銀座強盗事件の稚拙な犯行と組織の関与
さながら映画のワンシーンのように銀座のロレックス専門店に仮面姿の男3人が高級腕時計を奪って逃走した事件に関し、事件後に逮捕された男4人がいずれも横浜市内に住む16~19歳の少年だったことが判明した。また、4人は逃走にレンタカーを使用し、ナンバープレートを付け替えていた可能性があることがわかった。



その手口は極めて稚拙かつ粗暴であり、逃走車両の後部座席スライドドアを開けたまま慌てて逃走していたシーンを見ても、慌てふためく様子がうかがえ、プロの犯行ではないと言える。

さて、犯行自体は極めて稚拙だが、一方で組織性も窺える。
本事件では100点以上の高級時計を奪っているが、それらを売りさばくのは通常は困難であり、既に事件計画段階からそれらを売りさばき現金化する組織的なルートや手法が用意されていたのではないだろうか。(逆に用意せずにただ高級品を奪ったのであれば極めて稚拙な犯行である)
そして、実行役について、組織の言いなりになりやすい少年らを揃え、捨て駒として強盗を行わせた組織的な犯行であると推察される。
いずれにせよ、なぜこうも稚拙で粗暴な強盗に安易に加担してしまうのだろうか。
あなたの家族が加害者になる危険
一連の強盗事件における犯罪組織の実行役の募集については、SNSや掲示板等を通じ募集されていると見られていたが、大手求人サイトや掲示板サイトなどで、「高収入」をうたい、「高額」「即日現金」「高額即金」「副業」「ハンドキャリー」「書類を受け取るだけ」「行動確認・現地調査」のアルバイトなどと称して募集していたことが明らかになっている。(その他、闇バイトと称せずとも、いわゆる地元の“つるみ”で、素行の悪い先輩から誘われて加担してしまうケースも当然ある)
また、一度応募したものの、詐欺や強盗等の事件を感じ、やはりやめようと思っても辞めさせない構図も明らかになっており、実家の表札を映した動画などを犯罪組織側に送らされて抜け出せなくなっていた手口や身分証の提出や自身の写真を送付させ、組織から抜けさせない・辞めさせない手口を使用している。

闇バイトに応募する際、やってはいけないことをやってでも状況を変えたい・追い込まれている環境であるか、そもそものやって良いことと悪いことの区別はついているが、強盗を行う犯罪組織に引き込まれないように、「この先に何が待ち受けているか、あり得るか」と想像する力が不足してしまっていたのではないだろうか。
それに加え、「想像力、リテラシーがない」の言葉では片づけられない、前述のような犯罪組織の巧妙・悪質な手法が存在するのだ。
加害者にしないために
警察としては、闇バイトに関連するSNS 投稿の削除や、広報活動を通じてその危険性を周知させる取り組みを行い、ある程度の効果を出しているが、読者皆さんのご家族が加害者にならないよう、改めて以下の点について、“リアルな表現”を用いて想像力を喚起するように伝えてほしい。
・楽に高額が稼げるバイトは存在しない
・金銭問題の解決について、一人で決断しない(相談させる)
・強盗の実行役は必ず捕まる
・特殊詐欺・強盗に関する犯罪組織の手口を詳細に理解させる
・捕まった後の悲惨な人生を理解させる
我々社会においても家族を加害者にしない教育とモラルの向上が必要である。
【執筆:稲村悠・日本カウンターインテリジェンス協会代表理事】