10月15日(土)に行われた第99回箱根駅伝予選会で、55年ぶりとなる箱根路への切符を手にした立教大学。「S-PARK」は箱根復活を目指す伝統校に注目し、マネージャーリーダーを務める大学4年生の“運命の1日”を追った。

昭和43年を最後に箱根路から姿を消した伝統校

10月15日、東京・立川に“正月の箱根路”を目指す43の大学が集結した。

学生ランナーたちの憧れの場所「箱根駅伝」を目指す戦い「予選会」。

43校が10枚の“箱根行き”切符を争う舞台に青春をかけているのはランナーたちだけではない。

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箱根予選会を見据え、勝負の夏合宿を送っていたのは立教大学陸上競技部。

9月に北海道・網走で行われた“強化合宿”。
陸上競技部の監督は選手たちを前にこうあいさつした。

立教大学・陸上競技部監督:
気候も悪くないですけど、ちょっと風が途中強いかもしれませんけど、そういうのも含めながら(箱根の)予選会の一つだと思ってやるようにしていきましょう。
 

立教大学・陸上競技部の創部は大正9年。
早稲田や明治といった箱根駅伝創成期から続く伝統校の一角だ。

しかし、昭和43年の第44回大会出場を最後に箱根路から姿を消して実に55年の月日が経つ。

箱根復活へ――

選手と共に厳しい練習の日々を送っているのは、4年生のマネージャーリーダー、主務の豊田桃華さんだ。

北海道での夏合宿で“チームの現状”と意気込みを語った豊田主務。

立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
この夏合宿は練習に対する姿勢もそうですし、生活を送る姿勢もチーム全体として良い方向に変わっているとマネージャーとして感じています。
サポートという面に関しては、より意識を高めて頑張っていこうと思っています。
 

「駅伝部の主務」といえば、多くの大学で男子学生が務める中、女性主務は数少ない存在。

立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
なんかよくやっぱ珍しいねっていうのは言われます。
(2年生の時に)前向きさだけで引き受けたんですけど、今だと絶対考えます。
大変さをわかっているので。
 

主務といえどマネージャーの一員。練習準備はもちろん、スケジュール調整や選手のタイム管理、監督との調整、渉外活動など主務の業務は多岐にわたる。

箱根挑戦ラスト「今はもしかしたら…」

主務として箱根に挑むラストイヤー。今年にかける思いを聞いた。

――ここまで来ましたけれども、予選会を前にした今の気持ちを教えてください。
立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
正直、1年生の頃は(箱根駅伝に)憧れて、夢を感じて入ったんですけど、今はもしかしたら手に届くかもしれない世界っていうところまで来ています。
頑張れば行けるかもしれないって本当に、本当に思います。
 

手が届くかもしれない。

そう感じさせるきっかけが去年の予選会にあった。

ハーフマラソン(21.0975キロ)を各大学の選手たちが走り(各大学から最大12人が出場可能)、各大学ごとの上位10人の合計タイムで争われる予選会。

その最初の5キロで1位通過したのが立教大学だった。
さらに10キロでも6位通過と序盤から大きなサプライズを起こし、注目された。

しかし、結果は16位。
それでも着実に力をつけているチームに主務として確かな手ごたえを感じていた。

――通過した瞬間ってイメージできますか?「立教大学」って言われる瞬間を。
立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
泣いちゃうかもしれないです。もし私がその場にいたら、絶対泣いちゃいます。
 

箱根駅伝55年ぶりの復活へ、予選会を通過する鍵は――。

立教大学男子駅伝・上野裕一郎監督:
今年はチーム12人全員が15キロを45分で通過していこうと定めてやってきました。それが予選会を通過する一つのポイントだと思います。
そう考えると、やはり64分前後(1時間4分)がボーダーラインになってくると思っています。
 

去年の予選会は、10位のチームが10時間45分41秒。1人あたりの平均タイムは1時間4分34秒。

上野監督は余裕を持ってこのタイムを上回るために15キロを45分台で通過することをポイントに掲げていた。

再び立教は箱根路に戻ってくるのか?運命の号砲を迎えた。

――1年で一番大事な日ですが、改めてどうですか?
立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
私にできることは本当に少ししかないし、その少しのことが選手にとっては貴重な情報になってくると思うので、その自分の役割をしっかり果たすだけです。
 

5キロ10キロは順調も“15キロ9位”に…

午前9時35分、箱根路を目指し43の大学が一斉にスタート。

今年は早稲田や東海大など箱根常連組が出場する異例の事態。
激戦が予想される中、去年1位通過した注目の5キロの順位は、1位が明治大学、そして立教大学は4位に入る。

しかし、上野監督は「(選手へのメッセージボードに)『冷静に』って書いておいて。いつでも出せるように」と指示を出すと、すかさず豊田主務が動く。

その言葉を受けると、チーム先頭を走る2年生エースの林虎太朗は手を挙げるリアクション。

すると10キロで立教大学はさらにポジションをあげて3位になる。

そしてポイントに掲げていた15キロ。

そこで選手寮から送られてきた速報は「15キロ9位」。

その状況を知った上野監督は、順位を伝えるメッセージボードを手に「チャンス圏内!」「頼む!頼む!」と選手たちを鼓舞していく。

ところが「予選通過ギリギリの注意情報」だと思われたのもつかの間、手元に届いた正式な通過順位は「15キロ5位」。

立教大学男子駅伝・上野裕一郎監督:
5位!?これ(9位)見せておいたからがんばるわ!

ポイントに挙げた15キロは9人の選手が45分前後で通過。上野監督の戦略通りの走りを見せていたのだ。

そしてラスト1キロ、箱根への思いが爆発する。

立教大学男子駅伝・上野裕一郎監督:
ラストスパート!あと5秒!1人5秒!
この5秒で行けるか行けないか決まる!
最後5秒!箱根行けるから!

立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
ラスト!
 

立教大学はこの後、20キロの通過でも5位となる。
 

――正式な結果はまだですが箱根が見えてきた?
立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
そうですね…。行きます!箱根に!たぶん!頑張れば!
 

そして運命の結果発表。

「第1位、大東文化大学!」

予選会トップ通過は4年ぶり51回目の本戦出場となる大東文化大学(10時間40分39秒)。

「第2位、明治大学!」「第4位、早稲田大学!」

常連校が順当に名前を呼ばれていくなか、残る切符はあと5枚。

「第6位、立教大学!」

55年の時を超えて、ついにたぐり寄せた箱根への切符。

10時間46分18秒。全体6位で堂々の本戦出場(55年ぶり28回目)をつかみ取った。

一番近くで見守ってきた上野監督は「自分が胴上げされる日が来るとは思わなかったですし、まずは選手たちが本当につらい練習、日々の生活、大学生らしいそういうところをしっかりやってくれたからこそ…ある本戦出場だと思っています。ありがとうございます」と涙ながらに感謝の言葉を語った。

「何にも代えられない経験に」

これまでどんな時も主務としてチームを全力で支えてきた豊田さん。

――名前が呼ばれた瞬間はどうでしたか?
立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):
まずはここまでみんなでやってこられた、この仲間でやってこられたというのがすごく実感としてあって涙が出ちゃいました。

――箱根が本当に実現しました
立教大学陸上競技部主務・豊田桃華(4年):

本当に夢が叶うってこういうことっていうか。
本当にそれに向かってやり続けたらちゃんと現実になるんだなっていうのが、この箱根駅伝を通して思ったので、たぶん何にも代えられない経験になるだろうなと思います。
 

全員でつかんだ夢舞台。
その夢は来年の箱根へと続く。

 

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