シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は救命救急科の名医、亀田総合病院 救命救急センター 救命救急科の不動寺純明センター長が、水難事故の応急措置について徹底解説。川や海での水遊びや釣りなどで予期せぬ水難事故を防ぐための3つの注意点、素人にもできる救助・応急措置について解説する。

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1年間に水難事故は1395件、1625人が事故にあわれています。その中で死者や行方不明者が742人です。

中学生以下の子供に限ると119件、183人の事故が報告されています。そのうち死者、行方不明者は31人となっています。

溺れやすい状況

全体を見ると半分が海で発生しています。海でも魚釣りや魚取りの患者が多いです。

また、子供は半数はです。その多くは泳いでいたというよりは水遊びで溺れたことが多いです。

大人の場合は、飲酒や体調が悪くて海水浴に来ている方が溺れやすいと思います。ほかには、潮の流れが急に速いところをあまり知らない方が多いようです。

離岸流という、砂浜から沖の方に、大体10メートルほどの幅で一部分だけ流れているところに入ってしまうとどんどん沖に流され、溺れやすくなります。

川の場合は、急に深くなったりとか、思ったより流れが速いなどといった時に足を取られてしまうことが多いです。前日に降った雨の影響で水かさが増してしまうことで事故が起こります。

溺れた時の救助・応急措置

溺れている人を見付けた場合は119番して人を呼ぶことがまず大切です。

もう1つ大切なことは、自分が飛び込んで助けに行かないこと。

子供が溺れた場合に大人が無理に助けに行っても一緒に引きずり込まれて自分も溺れてしまうので、まずは近くにある浮くもの、ペットボトルリュッククーラーボックス浮き輪などをどんどん投げてください。あとはロープのようなものがあったらそれを投げてつかまってもらうようにしてください。

海では手足をバタバタさせても、溺れているのか遊んでいるのかよくわからない。そうしているうちにだんだん反応がなくなることが多いです。

ですので、何かおかしいと思う人がいたら海水浴場だったらライフセーバーや人を呼ぶ、後は119番することです。

次にやるべきことは、まず水から出す、浜辺にあげて意識があるかないかを確認する。意識がなければ心肺蘇生法といって、胸骨圧迫、胸の中央を5センチぐらいの深さで1分間に120回ぐらいのペースで圧迫する。

それで後は救急車を待つことが適切です。

救助の中に心肺蘇生法のトレーニングを受けたことのある方がいたら、人工呼吸と胸骨圧迫の両方をやっていわゆるBLSという心肺蘇生法を行うことが望ましいです。素人しかいない場合は胸骨圧迫だけでも十分なので是非やっていただければと思います。

意識が戻ったら、溺れた人は水をたくさん飲んでいるのでゲッと吐きます。吐いても良いように体を横向きにして救助を待つことが一番望ましいです。

溺れないための注意点

溺れないための注意点は3つあげられます。

まずは、釣りで海に近寄ったり、船に乗る場合はライフジャケットを着用してください。

水難事故の約30%は魚をとりに行ったり、釣りしたりと泳いでいない人です。海や川に行くときはライフジャケットを着用することが大切です。

2つ目は、危険な場所には近付かない。

海だったら潮の流れが速いとか急に深くなっているところ、簡単にいうと遊泳禁止のところで泳がないことです。決められた場所で泳ぐことが大切です。

川に関して言うと、急に水かさが増すと話しましたが、午前中や前の夜に大雨が降ったなどの情報を察知したり、天気予報を見て警報が出ていないかなどチェックして危険なところには近寄らないことです。

3つ目は、子供から目を離さない

海で小さい子供が遠くに行くことはあまりないと思いますが、川で水遊びをして溺れることがあります。子供の場合、身長にもよりますが、10センチの水かさでも足をとられて倒れたりすると溺れることがあります。流れが速ければこれもすぐに足をとられて流されるので、まずは目を離さない。

あと是非知っていただきたいのが、自宅で子供用のビニールプールでも目を離すと溺れてしまいます。ベランダで遊ばせているときも必ず目を離さないという注意が必要です。

溺れた時の後遺症

溺れることで問題になるのは、2つあります。まずは、後遺症になりうるのがの障害です。

溺れて水を飲んだり、もしくは息ができなくて体の酸素濃度が下がっていく。そうなると脳の酸素濃度も下がるので、例えば20~30分以上完全に呼吸が止まる状態になれば、生きられたとしてもかなり重篤な後遺症が残ると言われています。

もう1つがの障害です。これは後遺症になることは非常に少ないですが、肺が急に悪くなることがあります。

水を飲んで溺れて助けてもらい、特に心臓や呼吸が止まることはなく意識はあったけれども、水を飲んだことによって肺でのガス交換、酸素を取り込む機能がすごく落ちてしまい、体に酸素が取り込めない低酸素状態になります。

それだったら酸素を投与してしばらくすれば良いのですが、もう1つ厄介なのは、肺が炎症を起こす人が時々居ます。その炎症が8時間から2、3日といわれていて、最初は大丈夫だったのが数時間したらだんだん息が荒くなりゼーゼーし始めて、子供だったらぐったりし始めるということがあります。

これを我々は急性肺障害と言いますが、それが起こることがあります。

自分が溺れた時の注意点

自分が溺れてしまった時の注意点ですが、自分が溺れているというのを誰かに知らせるために立ち泳ぎをして手を振って大声を出すのは絶対にやめた方がいいと言われています。

その理由は、大声を出すということは次に息を吸わないといけないけど、水をかぶって息が吸えない。立ち泳ぎもものすごく体力を使います。

もし自分が溺れた場合は、バタバタせずにプカーンと浮いて、そしたら水の上に口が出るので息をしながら体力を温存する。そして救助を待つのが一番助かる道だと海上保安庁のパンフレットなどに書かれています。

不動寺純明
不動寺純明

医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 救命救急センター長 救命救急科部長
宮崎医科大学(現宮崎大学) 1991年卒
救急科専門医・指導医 外科認定医