5月25日に緊急事態宣言が解除されたが、もちろん新型コロナウイルスの不安がなくなったわけではない。

これからは、専門家会議が提案した「新しい生活様式」を守りつつ感染症と共に生きる“withコロナ”の時代になると言われている。

自治体などが提唱や要請をしていた「ソーシャルディスタンスの確保」や「3密の回避」などが、これからは生活の一部になるわけだが、果たしてどのくらい守られているのだろうか?

そんな社会的距離と3密の状況を毎日集計し公開しているサイトがある。

出典:感染リスクを減らそうチャレンジ
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それが北九州市立大学の竹川大介教授が開設した「感染リスクを減らそうチャレンジ」

一般から広く参加者を募り、日々の生活で他の人と2メートル以内で話すなど接触した人数や、複数人で15分以上密閉空間にいた回数をそれぞれ1ポイントとしてセルフチェックし、そのデータを集計している。

つまり、ソーシャルディスタンスと3密をどれだけ守れたかが自分でわかるとともに、参加者の平均値なども確認できる。

日本全体のグラフを見ると、ゴールデンウィークが始まる4月後半から一気に数値が下がり、39県の緊急事態宣言が解除された5月14日と全国解除となった25日に山ができている。

グラフの一部を拡大 出典:感染リスクを減らそうチャレンジ

やり方は、参加を希望する人が、年代・住んでいる都道府県・職業グループを選んで登録すると、毎日メールで回答フォームのURLが送られてくるので、1日のポイントを計算して合計を入力。日付をさかのぼって登録することも、日々のメモを入力することも可能となっている。

入力フォーム  出典:感染リスクを減らそうチャレンジ

職業グループはソーシャルディスタンスと3密の回避のしやすさで6つに分類され、例えば回避が難しい営業や接客業はグループ1、回避は難しいが専門知識のある医療・介護職はグループ2などとなっている。集計されたポイントは、職業グループ・年齢・都道府県別に、1日単位か7日間合計の数値を誰でも自由に閲覧できる。

医療関係者のポイントが圧倒的に高い   出典:感染リスクを減らそうチャレンジ

ポイントの高さによる危険度などの基準は設けられていないが、どういった活用の仕方があるのだろうか。竹川教授に伺った。

どんな行動をすると、どこで感染するのか見えてくる

――これは何の役にたつの?

例えば感染した人の1週間の行動記録を入手して、それを他の人と比較することで、どういう行動がリスクが高く、どこで感染するのか見えてくると思います。ただし現在は、記録をしていただいている人が全員感染していない方なので、どのくらいの数値でどのぐらい危険な状態なのかという裏付けが取れません。

また他にも、いろいろな可能性があり、基本的には今この時期に人がどういう行動をとっているかという記録になります。グラフで注目すべきはゴールデンウイークで、この時はものすごい行動抑制をしています。みんな外に出ないでじっとしていたことがよくわかります。
 

――ポイントによって感染する危険度合いの目安は示せない?

感染のリスクは、感染している人の数・密度で変わってきます。感染した人の数がものすごく多ければ、ちょっとした行動でもリスクになり、感染者がほぼゼロの場所だったら100人に会ってもいいわけです。
また例えば東京と私のいる福岡でも、同じ行動をした場合の感染リスクは違うので、数字がいくつになったから危険だとは言えません。そこで私たちは目標の一つとして、皆さんからいただいたデータをもとに、この都道府県ではこの数値で危険になるということを明らかにしようと考えています。

医学方面からは、例えば2メートル以内は危険などというアドバイスが出ていますが、それは実際にどのくらい危険なのかというデータは誰も取っていません。あるいは、飛沫がこう飛ぶから危険だというのは分かっても、実際に飛んだらどのぐらいの率で感染するのかは調査できていません。自粛もどれだけやれば大丈夫なのかは分かりません。私たちの調査は、むしろ現実にいろんな人がこういう行動したときに、感染するかしないのかを追いかけていこうと考えています。
 

――医療関係者の数値が突出して高いことから何が分かる?

このサイトには、お医者さんも何人か参加しています。要するに感染予防をしっかりしていればたくさん人に会えるわけです。だから、いたずらに数値を下げればいいというものではなくて、どういう生活態度をとっているかによって、危険の数値はおそらく変わってくるだろうと思います。

――参加者数は?(5月21日取材)

現時点で70人ぐらい。メディアに紹介されるなどして増えている最中です。
 

学生たちで試したとき、始めることで数字が減った

――どうして始めようと考えた?

僕が、北九州市立大学で教えている授業の中には、外に出ていろんな人を取材をして調査を行う「フィールドワーク実習」というものがあります。ところが今年はこういう状況なので、外に出て人に会う「フィールドワーク実習」は難しいだろうと、3月ぐらいから予想していました。そこで、どういう形で実習をやろうかを考え、学生たちが自分自身をフィールドワークするアイデアを思いつきました。

さらに、外に出ることも人に会うことも難しいのなら、むしろそれを逆手にとって、どれだけ人に会わないのかを調査をすれば感染予防にもなるので、ある意味で一石二鳥だと考えたんです。4月8日あたりに、今のサイトの元になるものを作って、連絡が取れていた10人ぐらいのゼミの学生たちで記録をつけはじめました。
 

――サイト履歴の最初に「ゲーム」として開発したと書いてあるが?

最初はゲームみたいな感じで「ポイントを競おう」みたいな狙いがあったんですね。しかし、ポイントを増やすのは頑張れるけど、少なさを競うのは盛り上がらないという意見が出ました。そこで、ゲームというよりポイントを減らすことを「がんばる」チャレンジだろうと、途中で方向性を変えました。その後、統計の会社で働いている卒業生の助けもあって、誰でも気軽に登録して自分の行動を見るためのサイトとして4月27日に正式公開しました。
 

――毎日続けるメリットは?

データを入力するときは、数字だけではなくて今日は何していたなどのメモが書けるようになっています。そこに出来事などを書いておけば、万が一感染したときなど、いつ誰と会ったとか何をしていたのか振り返ることができます。

また1週間ぐらいグラフをつけて、日々の変化を見ると、もっと減らせないだろうかという気持ちになります。学生たちで試したとき、始めると数字が減るんです。せっかくの1ポイントをつまらないことで増やしたくないという競争心が起きるので、実際にリスクを減らす効果があります。あと、職業グループの平均値と比較することもできるので、自分はその仕事の中では平均より低いなどと自覚して、モチベーションにつながることも考えられます。
 

竹川大介教授

自分は、どれだけソーシャルディスタンスや3密を避けられているのか?このサイトを使えば可視化され、他の人と比べることもできる。やってみると数字を減らそうとする心理も働くようなので、日記代わりにこのサイトで行動記録を付けてみるのもいいかもしれない。

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