“先進国”アメリカの例…4割がオンライン授業受けられないケースも

新型コロナウイルスの感染拡大で、子どもたちが学校に通えない状態が続いている。アメリカではすでに事実上、秋までの閉鎖措置を決定した学校もある。オンライン授業“先進国”とも言われるアメリカでは、代替手段としていち早く「オンライン授業」が提起・導入されたが、1ヶ月以上が経過し、課題も浮き彫りになってきた。「教育格差」への懸念が高まっているのだ。

オンライン授業“先進国”とも言われるアメリカでも課題が浮き彫りに

外出制限によるオンライン授業導入時に指摘された課題は、経済的な理由からパソコンやタブレット端末がない家庭があるというもので、多くの自治体や学校が端末を貸し出すことで対処した。

しかしその後も、自宅にWi-Fi環境が整っていない、機器をうまく使いこなせない、移民の親が英語を十分に話せず学校側の指示に対処できない、家で授業を受けられる状況ではない、といった理由で生徒の一部が授業に出席できない状況が続いている。地元紙によると、南部サウスカロライナ州では数十万人の子どもが今も自宅でインターネットに接続できず、学区によっては約4割の生徒がオンライン授業を受けられていないという。

こうした問題への解決策として、地元企業が支援の手を差し伸べるケースも出ている。東部コネチカット州では、地元の自動車ディーラーが平日の間、無線LANサービスのアクセスポイントとなる車を市内に複数配置し、子どもたちが無料でインターネットに接続できるようにした。

ライブ形式では週1のみ 高まる“二極化”への懸念

一方、学校側が提供するオンライン授業の「質」が二極化し、懸念の声も上がっている。

東部メリーランド州モンゴメリー群のある公立高校、中学校では、オンラインビデオ会議サービス「zoom」などを使ったライブ形式での授業は、週に一度しか実施されない。学校閉鎖が決まった当初は、経済的に貧しい家庭を支援するため、給食の配布や端末の貸し出しなどの対応が優先されたものの、その後もオンライン授業が拡充されないままなのだ。

学校側の準備不足や教師側も外出制限を続けているなどの事情があるものとみられる。ライブ形式の授業以外はどうしているのかというと、学校側がウェブサイト上に月曜日から金曜日までの課題やテストを掲載し、生徒がその指示に従ってこなしていく。対面の授業と比べると、生徒の自主性に大きく依存する形となるため、大学への進学率が落ち込むのではないか、といった懸念も出ている。通常5段階評価の成績も今学期は取りやめられ、「合格」「不合格」が通知されるだけとなるという。

これに対し、富裕層が通う私立学校は、オンライン授業を充実させていることから、「教育の格差が広がっている」との切実な指摘も出ている。子どもを公立学校に通わせる親の1人に話を聞くと、「このことを考えると気がおかしくなりそうだ。自分で教えようにも仕事が忙しく両立は難しい。公立学校では、今、子どもたちに与えられる教育の機会があまりに少ない」と悲鳴を上げる。

習い事では“レジェンド”が集結 生徒のモチベーション維持に

では、学校以外での習い事はどうなっているのか。

例えば、水泳を習う子どもたちはプールで泳ぐことができない状況が続く。週に何十時間も泳ぎ、「スポーツ推薦」での進学を考えていたような生徒にとっては、夢や目標を奪われてしまうというような状況になりかねない。

現状への対処として、オリンピック・メダリストを輩出する水泳クラブ「ネイションズ・キャピタル・スイムクラブ」は、週に4回、オンライン授業を実施する。どうやって水泳をオンライン授業で学ぶのか…と思いきや、座学の授業に登場するのは、オリンピックで5つの金メダルを獲得したレジェンド、ケイティ・レデッキー選手など、現役の超有名選手たちだ。

画面上には複数のメダリストやコーチが勢揃い

画面上で外出制限時の過ごし方、自宅でのトレーニング法などを語る超有名選手の言葉に、生徒のまなざしは熱い。チームに所属する松山音央くん(15)は、「今は泳ぐことはできないが、オンラインでコーチやチームメイトの顔を見て話せる。有名なオリンピックの選手に直接いろいろ話を聞けるのもうれしい」と語る。

水泳のオンライン授業を受ける松山音央くん(15)、亜論(11)くん兄弟

オンライン授業では、座学だけでなくコーチの指導のもと、筋力トレーニングも行う。こうした取り組みは、練習に取り組むことができない生徒のモチベーションの維持に大きく役立っているという。

金メダリスト・レデッキー選手の講義を食い入るように見つめる兄弟

決定が早い分、「質」の面ではほころびも多いアメリカ。しかし、積極的に対処を進める中で改善に向けたアイデアも生まれている。対面授業を重視するあまり、欧米に比べオンライン授業の導入が大きく遅れた日本。まずは意識変革も含めて、アメリカの取組みから日本が参考にできることもあるのではないだろうか。

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】