日本でも「接触確認アプリ」導入へ

新型コロナウイルス感染者との濃厚接触の可能性をスマートフォンで通知する「接触確認アプリ」について、政府は月内の実証実験開始を目指し、厚労省を中心に開発を行うことを決定した。

「接触確認アプリ」としては、シンガポールでの活用が先行例として世界的に知られているが、「アプリによるコロナ対策」がいよいよ日本でも行われることになるのだ。政府のIT政策を担う竹本大臣は「効果的にIT活用することで、新型コロナウイルス感染症対策に貢献していきたい」と強調する。

竹本大臣・8日
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接触確認アプリの仕組みは、大まかに次の通りだ。

【通常時】
スマホのBluetooth(近距離無線通信)などを利用し、アプリの利用者同士が近づくと、その接触が匿名でそれぞれのアプリに記録される(一定期間経過後に削除)。

【陽性確認時】
(1)医療機関で陽性と診断され、保健所のシステムに登録された場合、保健所から陽性者のアプリに通知が届く
(2)陽性者は保健所からの通知を受け、自らが陽性である旨をアプリに入力
(3)陽性者と接触した記録のある、他のアプリユーザーらに「アラート」が通知される(誰が陽性なのかは一切知らされない)
(4)「アラート」を受信した人は、保健所のシステムに登録を行い、必要な医療提供につなげる

このように、プライバシー保護と本人の同意を前提に、濃厚接触者への通知が行われ、濃厚接触者が必要な医療提供(健康観察など)を受けられるようにすると共に、さらなる感染拡大を防止する狙いがある。

(シンガポール政府公開の動画より)

加えて、陽性者と接触していなくても、「自分が一日に何人と接触したか」ということも分かる仕組みのため、政府が呼びかける「接触人数削減」の達成状況を自ら把握できるようになる。これにより、「きょうは接触人数が多かったので、あすは時差出勤しよう」などと、利用者に対し自発的な行動変容を促す効果が期待される。

匿名性の高い“日本流”アプリの特徴

接触確認アプリの設計にはいくつかの種類があり、Bluetoothを利用するタイプでも、シンガポールなどは電話番号等の個人情報を収集し、政府当局が濃厚接触者を特定することが出来る仕組みとなっている。

「テックチーム」の第3回会合・8日

日本政府は、新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向けたITの活用を担う「テックチーム」の第3回会合(8日)で、「位置情報を取得せず、Bluetoothを活用」「接触データは当局のサーバーで管理せず、各自の端末で管理する」という、個人情報に配慮した匿名性の高い仕組みを導入することを決めた。

政府当局が利用者の個人情報や位置情報を特定できる中国や韓国などの仕組みと違い、「日本版」では濃厚接触者の個人情報を特定できないため、アプリの効果は利用者一人一人の行動にかかっているともいえよう。政府によると、ドイツやスイスなども同様の仕組みを検討しているという。

“プラットフォーマー”に翻弄される政府

アプリの開発にあたり、AppleとGoogleが提供する“仕様”(API)を活用すると、スマホの電池消耗を抑えられたり、iOS/Android間の互換性が担保されたりと、メリットが大きい。そのため、政府は両社の仕様に則って開発を進める方針をとっている。

GAFA

ところが、AppleとGoogleは4月末に急遽公開した“方針”で、「一つの国に一つの接触確認アプリしか認めない」「アプリの運用は各政府の公衆衛生当局が行う」ことを条件として示したのだ。これはアプリの乱立や互換性防止のためと想像するが、政府側にとっては“寝耳に水”であった。

政府は当初、民間団体主導で開発を行い、政府はあくまで“お墨付き”を与えるような仕組みのもと、アプリの実証実験を先月にも行う予定だった。ところが、これではAppleとGoogleの方針に合致しない。そのため、8日のテックチーム会合で、アプリの開発や運用を厚生労働省が行うように方針転換することとなった。

これにより、厚労省によるアプリの選定や、AppleとGoogleによる仕様の実装などを経て、政府は月内の実証実験開始を目指すこととなった。AppleとGoogleの方針決定により、政府が計画の遅れを余義なくされた形だ。政府関係者は「ほとんどの人がiOSやAndroidを使っていることを考えるとやむを得ない」としつつも、「一国の政府の計画を変えるほど、プラットフォーマーの影響力は大きい」とため息を漏らした。今後、政府によるプラットフォーマー規制の議論に一石を投じる事例といえるだろう。

実用化への課題は

竹本大臣は「課題を早急に検討していき、早期の実装につなげていきたい」と発破をかけるが、前述の通り、実用化へのタイムラインはAppleとGoogle次第の部分も大きい。今後の開発動向に注目したい。また、厚労省がアプリの開発や運用を主導することになるが、ただでさえコロナ対策に追われる中、さらなる業務逼迫を避けなければならないということが、課題として挙げられるだろう。

加えて、接触者双方がアプリを利用していないと機能しない仕組みであるため、一定割合の国民がアプリを使わないと効果は期待できない。ところが、プライバシーに対する世論などから、先行例として知られるシンガポールであってもダウンロード数が人口比25%にとどまる。アプリがコロナ対策に十分な効果を発揮するよう、政府には個人情報保護などに十分な対策を講じた上で、積極的な導入を促すための広報の在り方が重要となってくる。政府の取り組みに期待するとともに、アプリが公開された際には、私たち国民一人一人が当事者意識を持ち、導入の判断をすることが必要となるだろう。

(フジテレビ政治部 山田勇)

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