小城市小城町池上地区で遊水地整備計画

2019年8月の豪雨が激甚災害に指定されたことにより、国と佐賀県は、418億円を投じて、六角川水系の水害対策事業に着手している。

その1つが、豪雨で牛津川が氾濫し、深さ3メートルに及ぶ浸水があった小城市小城町池上地区での遊水地の整備。

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整備を行うのは、国交省・武雄河川事務所。

武雄河川事務所・小野朋次副所長:
川の中から水があふれてくるのを、遊水地に一時的に水を引き入れてためる。そうすると、下流に流れる水の量が減り、河川の水位を下げられる

約80ヘクタールの土地の周囲に堤防を築き、川から水を引き入れる越流堤や排水ポンプを新たに作る。
これにより、川が著しく増水したときに230万トンの水をためることができ、牛津川の増水時の水位を1メートル下げられるとしている。

牛津川の堤防から広い農地、そして山沿いに見える住宅地の付近まで、遊水地とする計画。
課題となるのは、計画地の大部分にあたる農地と、端にある約80戸の住宅地の扱い。

農地は国が“地役権”取得…農作物影響に補償は支払わない考え

国は2020年2月、そして7月に住民説明会を開き、対応の仕方を提示した。

武雄河川事務所・小野朋次副所長:
住宅に関しては、2つの案を今、わたしたちから提示しています。1つは、違う場所に移転していただく移転案。もう1つが、現在の住居の土地をかさ上げし、そこにまた住居を作ってもらうかさ上げ案

移転案では、経年減価を引いた住宅の価格と解体費用、土地の価格を補償額として、国が住民に支払う。そのうえで、住民が移転先の土地に新しく家を建てて、引っ越す。
集団移転先の土地は、国が近隣で探すが、まだ決まっていない。

かさ上げ案では、住宅価格と解体費用を国が住民に支払って、いったん別のところに仮住まいしてもらい、国が土地をかさ上げ工事して、再びそこに家を建て直してもらう。

武雄河川事務所・小野朋次副所長:
いろいろ地区のご意向もあります。個人のご意向というのもあるので、今の段階では、どういうご意向か検討していただいている状況

一方、農地については、一部は国が買収をするものの、大半は買収はせず、所有者は住民のままにして、国が“地役権”を取得する。

武雄河川事務所・樋口博用地対策官:
地役権というのは、一定の目的のため、自分の土地のために他人の土地を利用する権利。遊水地になることによる浸水・冠水の容認。田んぼが水に浸かるのを容認していただく

国は、地役権を取得するための補償額を最初に支払ったあとは、遊水地として貯水したときに農作物に影響が出ても、補償は支払わないとしている。

武雄河川事務所・樋口博用地対策官:
地役権補償は、農作物が被害に遭うのを前払いでお支払いするという状況。そこは地役権補償額で十分満足していただけるのではないかと考えている

しかし、地役権補償額は、まだ算定中だとして示されていない。

2024年度までをめどに遊水地整備へ

一方で、すでに遊水地として整備された場所がある。

2002年に整備された多久市にある牟田辺遊水地は、周辺より少し低くなっている。普段は農地として使用されている。

今回の計画地より5kmほど上流の多久市にある牟田辺遊水地。貯水量が90万トンで、今回の遊水地計画は、この倍以上の規模になる。

地区住民で水害対策を協議する会の副会長・木下隆和さん(68)は…

小城町池上の住民・木下隆和さん:
小作(土地を借りて)で作っている専業農家の人は大変かなと。水を入れて農作物に被害が出た場合は補償がないので、その辺は困っておられる

しかし木下さんは、遊水地の必要性には、ほとんどの住民が理解を示していると話している。

小城町池上の住民・木下隆和さん:
(この地区は)水害が大変多かったので、ポンプアップして牛津川に上げてきたが、これは限界

この地区では、満潮時には海から牛津川を上がってくる水と上流からの水がぶつかり、過去の大雨でも度々、浸水に遭っていたため、遊水地にする議論が50~60年前からあったという。

武雄河川事務所・小野朋次副所長:
川幅を広げたり、深く掘削したりするのは、(治水対策として)ある程度限界がある。この流域で考えたとき、洪水調節施設を作るのが、この地域には一番適している

小城町池上の住民・木下隆和さん:
(水害時に)牟田辺遊水地に水が入ると、わたしたちが助かっている。今回の計画も、下流域の牛津・芦刈方面が堤防の決壊が少なくなることにつながる

国は、7月中に住民戸別の意向調査を行い、2020年度中に住民の判断を受けて計画を固め、2024年度までをめどに遊水地整備を進める方針。

(サガテレビ)

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