客が多くの本を手に取る書店では

「新型コロナウイルス感染拡大防止のため、立ち読みはご遠慮ください」―

休業中だった書店が営業再開となった時、このような張り紙をする店舗が出てくるかもしれない。
先週、緊急事態宣言が一部の地域で解除されるのに合わせて、81の業界団体が感染拡大予防のためのガイドラインを公表した。
全国およそ3000の書店が加盟する日本書店商業組合連合会(日書連)もそのうちの一つだ。そのガイドラインの中に、商品陳列の対策例としてこのような記載がある。

 「書籍・雑誌等の立ち読みについて、自粛の呼び掛けや必要に応じてひもかけ・バンド等の使用を行う」

客の混雑緩和や、接触機会を削減するための取り組みとして挙げられたものだ。いろいろな本を手に取る客がいる書店ならではの対策だ。
またガイドラインには明示していないが、独自の取り組みとして、接触削減のためレジでの本へのカバー掛けをやめる書店もあるという。
客がカバーを必要とする場合は、カバーを袋に入れて渡し、客自身でやってもらうようにお願いしている。

レンタルビデオ選びでは“悩むな”?

その業界ならではのガイドラインは、このほかにもある。
日本旅館協会などが作成したガイドラインでは、チェックイン時に館内や客室を案内する際には、従業員が客と一緒に移動するのを避けて、書面や動画で紹介することを推奨している。
またルームキーについては、生体認証やモバイル端末による「キーレスシステム」を導入することも例に挙げている。

全日本指定自動車教習所協会連合会のケースでは、技能教習を行う際の留意点が特徴的だ。
車内で教官と生徒が近い距離で会話し3密に近い状態になるため、「教習中は、可能な限り、車両の複数の窓を同時に開けて常時換気すること」としている。

日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合(CDV-JAPAN)では、混雑緩和策がレンタル店ならではだ。
「予めレンタル作品を決めた上で来店する等、店内滞在時間短縮化を心がけること」とある。

日本スポーツ協会がまとめたスポーツイベント再開に向けたガイドラインでは、水泳ではマスクをつけられないので、十分な距離…少なくとも2m空けるよう特に留意の必要があるとしている。
協会によると、前の人との距離を空けて泳いだり、コースを往復で泳ぐことを避けたりすることなどを想定しているという。

各業界ならではのジレンマや予算上の課題も

業種によって留意点は様々だが、ガイドラインを作る上でも、その業界ならではの難しさがあったようだ。
本の「立ち読み自粛」を盛り込んだ日書連には、「立ち読みは一切禁止なのか」と問い合わせがあったという。
「もちろん強制的なものではなく、こうした基準にのっとって協力をお願いしたい」と担当者は説明したそうだ。
また対策を載せることで、そうした施策を取らない店舗に対して「あの店は感染予防をやってない」と、いわゆる“自粛警察”のような行動を誘発するのではという不安もある。一方で、客に安心して来店してもらうにはガイドラインは必要…。
感染防止の対策は施す。一方で、本を選ぶ楽しさは奪わないため、「本に触れないように」と直接的な表現は避ける…等々、様々なジレンマがあったという。

ホテル・旅館業界が例示した、客室ドアとの接触機会を減らすための「キーレスシステム」導入については、旅館のほとんどが零細企業(日本旅館協会)で、ただでさえ宿泊客が激減している中、さらなる設備投資は難しいという。
5月27日にも編成される第2次補正予算案に、支援策を盛り込むよう政府に要請しているが、ビジネスホテルやリゾートホテル、旅館…と業態は様々で、“共通項”をガイドラインに盛り込むのには苦心したそうだ。

“利用者へのメッセージ”の側面も

試行錯誤の中作られたガイドライン。
あくまで業界向けに出した指針だが、その中には我々利用客へのメッセージが込められているようにも見える。

「安全・安心を確保するためには、店舗及び従業員による適切な対応だけでなく、顧客の理解と協力が不可欠となる」(CDV-JAPAN)

「従業員と顧客が互いに協力しあって安全で安心な買物の場を作り上げていくという意識が大切」(日書連)

「イベントの主催者だけでなく、参加者を含む関係者全員が感染防止のために取り組むことが必要」(日本スポーツ協会)

私たちにできることを…
お互いを支え合うために、利用者側へのガイドラインにもなっているのではないだろうか。

(フジテレビ報道局経済部 日比野朗記者)