岐阜県の畳店に全国から絶えない注文

日本家屋の一戸建てが減り、都内を中心に増えたのはタワーマンションなどのニーズ。昔に比べて、和室がある家が少なくなったのではないだろうか?

そして和室に使われる畳の需要も減少しているのが実情だ。農林水産省の「令和元年産『い』(い草)の作付面積、収穫量及び畳表生産量」によると、主産県(福岡県と熊本県)における令和元年の畳表生産量は250万枚で、前年に比べて4%の減少となった。なお生産量は、平成25年が343万枚、平成30年は261万枚と推移している。

このような状況の中、全国からの注文が絶えない畳店が岐阜県羽島市にある。創業1869年の「山田一畳店」だ。そして同店の畳が人気なのは、デザインにある。畳と言えば一般的に長方形をイメージすると思うが、「山田一畳店」では、六角形や曲線、果ては龍がデザインされた畳まであるのだ。
 

仏間に現れたのは迫力ある龍の姿
仏間に現れたのは迫力ある龍の姿
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これを手掛けているのは、5代目となる山田憲司さん(36)。元々は東京の工務店で建築業をしていたが、3年前に家業を継いだのを機に畳の新しいあり方を考えるようになったという。

確かに山田さんが手がける畳は、和室だけでなく洋室の雰囲気に合うモダンなデザインで、需要がありそうだ。

では、どのようなことをきっかけにこの畳にたどりついだのだろうか?そして、やはり畳業界での生き残りは大変なのだろうか? 山田さんに詳しく話を聞いた。
 

“デザイン畳”のきっかけは友人からのリクエスト

――このような“デザイン畳”を始めたきっかけを教えて

2017年に会社員を辞めた時に、実家が畳屋ということもあり、たまたま友人から車のハイエースの後ろに畳を敷いてほしいと頼まれたことがきっかけで、変形した畳を作り始めるようになりました。その頃から畳の可能性を感じ、2018年から本格的にデザイン性の高い畳の製作に取り掛かりました。

きっかけとなった友人の自動車に敷いた畳
きっかけとなった友人の自動車に敷いた畳

――やはり、通常の畳の張り替えの需要は減っている?

20年間で約3分の1に減っています。フローリング需要に押されて、畳の激減が業界全体で食い止められない状態です。
 

――注文される人の特徴や傾向を教えて

現在の納品先の割合は一般住宅が7割、旅館や飲食店などの店舗が3割です。デザインにこだわりがある方が、注文して頂いていると思います。


――畳を曲線に加工するなどの技術は難しい? この畳においてどの点が大変なの?

自分は畳を作り始めた時からこの製作方法をしているので、特に難しいとは感じていませんが、作業時間が通常の畳の5倍以上かかります。

例えば4畳半の部屋の畳を作る場合、四角い畳は一部屋1〜2日で出来ますが、僕の作る曲線の畳は一部屋で2週間以上かかります。具体的には変形の畳を作る為にその部屋に合わせて型紙を作るところから始まり、四角い畳用の機械が使えないので少しずつ手作業でイグサを加工していきます。
 

まるで鱗のように敷き詰められた畳
まるで鱗のように敷き詰められた畳

色が違うように見せるため、畳の目の向きを変える工夫も

――このようなアイデアはどこから生まれるの?

ハイエースの畳を作った時に色々なアイデアが思いつきました。今までは四角い畳しか出来ないと思い込んでいたのですが、それ以外にもできることがわかり、畳の部屋を大きなキャンバスに見立ててデザインをしています。

畳の歴史は西暦700年に始まったとされ、今まで1300年間は四角い形しかなかったので、色々な形ができるとわかった今、逆にアイデアがどんどん出てきます。


――色が異なる畳もあるようだが、どのような加工をしている?

例えば、この畳は全て同じ色のイグサを利用しています。畳の目の向きを少しずつ変えることで、光の反射が変化することによって色が違って見えます。
 

同じイグサでも、畳の目の向きを変えるだけで色合いが変わる
同じイグサでも、畳の目の向きを変えるだけで色合いが変わる


次作で考えているのは、全て六角形の畳を用いてのデザインです。畳を回転することによって色が変化するので、同じ畳でも向きを変えて無限にデザインが作り出せる畳を製作する予定です。青色や黒色の畳もありますが、それは既製品のゴザを利用しています。
 

六角形の畳を組み合わせることで、デザインしていく予定
六角形の畳を組み合わせることで、デザインしていく予定


具体的に考えているのは、マリリン・モンローや壁掛けの畳を作る予定です。
 

マリリン・モンローの畳のデザイン画
マリリン・モンローの畳のデザイン画

2021年の海外進出を視野に新デザインも制作

――2021年は海外進出を検討しているとのこと。その理由は?

畳屋をやり始めた当初はまず世界展開したい思いが強かったです。すぐに英語のホームページを作り、海外からの問い合わせがありましたがデザインバリエーションが少ないと長く経営していくことが難しいと感じ、まずは日本で畳の可能性を広げる活動をしていこうと切り替えました。

2018年頃から始めて一人でやっているので時間はかかってしまいましたが、鋭角な畳、丸い畳、夜空のデザインの畳、龍のデザインを完成させ、前述のマリリン・モンローの畳が完成すれば当初思い描いていたデザインがほぼ実現出来たことになります。(2020年秋〜冬)

マリリン・モンローの畳が完成したら、音楽に合わせながらデザインを変えるライブパフォーマンスなどもおこない、海外挑戦したいと考えています。
 

――これからの畳店はどうあるべきだと考えている?

不要なものが淘汰されるのは仕方ないと思いますが、個人的には畳のポテンシャルがまだまだ発揮できていないので、そのポテンシャルを引き上げる活動を独自でしています。

畳は世界的に見ても非常に珍しいプロダクトなので、世界で挑戦するのは面白いと思っていますが、他の畳屋さんもこうするべきだとか言う考えは特にないです。
 

畳の加工をする山田さん
畳の加工をする山田さん

なおデザインにもよるが、値段は通常の畳の3倍はするという。それでも全国からの注文が絶えないとのことなので、山田さんが話すように「畳のポテンシャル」は高そうだ。日本の伝統技術である畳の、今後の海外展開にも期待したい。

(画像提供:山田一畳店・山田憲司さん)
 

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

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