■孫の手足を縛り改造ベビーサークルに監禁したままUSJに外泊

大阪府富田林市で2歳の孫を監禁し死亡させた罪などに問われている祖母に懲役9年の判決が言い渡された。
小野真由美被告(47)は、おととし6月、内縁関係にあった桃田貴徳被告(52)と共謀し、当時2歳だった孫の優陽ちゃんの手足を粘着テープで縛り、四方に板をはり上にふたをつけたベビーサークルに監禁。 そのまま、2泊3日でユニバーサル・スタジオ・ジャパンに出かけ、優陽ちゃんを熱中症で死亡させた罪などに問われている。
■自身も「ネグレクト」の被害者だった過去

小野被告によると、優陽ちゃんを引き取ったのは事件の2年半ほど前。
小野被告の三男である優陽ちゃんの父親が離婚し、養育できなくなったのが理由だという。 それから、小野被告の四男と桃田被告、さらに2人の間にできた五男の5人で暮らしていた。 小野被告は、優陽ちゃんを放置して死亡させたことは認めているが、事件当日に、手足を縛っていたことなどは否認している。
一方で、事件以前から優陽ちゃんの手足を縛るようになったのは、「自慰行為をするのをやめさせたかったから」と説明。
法廷で「自分と優陽を重ねている部分もあり、(自慰行為を)やめさせたい。見たくない気持ちがありました」と語り、小野被告が自慰行為について極端に嫌悪感を抱いていた背景には、自身の生い立ちが関係していることも明かになった。
小学6年から中学にかけて母親の交際相手から自慰行為の要求を含む性的虐待を受けていたという小野被告。
さらに、母親は小野被告ら子どもたちを家に残したまま、交際相手のところに行き、1カ月ほど帰らないこともあったと言い、小野被告自身も、またネグレクトの被害者だったことが分かった。
■事件の背景には「行政対応」の問題点も

また、事件の背景からは行政の対応の問題点も見えてきた。
事件の2カ月ほど前、小野被告は市の担当者に「施設に入所させたい」と訴えたものの、あきらめた経緯について、法廷で以下のように主張している。
小野被告:
私の中で限界だったので施設に入所させたいと訴えましたが、『親権者の同意がないと無理』と言われました。相談してもその都度(職員に)『様子を見てください』と言われて諦めました。
弁護側はこれらの背景を考慮すると懲役5年6カ月が適切と主張。
一方、検察は「長期間繰り返された虐待の結果で、旅行を楽しむために放置した動機が身勝手であることは言うまでもない」として懲役9年を求刑した。
■「過去の虐待の影響と言うが、被害者の自慰行為を公的機関に相談していない」懲役9年の判決

そして迎えた、16日の判決。 眉間にしわをよせ、険しい辛そうな表情で入廷した小野被告に対し、大阪地裁堺支部(藤原美弥子裁判長)は、「被害者の身長体重は平均より数%低くく、日頃から十分な食事を与えられておらず、ベビーサークルに閉じ込められていた。日常的な虐待行為の末の犯行」と指摘。
「弁護人は、緊縛は被害者が床に隠部を擦り付けるのを防ぐためで、過去の虐待の影響と言うが、被害者のそうした行動について公的機関に相談するなど手段を検討しなかった。自身の虐待の記憶から自慰行為を受け入れられなかったというが、汚物を撒き散らすことを相談することは支障ない。精神鑑定医も鬱症状は限定的で犯行に与えた影響は限定的。被告人は自ら中心となり養育する立場だったにもかかわらず、ベビーサークルに閉じ込め、緊縛、置き去りを主導しているから、桃田被告より罪は重い」として内縁関係にあった桃田被告の一審判決よりも重い(桃田被告は控訴)懲役9年の判決を言い渡した。
この判決を聞いている時、小野被告は、少しうなだれた様子だった。
(関西テレビ 司法担当 菊谷雅美)