シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は感染症内科の専門医、堺市立総合医療センターの長谷川耕平医師が、帯状疱疹(ほうしん)について解説。

放置すると失明や顔面神経マヒの恐れもある帯状疱疹。神経痛の後遺症を防ぐ発症3日以内の投薬療法やワクチンでの予防法などを解説する。

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帯状疱疹の原因と症状

帯状疱疹は「水痘帯状疱疹ウイルス」というヘルペスの仲間のウイルスによって起きる病気です。

子供の頃に水疱瘡(みずぼうそう)になった方もいると思いますが、原因ウイルスは同じです。

水疱瘡が治った後に水痘帯状疱疹ウイルスが体の中に潜んでいて、免疫が下がった時にもう一度活性化して帯状疱疹が起こります。

大人になってから初めて水痘帯状疱疹ウイルスに感染した場合は「成人水痘」といって、子供でいう水疱瘡と同じような症状になります。

症状としては、小さなブツブツとした皮疹神経の痛みが最も多く、針で刺されたような、焼かれたようなピリピリした痛みが起こるという人が多いです。

発熱や頭痛など全身症状を伴うケースは全体の20%未満で多くはないです。

帯状疱疹が起こりやすい年齢は一般には50歳以上と言われていて、歳を重ねるにつれてリスクは上がっていきます。一方、免疫が低下している場合は若い人にも起こりますが、比較的まれです。

若い人に何度も帯状疱疹が起こる場合というのは、例えばHIVだったり免疫に異常が生じる病気が背景にあるのではないかと考えるきっかけになります。

帯状疱疹の原因で一番言われるのは、加齢基礎疾患ストレスによる免疫低下です。

歳を重ねると免疫が低下し、だいたい50歳を超えた辺りから自分の免疫が水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化を押さえ込めなくなって帯状疱疹が起こります。

あとは、ガンの患者さんで化学療法を受けている方は免疫が落ちて帯状疱疹になりやすいと言われています。

放置すると失明や顔面神経マヒの恐れも

帯状疱疹を放置すると、特にご高齢の方だと、皮膚がただれてしまってそこから皮膚にいるばい菌が入って、ばい菌の感性症を起こす場合があります。

あとは目の周りに帯状疱疹ができて、それを放置するとだいたい50%ぐらいの方が眼球に直接帯状疱疹が進んでいき、最悪の場合は失明すると言われています。

にも帯状疱疹が出来ることがあって、聞こえにくさというのもそうですが、顔の筋肉を動かす「顔面神経」の近くに炎症が起こるので、顔面神経麻痺が起こってしまうと言われています。

一番問題になるのは、帯状疱疹後の神経痛で、だいたい2割ぐらいの方に起こると言われていて、帯状疱疹になった後、90日以上続くものを帯状疱疹後神経痛といいます。

これが80歳以上になると、帯状疱疹になった人の3人に1人は神経痛が残ってしまい、すぐに良くなるのならいいのですが、月から年単位、場合によっては生涯残ってしまうというケースもあります。

発症3日以内の早期治療が大事

帯状疱疹の治療は、水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗ウイルス薬を入れることと、帯状疱疹は神経痛が起こる病気なので、痛みをとる治療の2つがあります。

抗ウイルス薬についてお話しすると、ヘルペスの治療は、帯状疱疹が起こってから3日以内に開始すると帯状疱疹後神経痛の可能性が下がると言われています。

ただ、3日以上経った後に治療を開始した場合、神経痛を減らす効果がどこまであるかははっきりしていなくて、少なくとも効果は落ちるだろうと言われているので、なるべく早く病院で診断を受けて抗ウイルス薬を飲んだ方がいいと思います。

病院に行った方が良い目安は、痛みが先に出ることが多いと言われていますが、その後、皮膚に小さなブツブツが出来てきた場合に帯状疱疹を疑うので、もし疑いがあればすぐに病院に行って頂くのが良いかと思います。

一般的には最初に痛みが出て、小さな水ぶくれが出来てそれが数日でつぶれていきます。

一番多い経過は、1週間~10日ぐらいで水ぶくれがかさぶたになり、最終的に全てがかさぶたとなって治っていく形です。

ワクチンの発症予防効果

予防法で一番確実なのはワクチンです。

不活化ワクチンに分類される「乾燥組替え帯状疱疹ワクチン」が50歳以上の方だと接種可能で、2回打つことでかなり強力な発症予防効果が得られます。

2回打った場合、帯状疱疹の発症予防効果は、50歳以上だと96%60~70歳以上でも90%くらいは予防できるいわれていて、万が一発症してしまっても、その後の帯状疱疹後神経痛は90%くらい予防できる言われています。

このワクチンは接種して6~8年間は発症予防効果が85%くらい維持されるといわれています。

また、その他の予防方法については、確実なものではありませんが、食事をきっちりとることが大事だと思います。

過度に痩せている方、すごく食事制限をかけている方は抗体を作る細胞が減る方がいます。そういう方は免疫が落ちている状態と言えるので、帯状疱疹になりやすかったりするかもしれません。

規則正しい生活は身体の免疫を維持するために必要なので、そういったことが予防に繋がるかもしれません。

免疫が関係する病気ですし、歳を重ねることでなってしまう病気なのである程度は仕方ありませんが、早くワクチンを打つことが一番かなと思います。

長谷川耕平
長谷川耕平



堺市立総合医療センター感染症内科医員。大阪府出身。
2014年神戸大学医学部医学科卒業。
2019年より神戸大学医学部附属病院感染症内科で勤務。
その後、神戸市立医療センター中央市民病院感染症科を経て、
2022年4月より現職。
現在、院内感染症コンサルタント、新型コロナウイルス診療などに従事している。