東名あおり運転死傷事故で被告人質問
神奈川県大井町の東名高速で、5年前、あおり運転を受けた末に、夫婦が死亡した事故で、危険運転致死傷などの罪に問われた男の差し戻し裁判。男は証言台で「危険な運転はしていない」と改めて無罪を主張した。

この事故は、2017年6月5日、神奈川県大井町の東名高速で、石橋和歩被告(30)が車を運転中に、萩山嘉久さんの家族4人が乗ったワゴン車に、あおり運転を繰り返して、高速道路上に停止させたとされるもので、そこに後続のトラックが追突し、萩山さんと妻の友香さんが死亡した。
現在、横浜地裁で裁判のやり直しが行われていて、危険運転について無罪を主張する橋被告は、18日、被告人質問に臨んだ。黒のスーツに青いネクタイ姿で入廷、証言台に立った石橋被告は、ぼそぼそとした声で質問に答えた。
あおりの末の停車ではなく 「相手の車が先に止まった」
裁判の争点は、石橋被告があおり運転を行った結果、萩山さんらの車が停車を余儀なくされたのかどうかだ。弁護側が事故当時の様子を聞くと・・・

弁護士:なぜ萩山さんの車を追いかけたのですか
石橋被告:相手に文句を言うため
弁護士:後ろに行って何をしましたか
石橋被告:パッシングをしました
弁護士:なぜ?
石橋被告:どこかに止めて文句を言うつもりで、たぶんしたんだと思います。
さらに、事故が起こる直前の様子について石橋被告は、「相手の車が減速して止まって、自分も減速して止まった、相手が先に止まったた」と説明した。この点について検察側は、これまでの裁判で、「被告の車が萩山さんの車の前に割り込んで減速し、4回に渡り妨害運転を行った」と主張している。
検察官に対して「何も考えていなかった」を連発
一方、石橋被告は、検察側からの質問に対しては、「何も考えていなかった」を繰り返した。

検察官:パッシングしたらどういう反応すると思いましたか?
石橋被告:何も考えていなかった
検察官:相手の車の前に入った理由は?
石橋被告:何も考えていない
検察官:理由もなしにこんなことするのか
石橋被告:普通は何も考えないと思います
この他にも石橋被告が、「覚えていない」「もう一度質問を言ってください」を連発する場面もあった。
「危険な運転していない」 他人事な口調も
そして被害者参加制度を利用した遺族の代理人弁護士が質問に立つと、石橋被告は、どこか他人事の口調で、次のように述べた。

代理人:夫婦の死を、現場検証の時に聞いてどう思いましたか?
石橋被告:大変なことと思った
代理人:今はどう思っていますか
石橋被告:亡くなったことは大変と思います
一方、裁判員からの質問に対して石橋被告は「そういう危険な運転はしていないです」と述べ、重ねて「危険な運転はしていないか」と問われると、「責任があるかないかは自分では分からない」と答えた。この日、石橋被告の口からは、反省の言葉や遺族への謝罪の言葉は出なかった。この裁判は今月30日に結審する。

(フジテレビ社会部・横浜支局 魚住菫)