SDGsの目標の一つ、「気候変動に具体的な対策を」。この項目では、地球温暖化を防ぐために一人ひとりが温室効果ガスを出さない行動を意識することなどが盛り込まれている。廃棄物から作られた肥料の普及を目指す取り組みを取材した。

栄養含んだ「発酵かす」に注目

次々と搬入されていくゴミ。

松尾和泉アナウンサー:
今回、肥料に生まれ変わるのは生ゴミです。長岡市は生ゴミの回収に力を入れていて、専用のピンク色の袋もあります

回収されたゴミ
回収されたゴミ
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家庭などで出た生ゴミを受け入れていたのは、新潟県長岡市にある「生ゴミバイオガス発電センター」。

長岡市 環境施設課 平澤秀康 課長:
燃やすゴミ自体は、生ゴミの分別を始める前から約2割減っている

長岡市では、燃やすゴミを減らすために、生ゴミの分別を10年ほど前から実施。施設を管理する長岡バイオキューブと連携し、生ゴミを資源とした再生可能エネルギーの利用促進を図っている。

長岡バイオキューブ 佐藤匡則 社長:
微生物が発酵・分解しやすい環境をつくって、大量のメタンガスを発生させる。ゴミは一切燃やしていない

発酵により発生させたメタンガスを発電に利用。そして、いま可能性を探っているのが、メタンガスの発生後に出る「発酵かす」の肥料としての利用だ。

松尾和泉アナウンサー:
思っていた以上に、においもきつくないですね

長岡バイオキューブ 佐藤匡則 社長:
微生物が分解して熱処理も行っているので、一般の人が思われているほど臭気はきつくない

発酵かすには農作物が育つのに大切な多くの栄養が含まれているため、将来的には販売することを見据えている。

長岡バイオキューブ 佐藤匡則 社長:
いかに有効的に活用できるか、いかに効率よく、発電なり、肥料として活用できるかという技術の研さんをして、世の中に広く普及していくような形を我々も目指していきたい

「下水汚泥」を使用した肥料

一方で、すでに廃棄物を利用した肥料を販売している企業もある。

緑水工業バイオマス事業部コンポストセンター 野口和樹さん:
こちらは下水汚泥を使った肥料

長岡市を拠点に60年以上、下水処理場の維持管理を担ってきた緑水工業は、県内で発生している年間約8000トンもの下水汚泥を受け入れ、肥料に生まれ変わらせている。こちらでも行っているのは発酵。

緑水工業バイオマス事業部コンポストセンター 野口和樹さん:
火とかは使わないので二酸化炭素は出ない。そういう面では地球に優しい

さらに…

緑水工業バイオマス事業部コンポストセンター 野口和樹さん:
人間が排出する廃棄物からなっている。中には、窒素とリン酸とカリウムが入っているので入れる必要がない。そういう面でコストが安くなっている

肥料を買いに来た人:
けっこう安い

しかし、課題もある。

緑水工業バイオマス事業部コンポストセンター 野口和樹さん:
下水汚泥のよさが正しく伝わっていないところがデメリット

 高校で有効性探る実証実験

肥料の魅力を幅広く伝えるため、長岡農業高校では長岡市と連携して生ゴミと下水汚泥を使った肥料の実証実験を行っている。

9月中旬から生徒たちが様々な肥料を使ってダイコンを育て、その成長過程を観察。この日、行われていたのは間引き作業。抜いたダイコンを見てみると…

松尾和泉アナウンサー:
一般的によく使われている肥料で作られたダイコン。そして、下水汚泥・生ゴミ由来の肥料でできたダイコン。成長度合いは、それほど変わらないことが見て分かります

一般的な肥料と廃棄物肥料 ダイコンの成長度合いはほぼ変わらず
一般的な肥料と廃棄物肥料 ダイコンの成長度合いはほぼ変わらず

生徒にとっても、驚きの途中経過だったようだ。

生徒:
化成肥料は速効性があるので、一番早く育つと思っていたが、それ以上に育っていることが予想外だった

11月下旬の収穫で、廃棄物で作る肥料の有効性を示すことができるかもしれない。

実証実験を行う農業高校の生徒
実証実験を行う農業高校の生徒

生徒:
化成肥料は使いすぎてしまうと畑の負担になることが多いと聞く。実験をもとに、環境に優しいとか、野菜にも栄養が渡るんじゃないかとか、色々な人にも予想が立てられるようになって、広まっていけばいいなと思う

廃棄物から作られる肥料の普及と周知を目指して。長岡市で進む環境に優しい取り組みは続く。

(NST新潟総合テレビ)

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