政府は4月に入り、新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向けたITの活用を担う「テックチーム」を設置し、コロナ対策に先端技術を生かす試みを本格化させている。どのような取り組みが行われているのか、具体例を紹介したい。

新型コロナウイルス感染症対策テックチームキックオフ会議・6日 
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「コロナ追跡アプリ」日本でも導入へ

竹本IT相は14日の会見で、新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者を追跡する、いわゆる「コロナ追跡アプリ」の実証実験を月内にも始めると発表した。

「コロナ追跡アプリ」としては、シンガポール政府が公開し利用を促している「TraceTogether」が先行例として世界的に知られている。

シンガポール政府公開の動画より

TraceTogetherでは、スマホの近距離無線通信「ブルートゥース」を利用し、アプリの利用者同士が近づくと、その接触が匿名でそれぞれのアプリに記録される。そこで、利用者が万が一感染した場合、同意を得た政府機関がアプリの接触履歴から濃厚接触者を特定し、必要な医療提供につなげる仕組みとなっている。なお、それ以上の個人情報や位置情報は記録されず、各利用者は匿名のIDで管理されるため、プライバシー上の問題は無いとされる。

政府関係者によると、国内でも複数の民間事業者が開発に乗り出していて、月内に実証実験が可能であると申し出ているという。コロナの感染拡大防止の観点から、竹本大臣は「『シンガポール方式』は非常に有力な方法だ」と評価した上で、「個人情報の漏洩はあってはならない」と強調した。

また、濃厚接触者の特定がアプリ上で効率的に行えることから、内閣府の平副大臣はインターネット番組で「手一杯な保健所もアプリのデータを元に濃厚接触者を洗い出しやすくなる」と意義を強調した。追跡アプリは、国民の多くがアプリを活用しないと効果を発揮しない。政府としては、実証実験を通して個人情報漏洩の懸念を払拭しつつ、早期の実用化、普及を目指したい考えだ。

平副大臣会見・2月13日 

検索ワードでクラスターを発見!?

13日、政府とYahoo! JAPAN(以降ヤフー)は「新型コロナウイルス感染症対策協力プロジェクト」の立ち上げを発表した。これは、政府が先月、携帯電話会社やIT事業者に対して“統計データ”の提供を要請したことに基づくもので、いわゆる検索履歴や位置情報などをコロナ対策に役立てようというものだ。

ヤフーのプレスリリース抜粋

ヤフーとの提携により政府が狙うのは、検索ワードと位置情報をかけあわせて、コロナ対策に有用なデータを導き出すことだ。政府関係者によると、現時点では以下の2つの効果を見込んでいるという。

1.検索ワードによるクラスターの把握
ヤフーの検索数と位置情報をかけあわせると、例えば特定の地域で「発熱」や「だるい」などの検索ワードが上昇していると、その地域でコロナの症状を認める人が増えていて、すなわち何らかのクラスターが発生していることが覚知できるかもしれない。

2.コロナの新症状発見など疫学的研究
一部海外報道でも出ているが、コロナの感染者が「目の痛み」というキーワードを検索するケースが多いとのデータがあるという(政府関係者)。この症状が本当にコロナと関連付けられるかどうかは、専門家の意見を聞かないとわからない。ただ、こうして検索ワードを通じて、コロナの解明や感染者発見につながる情報が得られるかもしれない。

統計データの提供を要請した竹本IT相は14日の会見で、今回の取り組みについて“政府がデータの提供を促した結果の、一つの大きい進歩”だと評価していて、同様の取り組みが広がることを期待していると述べている。

検索キーワードと位置情報だけで、どこまで精度の高い情報が得られるのか疑問に感じるところだが、政府においても前例がほとんど無い。政府関係者は「やってみないとわからない。どれくらいの精度になるか、どれくらいクラスター対策に資するのか、検証課題にしたい」と意気込む。

なお、個人情報の保護も課題として挙げられるが、担当者によるとヤフーから得られる情報は、個人が特定できないように加工されるため、個人情報保護の観点では問題がないとしている。

人流や医療提供体制のデータ公開

このほか、政府はコロナ対策の専用サイトを公開し、携帯電話事業者などの位置情報のビッグデータによる、人の流れの解析を載せている。すなわち「どこにどれくらいの人がいるか」というデータで、外出自粛要請の効果検証に役立てることが出来る。

例えば、以下のデータからは、渋谷では緊急事態宣言後4割近く人出が減っているものの、前日比で4.5%増えているとわかる。

4月14日時点のデータ

また、全国の病院の入院・外来受け入れ等の状況をマップで表示するシステムも掲載している。

4月14日時点のデータ、例として東京都の任意の病院を表示

政府は今後、あまたあるコロナの症例や対策についての情報を、チャットで一元的に問い合わせられる「チャットボット」の本格導入など、ITを用いたコロナ対策をさらに拡充していくことにしている。こうした動きに注目をしていきたい。

一方で、ITを用いたコロナ対策について、テックチームの立ち上げが4月という点など、日本は諸外国に比べ初動が遅いとの批判が往々にしてある。政府のIT担当部局には専門の人材が多く、平副大臣のようなIT通のリーダーもいる。こうした人的資源を効率よく生かしてもらいたいところだ。コロナとの戦いが長期戦となる中、政府対応の効率化や国民の利便性向上のため、政府には一層、ITの活用に本腰を入れてほしい。

(フジテレビ政治部 山田勇)