「長期避難世帯」認定解除 被災地は今

42人にのぼる死者・行方不明者が出た九州北部豪雨から3年。4月に「長期避難世帯」の認定が解除された後も故郷を離れて暮らす福岡県朝倉市の住民の思いに迫る。

アナウンサー実況(2017年7月):
かなり流木などの被害を受けているこのあたり、朝倉市杷木IC上空の様子をご覧いただいています。濁流で、流木が散乱している状況です

おびたただしい数の流木と大量の土砂。

九州北部豪雨は、人々の暮らしに大きな爪痕を残した。

あれから3年、被災地は…

岸本貴博記者:
2020年4月、長期避難世帯の認定が解除された杷木松末の小河内地区です。すでに立ち入り制限はなく自宅の再建も可能ですが、ほとんどの方が戻ってきていません

17世帯が暮らしていた小河内地区。豪雨のあと、2次災害のおそれがあるとして「長期避難世帯」に指定され、住むことができなくなった。

4月に解除されたが、集落に戻ってきたのは1世帯だけだ。

朝倉市・林裕二市長(2020年3月):
そのコミュニティーに対して支援していくと、具体的にはコミュニティーの維持ができるように、そしてまたコミュニティーが再生されるように

朝倉市の林裕二市長は、長期避難世帯の一部解除にあたって集落のコミュニティー再生を誓ったが、待ち受けていたのは厳しい現実だった。

小河内地区で生まれ育つも「また土砂とかが崩れてきたら…」

小河内地区で生まれ育った小川達也さん(35)も、集落に戻っていない1人だ。

今は、約8km離れた場所に暮らしている。

この日は、畳を運び出すために集落にある、元の自宅に帰ってきた。

ーーこちらに戻るご予定というのはあるんでしょうか?

小川達也さん:

もうこっちには戻らないと思います。ほかの方も、全然周りも、自分たち世帯だけ戻ってきても近所も少ないし、淋しくなるし。一番の理由は、また土砂とかが崩れてきたら、ここに家を建てるとなっても心配ですよね

集落の真ん中を流れる小河内川。
小川さんの元の自宅は、そのすぐそばにある。

小河内川の上流には、国が2020年度から、2つの砂防ダムを建設する。小河内地区などの災害リスクを減らすためだ。

完成するのは2023年3月の予定。しかし、集落のほとんどの住民は、小川さんのようにすでに生活基盤を別の場所に移してしまっている。

小川達也さん:
工事は進められているんですけど、お亡くなりになった方とかもたくさんいるし。母校の松末小学校もなくなってという感じで、小河内地区から小学校に行く人も、閉鎖されているんで、いないし

小川達也さん:
本当に悲しいとしか言えないですね

自宅を再建中…「ふるさとに戻りたい」

「集落崩壊」の危機に直面している小河内地区。

それでも、「ふるさとに戻りたい」と思いを抱き続けている人もいる。

ーーこちらにいつか戻ってきたいという思いはありますか?

小川信博さん:

戻ってこないなら、あげなことはしない

小河内地区で半世紀近く農業で生計を立ててきた小川信博さん(67)。

小河内川の下流に位置する自宅は今、再建中だ。

ただ、自宅が完成しても、「元通りの生活は取り戻せない」と感じている。

小川信博さん:
まだダムもできておらんし、川もこげんなふうじゃいかんし、帰ってきたって田んぼがない

小川さんが所有する田んぼや畑は、今も土砂に厚く覆われたままで、農業での生活再建は難しい状況だ。

さらに雨に対する不安もある。

小川信博さん:
山の中の林道やら、あそこには、まだ土砂が流れてから、たまっている。それが、また流れてくるはず。だけん、みんなが帰ってきたいと思っても帰ってこられない。また、どっちみち出なくてはならない。災害というか雨が降ったら。小河内地区は2軒だけしかなくなる。隣組にもならんけんね、もう駄目だよ…

九州北部豪雨から3年。
この災害がきっかけの1つとなり、朝倉市全体の人口は2000人近く減少した。

災害復旧や防災の取り組みが進む一方で、被災した集落の再生には厳しい道のりが待ち受けている。

(テレビ西日本)