皆さんはこんな帽子を見たことはあるだろうか。形状は一般的なキャップだが、つば部分に月桂樹が刺繍されていて、正面部分には徽章、ワシ、軍艦などがデザインされている。

色彩は紺や黒が一般的でどことなく、ミリタリーな雰囲気を漂わせるものだ。

中高年のおじさん“かぶりがち”疑惑

この帽子がなぜ気になるかというと、おじさんがかぶりがちな印象があるからだ。たまに着用している人に遭遇するが、中高年の男性である確率が高いように思える。

Googleで「アポロキャップ」と検索すると「おじさん」が関連キーワードに(Google検索より)
Googleで「アポロキャップ」と検索すると「おじさん」が関連キーワードに(Google検索より)
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この帽子の名称は「アポロキャップ」といい、Google検索で入力すると、関連キーワードのひとつに「おじさん」と出てくるほど。Twitterでも「なぜおっさん(じいさん)はアポロキャップをかぶるのか」という、つぶやきを見たこともある。

アポロキャップの真相に迫った(提供:消防ユニフォーム)
アポロキャップの真相に迫った(提供:消防ユニフォーム)

心のどこかで気になっている人もいるはずなので調べてみることにした。

普及のきっかけは有名な「アポロ計画」

そこで、消防グッズなどを製造・販売する「消防ユニフォーム」(大阪市)に取材。ここではアポロキャップも取り扱っているということで、帽子としての由来など真相に迫った。


――アポロキャップが生まれた背景、日本で広まった経緯を教えて。

発祥はアメリカで、アポロ計画(1960年代後半~1970年代の有人宇宙探査計画)の乗組員らが着用したことで広まったと聞いています。日本に流入したのはその後で、消防、自衛隊、警察、警備関係などに広まりました。現在は複数の企業が製造し、当社は通常のアポロキャップを2420円~2750円、無地のアポロキャップを1430円で販売しています。

マネキンにかぶせるとこんな感じ(提供:消防ユニフォーム)
マネキンにかぶせるとこんな感じ(提供:消防ユニフォーム)

――帽子としての特徴は?普通の帽子とどう違う?

正面部分が大きく見えることです。野球帽を想像すると分かりやすいですが、一般的な帽子は被る部分が、数枚の素材を縫い合わせてできています。アポロキャップはこのうちの正面部分が1枚の素材で作られていて、刺繍などが識別しやすいです。


――ワシや月桂樹などが刺繍されている理由は?

推測も含まれますが、アメリカの国鳥がイーグル(ハクトウワシ)であることからも、アメリカっぽさをイメージしたと思われます。月桂樹は正直なところ分かりませんが、五輪に使われていること、言葉の意味などが関係しているかもしれません。

所属する業務が判別できるデザインが多い(画像はイメージ)
所属する業務が判別できるデザインが多い(画像はイメージ)

また、帽子正面の刺繍はカスタムできるので、それぞれに違います。例えば、消防向けには徽章や地域名、海上自衛隊向けには艦艇が仕立てられることもあります。所属する業務が分かるような、シンボルがデザインされることが多いと思います。

アメリカに憧れた世代が着用?

――誰でも購入はできるの?

自衛隊のイベントなどで販売されることもあるので購入はできます。ただ、当社は業務などで必要とされる方々に販売しています。

アメリカへの憧れも着用の背景に?(画像はイメージ)
アメリカへの憧れも着用の背景に?(画像はイメージ)

――中高年の男性が着用している印象だが、なぜ?

確かにそうした印象もありますね。推測ですが、日本も昔はアメリカに憧れた時代があったのでそうした世代が着用しているのではないでしょうか。軍事関係が好きな方、業務で着用している方が、普段でも着用していることも考えられると思います。


――素材や製造工程を教えて。こだわりは?

素材は商品にもよりますが、先染めのポリエステル・レーヨン生地を採用しています。製造は裁断した素材を、帽子職人が手作業で裁縫しています。正面部分が大きく、さまざまな刺繍ができます。アジャスターにはYKK製を採用していて、サイズ調整もスムーズです。

文字などのカスタムも可能(提供:消防ユニフォーム)
文字などのカスタムも可能(提供:消防ユニフォーム)

――ファッション性は?若い人も着用できそう?

正直なところ、ファッション性は微妙かもしれません。今の時代、若い人が着用すればバズる可能性もないわけではないですが、本来は業務の従事者が着用する帽子だと思います。


アポロキャップは消防などといった、専門性が高い業務で着用されているようだ。今回取材した会社も同様の印象を持っていたが、中高年の男性がよくかぶっているのは、そうした業務に従事していたか、あるいはアメリカへの憧れで着用していたものが、習慣化しているのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。