日本のテレビ局で唯一開幕式を取材

新型コロナウイルスの影響で、中国の国会にあたる全人代=全国人民代表大会は、当初の予定よりおよそ2か月半遅れの5月22日から28日の日程で開かれた。例年常駐を含め多くの海外メディアが取材する全人代だが今年は感染対策のため会場の人民大会堂などで取材できる外国人記者やカメラマンは20数人に限られるなど、異例づくしだった。FNNは日本のテレビ局では唯一、世界的にも数少ないメディアの一つとして、開幕式やその舞台裏を2日間に渡って取材することが出来た。

取材のため我々外国メディアが集められたのは全人代開幕式の前日5月21日、関連会議である全国政治協商会議開幕式の早朝だった。例年、全人代の期間中は北京市内が厳戒体制になり、メインストリートでは朝5時半から一部交通規制が始まっていた。会議に参加する地方の代表団が泊まる老舗ホテルの前を通ると、出入り口が完全封鎖され、一般客の立ち入りが禁止されていた。感染予防のため代表団を外部の人と接触させないための措置だ。

容赦ない PCR 検査に悶絶…30時間カンヅメ、食事は「一人メシ」

集合場所のホテルに着くと、記者やカメラマン一人ひとりにPCR検査キットが準備されていた。ホテルの敷地内に入るとゲートが閉められ、我々も隔離状態となった。PCR 検査では綿棒を何度も喉の奥まで入れられ、思わずのけぞる記者が続出。事前の案内に「嘔吐を避けるため、検査2時間前の食事は控えてください」と書かれていたが、容赦なく喉の奥をつつかれ、確かに食後だと危ないレベルだと感じた。

体温検査を受ける記者

採取が終わると検査結果が出るまで指定された部屋の中で待機するよう求められた。我々はこの日午後の政治協商会議開幕式と、翌日の全人代開幕式を取材することになっていたため、取材での外出以外は約30時間はカンヅメとなる。

カンヅメにされたホテルの部屋

ホテルは北朝鮮の金正恩委員長も宿泊した釣魚台迎賓館の隣にある釣魚台ホテルで、建物は古いが部屋は広かった。食事は感染防止のため3食全てルームサービスで運ばれ、一人ひとり部屋の中で食べるよう指示を受けた。

ホテルでの朝食

食事は3食とも非常にシンプルなものだった。 約7時間部屋で待たされると、検査結果の通知があるわけでもなく、突然バスに乗るよう指示の電話が来た。検査を受けた外国プレス団のうち一人でも陽性が出れば、全員濃厚接触者扱いとなり隔離されるということだったが、無事全員の陰性が確認されたため、晴れて人民大会堂の中で取材することが許されたのだ。全人代開催期間は、例年天安門広場は駐車場として使われる。我々も天安門広場までバスで案内され、徒歩で人民大会堂へ入った。

全人代に向かうメディア

外国メディアは23人のみ…会議場内は感染対策で異例づくし

今年は接触を避けるため、人民大会堂の入り口や動線も分けられていて、向かって左側がメ ディアと会議スタッフ用入り口、真ん中が代表団用の入り口、右側がゲストとして呼ばれた 外国大使らの入り口となっていた。入り口には救急車が5台並んでおり、感染対策の一環 の意味合いもあるかもしれないが、例年急病人の発生に備えて数台待機している。 入り口で一人ひとり検温が行われたのはこれまではなかった措置だが、手荷物検査は例年通り厳しく、モバイルバッテリーなどは持ち込みが禁止され、外のロッカーに入れるよう指示された。

ずらりと並ぶ救急車

人民大会堂の中のエレベーターも、メディア用、代表団用などと分けられていた。また、会議場の入り口にはウェットティッシュや消毒液などが用意されていた。 記者席は例年、2階と3階に設けられるが、今年は3階席のみ。1、2階に座る代表団との接触を避けるためとみられる。この日、記者席に入れた外国メディアは 23人だけだった。 

記者席に入れた外国人メディアは23人だけ

議場内では出席者が全員マスク姿で待ち受ける中、定刻になると習近平国家主席らが人民解放軍音楽隊の演奏に合わせて入場してきた。ひな壇の前2列に座る最高指導部や政治協商会議の幹部メンバーらはマスクを着用していなかった。

ほぼ全員マスク姿だが最高幹部らはマスク着用していない

始まったのは国政助言機関、全国政治協商会議。全人代の1日前に開幕するのが慣例で、 冒頭、新型コロナウイルス肺炎で亡くなった人たちへの黙とうがささげられた。

黙とうする習近平国家主席

会議では中国共産党序列4位の汪洋・全国政治協商会議主席が演説し、香港やマカオの「一 国二制度」の改善を支持するとなどと強調した。 また、3階席の中央部分にはゲストとして呼ばれた外国大使らが座っていた。 大使らも全員前日にPCR検査を受けている。 会議が終わり、例年であれば習近平国家主席は退場の際、近くに座る共産党幹部らと握手を交わしながら会場を後にするが、今年は握手はなし。党幹部らは握手の代わりに微妙なアイコンタクトで、習主席を見送っているように見えた。

握手をしないで歩く習近平国家主席

後編はこの翌日に開かれた全人代の開幕式。過去の映像と比較してお伝えする。 

【取材:FNN北京支局】