民主党の前職・源馬謙太郎 氏(51)、日本維新の会の新人・寺島瑞仁 氏(31)、共産党の元職・平賀高成 氏(70)、無所属の新人・加藤順久 氏(78)が立候補を予定している。

前回選は塩谷氏との一騎打ちを制した源馬氏だが、今回は共産党も日本維新の会も公認候補の擁立を発表していて、野党共闘とは程遠い。“反塩谷”シフトを敷いていた経済界の動向が不透明であるものの、自民党の“敵失”を追い風に勢いに乗りたい考えだ。
塩谷氏の“後継”として国政選挙に挑むのが浜松市議を9年半務めた稲葉氏。「逆風を意識して戦うのではなく、新しい政治の形を示す」と話すが、候補者選考のしこりから自民党としての結束にも不安が残る。
寺島氏は、このままいけば今回の選挙戦で県内最年少の候補者となる見通し。ロボットエンジニアとして活動する中で“規制”の壁に直面することが多く、政治の世界に身を投じた。
24年ぶりとなる国政返り咲きを狙うのは平賀氏。国政選挙や地方選、首長選など選挙経験は15回に上り、2023年の県議選では691票差で次点となったものの浜松市の旧中区で1万2256票を獲得するなど、一定の知名度を誇る。
また、学習塾を経営する加藤氏は、防衛予算の増額や防災対策のための国土強靭化、消費税の段階的引き下げなどを訴えていく考えだ。
衆議院解散総選挙は10月15日に公示され、27日に投開票を迎える。
(テレビ静岡)