能登半島地震からまもなく半年です。
被災地の復興が取りざたされる一方でいま、被災地に残された動物たちが課題となっています。広島から支援に向かったボランティアが見た被災地の現実を見つめました。
今年の元日に発生した能登半島地震。
被災地となった石川県輪島市では今もなお災害のつめ跡が残されています。
そして、新たな課題となっているのが、人がいなくなった街に取り残された動物たちです。
今月8日広島から被災地に向かうのは、マツダやその協力会社の社員たちで作る動物愛護団体、ワンミャツダクラブの荷堂美紀代表です。
荷堂さんは、いま被災地で保護される動物たちの増加を危惧しています。
(ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表)
「預かりができるようなみなさん被災してそんな状況でもないし、緊急事態なのかなと思っています。一応何匹か連れて帰ることができるように準備はしてきてますが、状況を見ながらという感じですね」
向かったのは、石川県の動物愛護センター。
東京の動物愛護団体と協力して支援を行います。
輪島市内で荷堂さんたちが目にしたのは、復興が思うように進まない被災地の姿でした。
(ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表)
「道路はだいぶ通ってきていると感じましたが、住宅地や人の生活環境という意味での復興はまだまだ大きな課題がある。なかなか進むことに難しさがあるんだなと感じました」
一緒に支援を行う、東京の動物愛護団体の香取章子さんは被災地におけるペットの保護の難しさを感じていました。
(東京都人と動物のきずな福祉協会・香取章子代表理事)
「所有権がある飼い猫かもしれない、それを確認なく捕獲することは問題になる可能性があります」
被災地で、命の危険が迫っている動物を保護した場合。
環境省のWEBサイトに登録しておくと、飼い主が各都道府県ごとに収容動物を探すことができるシステムがあります。
動物の所有権を明らかにしておくことは、その後の譲渡に向けて大切なポイントです。
石川県の動物愛護センター。
震災後にオープンしました。
20匹以上の猫が、保護されています。
猫たちが、保護された状況は様々です。
(いしかわ動物愛護センター・高橋百合子主幹(獣医師))
「この子は被災猫というよりは多頭飼育の現場から保護した子のうち人慣れしている子になります」
里親を探すため所有権に問題のない猫たちを優先して保護することにします。
(高橋さん・香取さん)
「所有権放棄はされている猫ですので、あとから飼い主が現れるということは絶対ないです」
Q:避難所で住んでいるとか(家が)全壊していて家に戻れないとかそういうことでしょうか?
「恐らくそうだと思います」
Q:この機会に放棄するということですね?
「そうですね」
近所の猫に餌だけを与える人。
避妊、去勢をしないまま放し飼いにする飼い主。
このような人がいなくなった被災地では取り残された動物の存在が問題となっています。
(いしかわ動物愛護センター・高橋百合子主幹(獣医師))
「何となく餌をあげていたのが、そこに(人が)いられなくなったので世話をする人がいなくなった」
愛護センターの要請の応じて、それぞれの団体が、連れ帰ることに…。
荷堂さんたちも、今回、3匹のネコを引き取ります。
石川を出発して、広島に到着したのは、深夜の11時前。
(ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表)
Q:人に慣れていますか?
「全く慣れていないです。こんな感じです。特定の飼い主が家で飼っていた猫は(人慣れしていて)もらわれやすいが、そうじゃない猫は(慣れていないので)厳しい」
餌を与えるだけの無責任ともいえる動物との関わり方はこんなところにも影響していました。
(ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表)
「いいですか。じゃぁ一緒に行きますので、ありがとうございます」
譲渡会に参加するためには人に慣れる必要があります。
ここで活躍するのが、動物を人間に慣らすための役割を担っている預かりボランティアです。
(ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表)
「すごい気の荒い猫を何匹もてなずけてきているので、今回は濱里さんに頼るしかないなと思って」
深夜にもかかわらず預かりボランティアとして活躍する浜里さんに、1番、人に慣れしていない猫を預けることにしました。
(ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表)
ネットに入れる時と新幹線の中も恐怖で失禁してしまって。駅でも震えていた」
「緊張しますよね」
譲渡会に参加する動物たちは、健康状態をチェックされ避妊や去勢ワクチンの投与だけでなく病気になっていないかメディカルチェックを受けエントリーされます。
濱里さんに預けられた猫はどうなったのでしょうか?
(預かりボランティア・濱里真由美さん)
「(来て)2日後くらいには触れていた。翌日には触っていたかな。結構触らせてくれてこの首のところが大好きみたいです」
濱里さんに安心したのか人間に慣れてくれたようです。
(預かりボランティア・濱里真由美さん)
「あさっての譲渡会には参加させようと思っています」
今月、19日、広島市内の商業施設で行われた譲渡会。
被災地から連れて帰った3匹のネコも参加していました。
訪れた人たちも、被災地からやってきたネコたちに興味津々です。
広島に到着したときは緊張していた猫たちが、今は、人に触られても平気です。
(譲渡会の参加者)
Q:猫を飼ってますか?
「飼っています」
Q:もう1匹欲しくなる?
「欲しい」
災害からの復興は、まだ、道半ばです。
(ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表)
「まずは3匹をきちんと幸せにして。それと並行しながら今後は何ができるのか何をさせてもらえるのかを行政のみなさんと相談できたらと思います」
災害が発生すると動物たちに何が起こってしまうのか。
それを防ぐために、私たちは何をしておかなければならないのか。
被災地からやって来た、3匹の猫たちは、私たちに多くのことを教えてくれています。
<スタジオ>
所有権という言葉がありましたが、ここが曖昧になってくると善意で動いている方々がリスクを負うという難しい部分が残っています。
【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
「まずはこういったボランティアさん達に本当に頭が下がる思いです。災害時にペットを連れていけない避難所の問題が最近よく知られるようになりましたが、こういった問題もあるということを勉強させられました。なんとなく餌をやってる人たちも優しさからだと思いますが、飼うのに資格がいるのと同じように気まぐれの優しさや思いつきのかわいがりには問題があると改めて気づかされました」
災害はいつどこで起きるかわかりません。改めて私たちの生活の中で、誤った優しさがないか見直して行きたいと思います。