三輪自動車「トゥクトゥク」を国内の観光地でもよく見かけるようになった。ただ静岡県熱海市では、観光客がレンタカーのトゥクトゥクを運転して3人が死傷する事故を起こしている。地元では、「車との操作性の違いを熟知して乗るべき」との指摘もある。宿泊客の送迎に使うホテルに聞いた。

歩道に乗り上げ3人死傷 レンタル店は休業

事故を起こしたトゥクトゥク(2023年3月15日・熱海市)
事故を起こしたトゥクトゥク(2023年3月15日・熱海市)
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2023年3月15日 熱海市東海岸町の国道135号線で、大学生がレンタル店で借りた「トゥクトゥク」が歩道に乗り上げ歩行者3人をはねた。
この事故で埼玉県の19歳の男子大学生が死亡し、80代と20代の男性がケガをした。

事故を起こしたトゥクトゥクのレンタル店
事故を起こしたトゥクトゥクのレンタル店

事故から約1カ月たった4月中旬も、トゥクトゥクを貸し出したレンタル店は休業を続けていた。

現場診断で再発防止策を検討

警察・県などによる現場診断(4月11日)
警察・県などによる現場診断(4月11日)

どうして事故が起きたのか。
再発防止に向けて、現場の形状や見通しなどを確認する現場診断が4月11日に行われ、警察や県、交通安全にかかわる団体など19人が参加した。

トゥクトゥクは画面奥から来て歩道に乗り上げた
トゥクトゥクは画面奥から来て歩道に乗り上げた

参加者
(トゥクトゥクは)こっちから行って、また左へ(ハンドルを)切らなければいけない時に、たぶん切りすぎて(歩道へ)乗り上げてしまった

車道と歩道(右)の間には段差が
車道と歩道(右)の間には段差が

参加者
(四輪)車のつもりで路側帯に合わせて運転しようとすると、後ろのタイヤがこっち(段差)に当たってしまう

参加者は現場付近を見てまわり、ガードレールの設置や観光客への指導など事故の防止対策について話し合った。

参加者
(レンタル店は)ただレンタルするのではなくて、指導や講習的なものが必要かなと思います。それと、ガードレールを要所要所にもつけるべき

トゥクトゥクは画面奥から走ってきた
トゥクトゥクは画面奥から走ってきた

参加者
普通の車とトゥクトゥクの操作性の違いを熟知してもらわないと(熱海の街は)難しいと思う。(現場の国道は)見た目はそれほどカーブがきつくなく見えても、実際に運転してみるとS字カーブがきつい

警察はレンタル店に対して、トゥクトゥクの操作の難しさや危険性について、観光客への説明や講習を求めたいとしている。

静岡県警交通企画課・岡澤尚浩管理官
歩道への逸脱なので、歩道と車道の境界にあたる防護柵あれば助かったかもしれない。追突が非常に多いポイント。警察のソフト面の対策として、姿を見せて注意喚起する対策も熱海署を中心にやっていかなきゃいけないと感じている

県警によると現場付近では2018年から4件の事故が起きていて、県警は県と協議しながら必要な対策を進めていきたいとしている。

トゥクトゥクの運転 どう違う?

タイなど東南アジアで見かけるトゥクトゥク。
運転方法は車やオートバイと、どう違うのだろうか。

トゥクトゥクで宿泊客を送迎するホテル
トゥクトゥクで宿泊客を送迎するホテル

宿泊客の送迎にトゥクトゥクを活用している河津町のホテルに聞いた。

ホテル四季の蔵・井野浩哉さん
ハンドルはこちらです。オートバイと同じように、右手がアクセルになっています。アクセルは手動です

ブレーキはフットブレーキ
ブレーキはフットブレーキ

ホテル四季の蔵・井野浩哉さん
ブレーキはフットブレーキです。ふだん普通の車や小さいバイクを運転している人だと、トゥクトゥクは違和感があって、操作を間違える可能性があります

ホテルによると、トゥクトゥクのタイヤはオートバイと異なり地面と接触する面積が大きいことからハンドル操作に力が必要で、運転は慣れないと難しいと話す。

ホテル四季の蔵・井野浩哉さん
非常に(ハンドルが)重たいので、うまくぐっとタイミングを見て力を入れないと、うまく操作できないところがトゥクトゥクにはある。坂の下りのカーブは非常に速度も遅くしますし、細心の注意を払って運転しています。ブレーキとハンドル操作が、トゥクトゥクの難点です

大型二輪免許取得者に限定 3カ月練習して送迎

このホテルではトゥクトゥクを1年前に導入したが、ドライバーには3カ月間の練習期間を設けた。
またトゥクトゥクは普通自動車免許を持っていれば運転することができるが、ホテルでは大型二輪の免許を持っている従業員3人にのみ運転を認めている。

井野さん「何人も後ろに乗ると非常に難しい」
井野さん「何人も後ろに乗ると非常に難しい」

ホテル四季の蔵・井野浩哉さん
最初の3カ月は試乗期間で、(運転に)慣れるために3カ月用意して、その後からお客様を乗せるようにした。経験のない方が運転して、急に何人も後ろに乗って、それではハンドル操作はどんどん難しくなるし、ブレーキもきかなくなるでしょうし、非常に難しいと思う

旅先で慣れない道と乗り物 再発防止にむけて

事故を起こしたトゥクトゥク(2023年3月)
事故を起こしたトゥクトゥク(2023年3月)

トゥクトゥクのレンタル業者は、普通運転免許を取得して3年以上がたっている人に、10分ほどの操作方法のレクチャーをして貸し出していた。
事故を起こしたトゥクトゥクには4人が乗っていた。
1人の命が奪われ2人がケガをした事故。繰り返さないために、原因究明と再発防止策が求められる。

11日の現場診断で、再発防止策としてあがった意見を確認しておこう。
・車道と歩道の間へのガードレールの設置
・トゥクトゥクに乗る観光客への危険性の説明や適切な講習
・警察による事故防止に向けた注意喚起

熱海は起伏の多い街だ。旅先での慣れない道と、ふだんは乗らない乗り物。
観光客が熱海でトゥクトゥクを運転する際には、慎重な操作が求められる。

(テレビ静岡)