陸上自衛隊は14日、沖縄県の宮古島沖で2023年4月、陸自のヘリコプターが墜落し、隊員10人が死亡した事故をめぐり、最終的に事故につながった左側のエンジンの出力低下の原因について、特定に至らなかったとする調査結果を発表した。
調査結果によると、回収したフライトデータレコーダーの解析などを進めた結果、搭載されていた2基のエンジンのうち、まず右側の出力が徐々に低下し、喪失したのに続き、左側の出力も低下するという「これまでに報告事例がない事象が生起し、高度保持が困難となり墜落に至った」としている。
右側の出力が低下を始めてから37秒後に左側も低下し、墜落はそのおよそ50秒後とみられる。
右側については、エンジンに入る燃料不足などで出力が下がる「ロールバック」と呼ばれる非常にまれな事象が発生したと推定されるとしている。
「ロールバック」は機体の取扱書にも記載されておらず、自衛隊機では初めて確認されたという。
一方で、エンジンに異常が起きても1基でも機能していれば飛行は可能とされ、最終的に墜落につながった左側の出力低下については、エンジンの部位の異常やパイロットの操縦ミスなどの可能性いずれも示す証拠がなく、特定には至らなかった。
陸上自衛隊は、今回の事態に対する対処要領などを取扱書に記載し、普及・徹底を図るほか、機体の点検回数を増やすなど再発防止策も発表した。
陸自トップの森下陸上幕僚長は記者会見で、「国民のため日本のために全身全霊をささげてきたかけがえのない10名の隊員を失うことになった事故について、改めて深く重く受け止め、この先1人の犠牲者も出さぬ決意で、事故の再発防止に全力を挙げ、飛行の安全に万全を尽くすことを誓う」と強調した。