スラックスやチノパンなどを購入した際、後ろポケット(お尻ポケット)が縫われていて口がふさがっていた経験はないだろうか。

筆者は、縫われている糸をほどいていいのか悩んだり、縫われていることを知らずに着用し、いざポケットに手を入れようとすると使用できなかった経験がある。

パンツにはたくさんの種類があり、後ろポケットが縫われている商品もあれば縫われていない場合もあるのだ。例えば、ジーンズなどデニム生地のパンツで縫われている商品を見たことがない。これはどうしてなのだろうか。

仕付け止め部分(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
仕付け止め部分(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
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また、後ろポケットは縫われていたとしても、左右にある前ポケットは縫われていないように思う。

ネットでも、「パンツのお尻のポケットが飾りだと思っていたら、細い糸をほどいたらポケットが出現」「ユニクロのパンツってどうしてお尻のポケットついてるのに、口が縫われてるの????」「ジャケットとかパンツのポケット閉じられてるやつ、しつけ糸だよね?取っていいんだよね?」などの投稿があり、不思議に思っている人がいるようだ。

陳列する時、後ろポケットは“開きやすい”

では実際、なぜ後ろポケットは縫われているのだろうか? この糸は取っていいのだろうか?

まずは、コメントにもあった株式会社ユニクロの担当者に話を聞いてみた。

ーーどうして後ろポケットは縫われているの?

型崩れ防止のため(ポケットが開かないように)、仕付け糸を仮で縫いつけています。基本的に、パンツの後ろポケットは陳列時に型崩れしないように仮で縫われており、着用前を想定しています。

後ろポケットの仕付け糸
後ろポケットの仕付け糸

ーー前ポケットが縫われていないのはどうして?

前ポケットは脇ラインの位置に斜めについている仕様が多く、後ろポケットほど開いて見えないため、縫われていないことが多いです。


ーー後ろポケットに仕付け糸がない商品は?

スラックスなどきれいめなパンツは、型崩れ防止のため仮で縫われていることが多く、ジーンズなどカジュアルなパンツには縫われていないことが多いです。

スラックスなどきれいめなパンツの生地は、薄手のものが多く、店頭でハンガーに掛けて陳列する際など、後ろポケットは開きやすいです。ジーンズやカジュアルパンツの生地は比較的厚地のため、ポケットが開きにくいことが理由の一つとして挙げられます。

ーー後ろポケットにボタンが付いている商品は縫われていないこともある。何が違うの?

ボタンや蓋がついていることで、ポケットが開かないようになっているため、ポケットにボタンやフラップ(蓋)がついている場合など、縫わないこともあります。

スマートアンクルパンツ 後ろポケット部分(提供 :ユニクロ)
スマートアンクルパンツ 後ろポケット部分(提供 :ユニクロ)

もう1社聞いてみた

もう1社、全国各地でセレクトショップを運営する株式会社ユナイテッドアローズの場合はどうなのだろうか?「グリーンレーベル リラクシング」のブランドディレクター・田中安由美さんに話を聞いた。

ーーどうして後ろポケットは縫われているの?

ヒップの丸みによる、ポケット口の開きでの型崩れを防ぐためです。

仕付け止め部分(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
仕付け止め部分(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)

ーー前ポケットが縫われていないのはどうして?

型崩れ防止の仕付け止めのため、前のポケット口の開きによるパンツの型崩れの影響は少ないためです。


ーー後ろポケットが縫われていない商品は?

縫われていない商品は、カジュアルなアイテムであるためと素材が硬く、ポケット口の開きによる型崩れの影響が少ないためです。

デニムパンツ(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
デニムパンツ(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)

ーー後ろポケットにボタンが付いていると縫われていない商品もあるけど、何が違うの?

ボタンが付いている後ろポケットの場合は、基本仕付け止めは入れていません。ボタンで止まっているため。ボタンで止まっていても素材に落ち感(滑らかで下へ落ちるような重みがある感じ)がある場合などは、まれに仕付け止めをいれるケースもあります。

通常仕付け止めを入れる際は両方に入れます。その他としては、後ろ袋布に品質表示縫込みなどがある場合は、そちら側のみ仕付け止めを入れていないケースもあるかもしれません。

後ろポケットにボタンが付いているワイドパンツ(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
後ろポケットにボタンが付いているワイドパンツ(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)

仕付け糸は、外さなくても問題ない

後ろポケットは、陳列などで型崩れしないための“仕付け止め”だったことがわかったが、それはほどいても問題ないのだろうか?

2社に話を聞くと、「仮で縫われているため、ほどいて問題ない」ということだった。
また、仕付け止めをしたままの着用については、「ポケットを使用される方は取る、使用されない方はそのままほどかないのが最適」と話していた。

提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」
提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」

また、ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」では「仕付け糸」の外し方を紹介している。

仕付け糸は、“白い糸”が目印で、ポケット左右に少し隙間があったり、ポケットを引っ張ると白い糸が少し浮いてくるそうだ。

白い糸が仕付け糸(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
白い糸が仕付け糸(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)

外す時は、この浮いた糸を、リッパーや小さめのハサミを使って切り外す。

リッパーを使って外す(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
リッパーを使って外す(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)

糸を外していくとポケットが少し開いてくるため、開けながらさらに外していき、まだ残っている糸は、糸の先を引っ張れば抜き取ることができるということだ。

残っている糸は先を引っ張り抜き取る(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)
残っている糸は先を引っ張り抜き取る(提供:ユナイテッドアローズ「グリーンレーベル リラクシング」)

「グリーンレーベル リラクシング」公式Instagramに投稿されているので、参考にしてみてほしい。

仕付け糸は型崩れ防止のためということで、ポケットを使う際には取って問題ないとのことだった。購入者の元に最適な型のままで商品を届ける、企業の細やかな気遣いが感じられるものだった。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。