内密出産はどのような女性が必要とし、また、生まれた赤ちゃんの処遇は今どうなっているのか。全国で唯一、内密出産に取り組んでいる熊本市の慈恵病院が、運用開始から2年間のデータを初めて明らかにした。
2年間で21例 慈恵病院がデータ発表
12月21日に慈恵病院は、2023年7月から12月までに、母親が病院の一部の職員にのみ身元を明かし出産する内密出産で7人が出産したと発表した。

2021年12月の運用開始以降、2年間の累計は21例。蓮田理事長は熊本市児童相談所からの報告も含め、21例についてのデータを明らかにした。

慈恵病院・蓮田健理事長:
ブラックボックス化したシステムと思われるかもしれない。可能な限り実情を知っていただいて、社会に考えていただきたい

母親の居住地域は「熊本以外の九州」が7人と最も多く、「関東」が6人、「近畿」と「中国・四国」が3人、「北海道」からも1人利用していた。
母親の年齢は「20代」が12人、「19歳以下」が8人、「30代」が1人で、病院までの移動手段は「新幹線」が15人、「飛行機」が2人だった。

内密出産に至った第1の理由は「親に知られたくない」が合わせて16人と最も多く、親の虐待や過干渉が影響しているとしている。
母親の身元開示…赤ちゃんの処遇は?
母親は健康保険証のコピーなどを残して退院する。身元を開示する時期について「16歳から18歳」とした母親が11人と最も多くなった。

21例のうち内密出産を維持しているのは12例で、9例はその後身元を明かし、県外の児相に移管されている。

赤ちゃんの処遇については、内密出産を維持した12例は全員、特別養子縁組の見込みだが、身元を明かした9例のうち、特別養子縁組は3例にとどまり、2例は実の親などが養育、1例は里親、3例は処遇が不明ということだ。
蓮田理事長は、「自分で育てる」として身元を明かした事例について懸念を示した。

慈恵病院・蓮田健理事長:
育てたくても育てられなくて乳児院などに託さないといけない。だったら(実子として育てられる)特別養子縁組の方が、赤ちゃんが心穏やかに過ごせたのではないかと思うこともあります。
今後は毎年12月に公表する方針
また、母親の対応にあたる新生児相談室の蓮田真琴室長は21例を振り返り、次のように話した。

慈恵病院・蓮田真琴新生児相談室長:
21例に通じるのはみんな必死ということです。本当に(赤ちゃんと)一緒に死ぬかどうか瀬戸際まで悩んで来ているので、決して安易な気持ちで内密出産をして赤ちゃんを預けているのではなく、自分と赤ちゃんにとって一番いい選択肢として来られています。

蓮田理事長は、今後のデータ公表について「こうのとりのゆりかごのように、行政による検証は行われない見込みだが、内密出産の透明性を確保するため、毎年12月に病院が公表する方針」とした。
(テレビ熊本)