2024年の年明けから新型コロナウイルスの感染拡大が目立つ。静岡県は2024年2月2日に新型コロナ感染拡大警報を県内全域に発令した。2020年に初めて確認されて以来 10番目の流行だが、静岡県の感染症対策のリーダーは「“第10波”でなく、“2024年 冬の波”と言って」と、呼称の変更を提案した。狙いは何だろうか。

静岡県独自の注意報と警報

静岡市(資料映像)
静岡市(資料映像)
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新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「2類相当」から「5類」に引き下げられた2023年5月以降、静岡県は独自に定めた基準にのっとり感染拡大注意報と警報を発令してきた。毎日発表されていた感染者数が「5類」移行後は発表されなくなったため、感染状況を県民にわかりやすく伝えるためだ。

2023年冬の第8波を参考に基準を定めた。県内の139にある定点医療機関の1施設当たりの1週間の患者数が8人を超えた場合は「感染拡大注意報」で、感染者が急増するおそれがある状況だ。16人を超えると「感染拡大警報」で、感染者の増加が続き、医療のひっ迫のおそれがある状況だ。
同じ5類の「季節性インフルエンザ」には、注意報と警報の全国的な基準があるが、新型コロナにはない。

新たな波 4カ月ぶりの警報 

その新型コロナ感染拡大警報が、2024年2月2日に静岡県全域に発令された。1月22~28日までの1週間の定点医療機関当たりの感染者数が19.14人となり警報の目安の16人を超えたためだ。前週比は2023年11月下旬から10週連続で増加している。警報発令は2023年9月下旬以来で約4か月ぶりだ。

新型コロナのインフルエンザの比較
新型コロナのインフルエンザの比較

1週間の感染者の推計は1.7万人で、これはこれまでの最大波だった第8波(2023年冬)の約4割、第9波(2023年夏)の約7割だ。病床確保病院の中等症以上の入院者数や、コロナで休職している医師や看護師数、救急搬送困難事案も増えていて、県は医療状況の評価レベルについても1月下旬に「医療ひっ迫注意報」に引き上げた。
まさに第9波に次ぐ、新たな波が立ち上がっている。県内はインフルエンザも警報発令中で、同時に警報が出たのは史上初めてだ。

10番目の波の呼称は?

新型コロナは静岡県では2020年2月に初めて確認され、以来 主流株の移り変わりなどで2023年11月まで9回 大きな波があった。それぞれ「第1波」から「第9波」まで、通し番号で呼ばれてきた。1月から感染者急増している波は、10番目の波だ。

警報発令の2週間前の1月19日、静岡県は「感染拡大注意報」を発令した。その際、県内の感染症対策の司令塔となる県感染症管理センターのリーダーで、医師でもある後藤幹生センター長は「コロナの、いわゆる第10波が始まってきているという状況になっています」と発言していた。

警報で会見する県感染症管理センター・後藤センター長
警報で会見する県感染症管理センター・後藤センター長

ただ2月2日の警報発表の緊急記者会見で記者に「“第10波”という認識はあるか」と問われ、後藤センター長は“第10波”にかわる新たな呼称を提案した。
後藤センター長は「2桁になったら番号つけるのをやめるかという話もあるような気がしますが」と前置きしたうえで、オミクロン株が主流になった第6波(2022年冬)以降の2年間は、毎年 冬と夏に流行がくることから、通し番号の“第10波”はやめにして“2024年冬の波” と呼んではどうかと提案した。

第6波以降は毎年 冬と夏に流行
第6波以降は毎年 冬と夏に流行

県感染症管理センター・後藤幹生センター長:
(2022年1月に)オミクロン株に代わってからは、毎年必ずと言っていいほど第6波と第8波は1月の正月明けに、第7波と第9波は7月のお盆明けに立ち上がる。偶数(6、8)が冬、奇数(7、9)が夏の波。(今回の流行は)“第10波”ではなく“2024年の冬の波”というのが一番正しい。番号をやめたらどうか。多分の今年の夏も第11波か第12波かわからないがそうなってくると思うので、年に2回の“夏の波”と“冬の波”というのがいいのかなと思っています。(今回の波は)今年の番号をつけて“2024年冬の波”。“2024年冬の波が始まった”という表現がいいと思います

感染状況を説明する後藤センター長(2023年2月)
感染状況を説明する後藤センター長(2023年2月)

後藤センター長は、徳川家康が豊臣家を滅ぼした「大阪 冬の陣、夏の陣みたい」と自分でつっこみを入れていたが、「年に加え冬の波、夏の波といった方が、(いつのことだったか)記憶に残りやすい。番号だといったい、どれが何波か数えていないとわからなくなりますので」と、新しい呼称のメリットを強調していた。
確かに同じ5類の季節性インフルエンザも年に1回 秋から冬にかけてなど周期的に流行を繰り返すが、その波を通し番号で呼ぶことはない。

新変異株JN.1は「感染力が強い」

さて呼称はともあれ、新たな波は気になることがある。オミクロン株の新たな変異株JN.1の流行だ。12月25日から1月28日までに判明した県内の75検体のうち、JN.1を含むBA.2.86系統は43検体57%、JN.1だけだと29検体39%だった。
後藤センター長は、最近の流行拡大の理由のひとつにJN.1への置き換わりをあげ、「感染力が強い。一度かかった人でも(これまでの変異株に比べ)かかりやすい」と注意を呼び掛ける。

警報の記者会見の資料
警報の記者会見の資料

県感染症管理センター・後藤幹生センター長:
国立感染研究所のリポートをみると、これまでに身についた免疫抗体、感染したりワクチン接種を複数回うったりして得た抗体に対して、抗体がくっつくのを逃げる(中和抗体からの逃避)能力が、これまでのXBBとか過去の系統と比べてもすごく強いと言われている。ですので、1回かかった人やワクチンをうった方もかかるリスクが多少あがっていると思います。ただ重症化するというデータはあまりないようです。臨床現場の医師の報告によると、重症化するのは株にかかわらず、これまで1回もかかったことがない方で、なおかつワクチン接種が2回以下などの方が、症状がきつく出やすいと言われています。そういった方が症状を軽くしたいと思ったら、無料の期間中にワクチン接種をお願いしたい

県内ではこれまで一度 感染拡大警報が発令されると注意報に引き下げられるまで6~8週間かかっていて、後藤センター長は「警報は3月半ばまで続く」と予想する。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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