日本のテレビ局で唯一 開幕式を取材

新型コロナウイルス対策で、異例づくしとなった中国の全人代=全国人民代表大会。FNNは日本のテレビ局では唯一、開幕式やその舞台裏を取材することが出来た。

後編では、開幕式前夜に行われた記者会見と開幕式の様子をお伝えする。過去の映像と比べてみると、様々な異変が生じていたことがわかった。

「3密」が一転 “双方向”の遠隔会見

PCR検査で陰性が確認された後、我々海外メディアの記者は全人代開幕式前夜恒例の記者会見に向かった。しかし、案内されたのは会見が行われる人民大会堂ではなくメディアセンター。メディアセンターはサテライト会場のような場所で、人民大会堂からは7kmほど離れた場所にある。

記者団はPCR検査で陰性の確認が取れているにもかかわらず、会見場の報道官は画面の向こう側にいる。記者のいる場所と報道官のいる場所を中継で結んで、直接接触しないような仕組みとなっていた。また、記者同士の間隔もこれまでよりもやや広めにとってあったほか、会見場の前には使い捨てのビニール手袋、消毒液、サージカルマスクが置いてあったが、あまり使われている様子はなかった。

別の場所にいる報道官と中継を繋ぎ、記者は間隔を空けて座っていた

映像で見比べるとよくわかるが、過去の全人代の前日会見は完全に「3密」状態だった。この会見では、翌日に首相が読み上げる「政府活動報告」よりも先に、中国の経済成長率の目標や軍事予算の伸び率などのおおまかな数字が明らかにされることがあるため、国内外のメディアの注目が集まる。

2018年の記者会見の様子。対面形式で記者も大勢いた

今年はこの場で、全人代の張業遂報道官が、香港の反政府活動摘発を可能にする「香港版国家安全法」について審議することが初めて明かされ、全人代の重要議題に急浮上した。張報道官は「一国二制度を堅持し、充実させることは完全に必要なことだ」などとその意義を強調した。

3密を避け遠隔となった会見場だが、記者側の会場にもカメラが複数台設置されてあり、報道官側にも大モニターが用意され、記者の様子がわかる仕組みとなっていた。

2020年の記者会見。報道官側にも記者の様子が見えるようになっていた

社会的距離ゼロだった2019年の開幕式

翌日はいよいよ全人代の開幕式だ。人民大会堂の前の花壇では花が咲いていたが、例年はまだ寒い3月に開催するため、これも珍しい光景である。

人民大会堂前にある花壇の花が見ごろを迎えていた2020年の全人代

また、例年であれば外国メディア陣は少しでも良いカメラ位置を確保するため、午前0時ごろから人民大会堂前で並び始める。朝5時ごろにはかなり長い列になっていて、開門と同時に会場内のプレス席までダッシュするのが常だ。しかし、今年は人数が絞られているためその必要もない。

議場では出席者ほぼ全員がマスクで待ち受ける中、前日の全国政治協商会議と同様、習近平国家主席ら最高指導部らはマスクなしで登場。ちなみにマスクなしだったのはひな壇の前列の2列のみ。最前列は全人代の主席団常務主席という幹部メンバーで、2列目は中国共産党トップ25人である政治局メンバーらだ。

全人代の出席者はほぼ全員マスク姿

今年の記者席は3階席のみでメディアの人数が絞られたため、空席も目立った。

空席の目立つ記者席

一方で、去年の映像を見ると、ここでもかなり「密」状態であったことがわかる。社会的距離はゼロに等しく、席の移動もままならなかった。

2019年の全人代記者席は大勢の記者で埋まっていた

毎年注目される李克強首相の政府活動報告にも異変が生じた。李首相は、「新型コロナウイルス感染症と経済・貿易の情勢においては不確定性が非常に高い」として、例年発表してきた経済成長率の目標を示さなかった。これは1990年に目標を示すようになって以降、初めてのことだ。

退場の際、去年の映像では、習近平国家主席ら最高指導部が退場する際は、他の幹部と次々と握手を交わしていたが、今年は一変して握手はなし。

2019年の全人代開幕式。習主席らは握手を交わして退場していた

王毅国務委員兼外相がガッツポーズをしたり、微妙なアイコンタクトでそれぞれ習主席ら最高指導部を見送っていた。

2020年の全人代開幕式では退場時の握手はなかった

感染拡大が収まり、他の都市の制限が緩和された後も、北京では市内への出入り規制など「首都防衛」が続いた。新型コロナウイルスの影響で経済が落ち込み、社会が不安定になりがちな中、習近平指導部としては、全人代の開催によってウイルスの感染拡大封じ込めに成功したことを内外に誇示し、習主席の一層の権威付けとともに、地方の幹部らに対して引き締めを図るなどの狙いがあったとみられる。これまでにない厳格な措置を取ってでも、重要会議を何としても開催するという執念が結実したとも言える。

【取材:FNN北京支局】