「DXしたら仕事が増えた…」という経験を持つ人は少なくないのではないか。

DX=デジタルトランスフォーメーションのためにシステムを導入したら、「仕事が複雑になった」「役割を終えた業務がゾンビのように生き永らえてしまった」など、仕事の効率化を図るはずが、逆に負担が増えてしまったケースが散見される。

なぜこのようなことが起きるのか。
それは、DXはデジタル“革命”であり、単なる“システム導入”だけではないからだ。

管理・間接業務に特化した日本初「仕事の進め方」の教科書

世の中が多様化し、ITの進化で変化のスピードが増す中、企業の成長にDX、つまり「デジタルを使用した働き方、稼ぎ方、行動」は不可欠だ。

そこで、DXに成功するための手引きとして、パーソルプロセス&テクノロジーでは、企業が“システム導入”に先駆けて実施すべき取り組みをまとめた、管理・間接業務に特化した日本初の“チーム生産性向上の教科書”『COROPS』を出版した。

20年間に渡るアウトソーシング事業で蓄積したノウハウを約200ページに集約し、人事・経理・総務・ITサポートなど管理・間接部門を含めた幅広い現場で活用できる、仕事の進め方の教科書となっている。

管理・間接業務に特化した日本初「仕事の進め方」の教科書『COROPS』
管理・間接業務に特化した日本初「仕事の進め方」の教科書『COROPS』
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その内容をわかりやすく紹介するため、パーソルプロセス&テクノロジーでは、「チーム生産性向上の教科書『COROPS』セミナー」を3月16日に開催した。

1部では「新時代に必要なチームの在り方」について、『COROPS』の責任者であるパーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ビジネスエンジニアリング部 事業部長・小野陽一氏とアドバイザーを務めた政府のDX白書有識者委員・沢渡あまね氏が『COROPS』の活用法を解説。
フリーアナウンサーの木佐彩子さんがファシリテータを務めた。

2部では『COROPS』の「アセスメントサービス」を受けた企業第1号、総合水処理エンジニアリング大手、オルガノ株式会社が加わり、実例紹介が行われた。

「チーム生産性向上の教科書『COROPS』セミナー」(1部)
「チーム生産性向上の教科書『COROPS』セミナー」(1部)

ーーまず沢渡さんと小野さんに『COROPS』の誕生秘話を伺います。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):
『COROPS』は、管理・間接部門の日本初の「仕事の生産性向上の教科書」です。
日本の管理・間接業務の現場のリアルなノウハウがつまった、血と汗と涙の結晶です!

経理、総務、営業サポートデスクなどの管理・間接部門は、“共通の仕事の進め方”のお手本が今までなくて、他部署からの要求が変わってきているのにアップデートできず、悪気なく組織をどんよりさせてしまうということがあります。

そこで、仕事内容を見直して、管理・間接部門の価値を高める道しるべが『COROPS』だと実感しています。

政府のDX白書有識者委員・沢渡あまね氏
政府のDX白書有識者委員・沢渡あまね氏

小野陽一氏(以下、小野):
プロジェクトに特化したマネジメントの教科書はすでにいくつかありますが、実際にやってみると、「何か足りない」とか「ここはやり過ぎ」といった、自分たちの業務には当てはまらない部分も多くあります。

そこで今回我々は独自に『COROPS』を開発し、数々の成功と失敗体験をぎゅっと集約して一冊の教科書にまとめました。

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ビジネスエンジニアリング部 事業部長・小野陽一氏
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ビジネスエンジニアリング部 事業部長・小野陽一氏

プロジェクトワークの現場と異なり、日ごろ当たり前のことを当たり前にやっている管理・間接業務、いわゆるバックオフィスの仕事は、なかなか評価の対象にならず、それでいて、細々とした仕事がいつの間にか増えているといったケースも多い。

そこで『COROPS』は業務を可視化して、「やめる仕事」と「名前を付けて向き合う仕事」に分類することで業務改善を図るという。

「続けること」「やめること」を決める

小野:
『COROPS』の基本は、「目的の設定」「業務の可視化」「認識合わせ」、それとマネジメント体制の「余白作り」の4つです。

「業務の可視化」は、管理・間接部門には特に大切で、仕事の進み具合や成果を“見える化”することで、「これ役立っているね」「これは必要ないね」と評価して認識合わせをする。
そこから、共通の“仕事の進め方”を見つけていきます。

そのため、『COROPS』ではまず、チームの業務内容を可視化し、課題を特定して改善点をつかむ「COROPSアセスメント」を行い、チームリーダーの「実務」と「マネジメント」、「改善」にかかっている時間の比率を測ります。

リーダーの実務がパンパンでは、業務改善する時間はありません。
実務率が下がった“余白の時間”に業務改善は進み、新たな価値が生まれると考えています。

「DXしろ!」と上から言われてシステムを入れたら仕事が複雑になったということがありますが、それは、現状の業務内容を可視化せずにシステムを導入したため、人間のオペレーションが増えてしまったケースです。

DXするのであれば、「何を目標にしてやるのか」のすり合わせが大切で、業務の“可視化”がとても大事です。

沢渡:
DXは“変革”なので、システム導入だけではないんです。今までの“勝ちパターン”を変えていくことが求められます。

そうすると「続けること」と「やめること」を決める意思決定をさまざまな業務でやっていかないと変革は実現しません。

役割を終えた業務を無理やりIT化して“ゾンビ”のように生き永らえさせては誰も幸せになりません。

業務を可視化して、“現在地”と“目指す姿”のギャップを把握する。そして、他部署の人たちと立場を超えた対話を通じて、成仏させる仕事は成仏させて、新たなテーマを見つけてチームと走っていくことが重要です。

ファシリテータ・木佐彩子氏
ファシリテータ・木佐彩子氏

ーー「続けること」と「やめること」の選別が大事とのことですが、沢渡さんはどれくらいバッサリ「やめること」を決めていますか?

沢渡:
私は、管理・間接業務、調整を一切やらない状態を作りました。チームメンバーに任せたのと、とことん仕事のやり方を“デジタル”に変えています。

私は浜松の浜名湖に近いオフィスを拠点に、なおかつ多拠点を飛び回って仕事をしています。対面での仕事も、郵送物の受け取りもしにくい制約があります。よって取引先とのやりとりは基本的にデジタル、相手企業の社内ルールで郵送や押印などのやりとりが発生する場合は、お断りするか事務作業サーチャージなど追加料金で対応するなどしています。

ーー小野さんはどのようにDXの必要性を社員に浸透させましたか?

小野:
私は2020年頃からDXの取り組みを始めましたが、その際、1000人ほどいる部署で『デジタル武装』という言葉を使って、「なぜ業務のデジタル化をしなくちゃいけないのか」の意義を70回ほどセミナーで言い続けました。

我が社の社員はエンジニアが多いものの、それ以外の部署の人も多いので、『デジタル武装』の意義を1年間繰り返し言い続けることによって、社員のマインドが急速に変わりました。

録画ではなく、オンタイムで喋ることを徹底し、しつこく言い続けることが大切だと思います。

『COROPS』は企業の健康診断

『COROPS』の概要がわかったところで、サービスの導入部分である「COROPSアセスメント」を受けた、総合水処理エンジニアリング大手、オルガノ株式会社の実例が紹介された。

セミナーに登壇した、オルガノの情報システムグループ長・原田篤史氏は、アセスメント結果と自らの認識とのギャップに驚きを露にした。

オルガノ株式会社 情報システムグループ長・原田篤史氏
オルガノ株式会社 情報システムグループ長・原田篤史氏

原田篤史氏(以下、原田):
最初に、「COROPSアセスメントを受けてみませんか?」と言われた時、私は正直、「うちはちゃんとコミュニケーション取れているし、できているから大丈夫」と思っていました。

しかし実際に受けてみると、こんなにもできていなかったんだなというのが実感です。

「人は見たいものしか見えない」と言いますが、「お互い助け合ってやっているから私のメッセージは通じているはずだ」というのは思い込みで、アセスメントをしないと客観的にものが見えなくなっていることがわかりました。

「チーム生産性向上の教科書『COROPS』セミナー」(2部)
「チーム生産性向上の教科書『COROPS』セミナー」(2部)

オルガノの「COROPSアセスメント」の結果からは、3つの事例が紹介された。

まず、1つ目は「チームメンバーの方針理解」について。
集約された調査結果を見ると、「日々の情報連携は十分され、目標や計画の理解度は高いが(74%)、目標設定の“背景にあるニーズ”の把握が薄い(10%)」との分析が得られた。

2つ目は「業務負荷の状況確認と改善」について。
こちらは、「日々の負荷状況は確認できているが(78%)、発生要因を見直していない(17%)」という結果となった。

そして、3つ目は「組織の改善に費やせる時間」、つまり「余白」を洗い出した調査だ。
オルガノのあるチームでは、管理者でも改善時間はわずか10%で、「定期的な見直しができていない」という厳しい結果となった。

“定期検診”で振り返る

今回のアセスメント結果を受けて原田氏は、「自分たちでない目線を使って業務の“見える化”をすることは効果的だと思う」と客観的な分析の重要性を口にした。

原田:
健康診断というよりは、“定期検診”に近い感じで自分を振り返り、そのデータをもとにみんなでコミュニケーションをするサイクルが重要だと思いました。

継続して、修正して、やり続けるところで『COROPS』のような教科書があるということは、今後のマネジメントの指標になるなと思いますが、重要なのは、これを見て自分がどう動くかだと思っています。

そして、良い組織でも悪い組織でも定期的にやった方が良いと感じました。

4月末リリース予定の会員制ウェブサイト「COROPS WEB」
4月末リリース予定の会員制ウェブサイト「COROPS WEB」

今回紹介した実例レポートを見て、自分のチームもアセスメントを受けてみたいと感じた人は多いのではないか。

4月末からは、会員制ウェブサイト「COROPS WEB」が本格始動する予定。
COROPS WEBでは、COROPSを理解するための簡単なショート動画などが見られるほか、資料のダウンロードも可能。さらに、アドバイザーへの相談窓口も設けている。

ウェブ登録を行って、チーム強化に役立ててみてはいかがだろうか。