和歌山・串本町の夏の風物詩、カツオの一本釣り。漁師たちが釣りざおを上げるたびにカツオが宙を舞う。そんな熟練の漁師たちに交じって漁をしているのは、子ども…?

漁師を目指す少年の挑戦を追った。

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あどけなさ残る“中学1年生”

漁師を目指す少年は、森口 海晴(もりぐち かいせい)くん、中学1年生。漁港から程近い学校に通っている。

休み時間は仲良しの友達とふざけあい、あどけなさが残っている。普段はとても恥ずかしがり屋な性格の海晴くんだが…

ーー海晴くんについて

海晴くんの同級生:
学校ではおとなしい人ですけど、釣りになったら変わりますね。かっこよくなったりしますね

本州最南端の町、和歌山県串本町。この町では、黒潮に乗って北上するカツオの漁が、古くから盛んに行われている。

海晴くんのお父さんの征也(せいや)さんと、おじいちゃんの嗣也(ともや)さんは2人とも漁師。

海晴くんは、小学4年生のころから、学校やクラブがない日は一緒に船に乗り、カツオ漁の手伝いをしている。

海晴くんの父・征也さん:
沖へ遊びにいきたいっていうから連れていって、港の中で(釣りの)練習したり、家で練習したり。(釣りが)好きなんやなと思います

憧れの祖父や父の背中を追って…

午前2時30分。カツオ漁は真っ暗な深夜に出航する。目をこすり、眠そうにしている海晴くん。船内で少し仮眠をとります。

午前4時、カツオ漁のポイントに到着した。海晴くんは起きてすぐ、作業着に着替えると、お父さんに「(ズボンが)反対や!」と突っ込まれつつも釣りの準備をする。

いよいよカツオ漁が始まった。

海晴くんの父・征也さん:
きたきた、きたぞー

海晴くんは、3年前から船に乗り始めた。その経験を生かし、さっそく釣っていく。海の中にはカツオの群れが。大人の漁師たちに交じって、小さな体で負けじとカツオを釣り続けていく。

海晴くんの順調な釣りにお父さんは「うまいなー」と声を掛ける。

「一本釣り」は、カツオの身をほぼ傷付けず、鮮度も保つことができる釣り方で、漁師たちは勢いよくさおを上げることでその反動を使って、カツオにかかっていた針を空中でとるという高度な技術を使っている。

3kgほどのカツオを、体全体を使って、さお1本で持ち上げるのはかなりの重労働。海晴くん、最初は順調でしたが、さおがしなるほどに引っ張られるカツオ漁に疲れが出てきた。

さおを持ち上げるスピードが落ち、カツオから針をうまく外すことができず、隣でお父さんが針を外してくれた。

続けて、カツオを釣ると…海晴くん、針が引っかかったままカツオを船の中にぶつけた。

海晴くんの父・征也さん:
やった、また。海晴、もうちょっとそっと釣らなあかんわ

傷がつくと売りものにならないカツオ。お父さんから注意が。一人前の漁師になる厳しさを痛感する。

落ち込む海晴くんに、お父さんが「疲れていない?」「腹減ってない?ジュース飲んでこい」と声を掛ける。

他の漁師が海晴くんに「きょうは釣れている?まあまあ?」と聞くと…

森口海晴くん:
ふつう

漁師:
釣れているほう?

森口海晴くん:
そんなに

お父さんに怒られて少し悔しそうな海晴くん。

ーーお父さんってどんな人?

森口海晴くん:
難しい…

少し落ち込んでいた海晴くん。でもちょっとやそっとじゃ気持ちは折れない。気を取り直して、ふたたびー本釣りに挑戦する。

「粘り強くカツオと向き合う」、海晴くん。きょうの漁でまたひとつ成長した。

海晴くんの祖父・嗣也さん:
上手に釣るようになってきたけどね。そりゃ一緒に来ていたら楽しいよね。孫と沖来たら楽しい。自分の好きなことしたらええんやけどね。漁師なるのもええし

一本釣りで体力限界も…頑張り屋の少年

午前9時30分。5時間におよぶカツオ漁が無事終わった。海晴くんもようやく緊張から解き放たれたようだ。

ここからは漁師だけのごちそうの時間。海晴くんが取れたてのカツオをさばいて刺身にした。

午前11時に港に到着。一息つく海晴くん。漁は終わったが、さらにここでもうひと仕事。カツオの水揚げ作業も手伝う。海晴くんは自ら率先して船の中に入り、カツオを何度も持ち上げて運ぶ。

早朝からの漁で消耗した体力も限界に近づいているが、「代わったろか?」というお父さんの助けも断り、自分の力で最後まで踏ん張る。海晴くん、あともう少し。

技術的にも体力的にも大変なカツオ漁。海晴くんを夢中にさせるものとは…

森口海晴くん:
魚を見るのが楽しいから

ーーお父さんとおじいちゃんについてどう思う?

森口海晴くん:
かっこいいと思います

恥ずかしがり屋な海晴くんにとって、自分の思いを言葉にするのはまだまだ難しいようだが、おじいちゃんやお父さんは憧れの存在だ。

海晴くんの父・征也さん:
まだまだ子どもやからどんなようになるか分からん。ゲームとか漫画も好きやから何になってくるか分からん。好きなんやったらしてくれたらいいし、好きなことしてくれたらいい

和歌山県串本町の漁師町で育つ頑張り屋の海晴くん。おじいちゃんやお父さんに見守られながら、きょうも船に乗っている。

(関西テレビ「newsランナー」2023年8月2日放送)

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