骨壺に犯人逮捕を誓う

「この骨壺を抱いて、今年中に犯人を捕まえると誓って下さい」

1995年7月、東京・八王子市のスーパー「ナンペイ」の事務所の中で、女子高生2人を含むアルバイト従業員の女性3人が何者かに射殺された事件は、未解決のまま今年で発生から22年が経った。

冒頭の言葉は、この事件の専従捜査員が遺族の切なる思いをフジテレビの記者に明かしたものだ。この記者は捜査員から「お前達に俺らの覚悟がわかるのか」と問われ、重大事件の取材者としての思いを新たにした。

無残に命を奪われた女子高生2人は事件に巻き込まれていなければ、多くの素晴らしい人生の瞬間と巡り会うことが出来たのだ。愛する人を失った被害者の家族、友人の人生にとっても、大きな悲しみの上に、どれだけの喪失感や虚無感をもたらしたのか想像も出来ない。

強盗目的か怨恨か

事件から22年にわたり、取材班は多くの捜査員や事件関係者に会い、話を聞いてきた。取材を重ねてもこの事件がなぜ発生したのか推理するのは非常に難しいものがあった。

現場は住宅街の真ん中にある小さなスーパーで、トラブルを起こせば隣家にすぐに気づかれてしまうような立地だった。しかも発生時には夏祭りが開催されていて、夜間とは言え、普段より人通りが多い中で起きた。

犯行の目的が強盗目的なのか、恨みによる犯行なのか、いまだにどちらとも絞りきれていない。強盗であればなぜ金庫内の多額の現金を奪わなかったのか、大勢で押し入れば金庫ごと運び出すことも不可能ではなかったかもしれない。恨みであればなぜ無抵抗の女性3人を躊躇なく殺害したのだろうか。捕まれば死刑の可能性もある事件を犯人はごく短時間のうちに実行したのか、その答えは現場にこそあると考えた。

初公開の捜査資料を徹底分析

今回、事件取材に携わった多くの記者が積み上げてきた取材メモを検証し、初公開となる捜査資料を細部に至るまで徹底的に分析した。また、不明瞭な事実関係を捜査に従事した多くの捜査関係者らに突き合わせ確認した。

それにより、これまでおぼろげにしか見えていなかったものが、いくつかはっきり浮かび上がってきた。

まず現場となった事務所の中で犯人にほとんど動きがみられないことだ。事務所内のものはほとんど手つかずといっていい状況で、ごく短時間のうちに犯行に及び、犯行後すぐさま逃走したとみられることがあらためて確認できた。

 
 
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犯人は拳銃の扱いに慣れていた

また、被害者の1人を殺害したときの詳細な状況も分かった。さらに認識をあらたにしたのは犯人が拳銃の扱いに非常に慣れている人物だったということだ。犯行当時の事務所内の状況を正確に再現してみると、想像よりも非常に狭い空間の中で犯行が行われており、犯人が拳銃の弾の跳弾などを計算した可能性が高いと言えることもわかった。

事務机の上に金庫の開け方を書いたメモが貼ってあり、当日の売上金は金庫にしまわれていたことから、3人のうちの誰かは金庫の開け方を知っていた可能性がある。金庫内の現金は諦めたにせよ、これだけの犯行に及んでおきながら何も盗らずに逃走するというのは辻褄が合わない部分もある。強盗犯による偶発的な犯行ということは言えるかもしれないが、どんな心理であれ、物は盗っていくのではないだろうか。

浮上した「指紋酷似の男」

警視庁はこれまで、強盗、怨恨の両方の線で見えてきた様々な糸を手繰ってきた。

47歳の被害女性に恨みを抱く人物がいたかについても徹底的に捜査が行われた。強盗目的とする線では、事件当時、都内を中心に拳銃を使って現金輸送車を襲う強盗事件が多発していて、この犯行グループが拳銃を躊躇なく人に向け発射していることから、このグループについて徹底的に捜査が行われた。

また中国人強盗グループによる犯行説も浮上し、中国の大連市に捜査員を派遣したこともあった。その捜査で事件について事情を知っているとして浮上したカナダ在住の中国人を日本に移送して、取り調べも行われた。これらのいずれも実を結ぶことはなかった。

そして数年前、被害者を縛ったガムテープから検出された指紋と酷似した指紋を持つ人物が浮上した。今回、その人物の関係者を密に取材していて、そこから出てきた証言も番組の見どころとなっている。

これまで、強盗目的か怨恨による報復か、それらの線を一つ一つ潰していく捜査がこの20年以上にわたって、のべ19万人の捜査員によって続けられている。真相に辿りつく捜査の糸はまだあると確信しているのだ。27日にはその真相が地上波でも放送されることになっている。



「報道スクープSP 激動!世紀の大事件V」
放送時間 12月27日(水)21:00~23:48 フジテレビ系列で放送予定(一部地域を除く)

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。