7月29日に行われた国内有数の花火大会「ふくろい遠州の花火」。この日、会場ではサプライズでドローンショーも開催された。借金をしてまでこのショーを企画したイベント会社の男性の思いに迫った。

イベント会社「スクラムクリエイション」
イベント会社「スクラムクリエイション」
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静岡県袋井市にあるイベント会社「スクラムクリエイション」。花火大会を3日後に控えた7月26日、山田年長 代表(59)は慌ただしい様子で所有するドローンをチェックしていた。

ドローンショーに魅了された山田代表
ドローンショーに魅了された山田代表

数年前、テレビで偶然目にしたドローンのショーに魅了されたという山田代表。その感動を地元の人とも分かち合いたいと思い、“事業として”ドローンショーに取り組むことを決意した。

移動水族館などを手掛けるも新型コロナで大打撃
移動水族館などを手掛けるも新型コロナで大打撃

しかし、折しも当時は新型コロナウイルスの流行真っただ中。移動水族館などを手掛ける「スクラムクリエイション」も大きな打撃を受け、売り上げは激減していた。

借金をしてまでドローンを購入
借金をしてまでドローンを購入

それでもドローンショーへの思いがついえることなく、借金をしてまでドローン200機を購入。ただ、言うまでもなくドローンを動かす技術も知識もない状態でイチから勉強を始めた。そしてショーを開催できるまでになった山田代表は、4年ぶりに開催される「ふくろい遠州の花火」を初舞台に選んだ。全国から花火師が集まる国内有数の花火大会で「花火にドローンを絡められたら、すごくおもしろいだろうな」と思ったからだという。

ドローンショーを売り込む山田代表
ドローンショーを売り込む山田代表

花火大会を共催し、ドローンショーを“売り込まれた” 袋井商工会議所の豊田浩子 会頭は「山田代表のパワーの一言。ここまで作り上げたのはすごい」と感嘆するが、当の本人は「先なんてどうなるかわからない。でも、わからないからといって逃げたら絶対にいい方向にはいかない。こうなりたいと思って進むから道も開ける」と笑い「終わった後にみんなが『やってよかったね』『また来年もやってもらいたいね』と言ってもらえるくらいのドローンショーにしたい」と現場の下見や主催者との打ち合わせなど、下準備もほぼ一人でこなした。

現場には長男・健太さんの姿も
現場には長男・健太さんの姿も

迎えた花火大会当日。山田代表はドローンの最終調整に余念がない。友人や地域の人の協力も得て、1機ずつ動作を確認していく。そこにはドローンショーで使用する音楽を編集した長男・健太さん(16)の姿もあった。健太さんは山田代表について「これまで口だけの時も多かったので最初はできるのかなと思っていた」と率直な思いも吐露したが「実行できたのは本当にすごいと思う」と誇らしそうな表情を見せた。そんな息子の思いを知ってか知らずか、山田代表も「ここまで苦労してきたし、せっかくやるので、きちんと飛ばして、いい絵を見てほしい」と開演が待ちきれない様子だ。

夜空を彩るドローン
夜空を彩るドローン

そして、その時がやってきた。天高く舞い上がった200機のドローン。

ドローンが描く“フェニックス”
ドローンが描く“フェニックス”

プログラム通り、夏の夜空に色鮮やかにフェニックスや風鈴などを描き、大勢の観客が美しさに酔いしれた。

“我が子”を見守る山田代表
“我が子”を見守る山田代表

心配そうに“我が子”を見守っていた山田代表も、ショーを終え無事に着陸するドローンを見て安堵と喜びがあふれ、何度もガッツポーズを繰り返した。もちろん、この日を皮切りに本格的にドローンショーをビジネスとして展開していく考えだが「独りよがりのショーにならないように、演出も含めてすばらしいショーが開催できるようにしたい」と意気込む。

さらなる工夫と改良を重ね「より多くの人を楽しませたい」と話す山田代表。これからも挑戦は続いていく。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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