神奈川県の東名高速で、5年前、あおり運転をされた末に、夫婦が死亡した事故で、危険運転致死傷などの罪に問われた男の差し戻し裁判が、先月から、横浜地裁で行われている。証言台に立った夫婦の次女は、涙ながらに「本当は死刑よりつらいことになって、反省して欲しいけど・・・」などと訴えた。


一審で懲役18年も”異例”の展開に
この事故は、2017年6月5日夜、神奈川県・大井町の東名高速で、石橋和歩被告(30)が車を運転中に、萩山嘉久さん(当時45)の家族4人が乗るワゴン車に、あおり運転をくり返して、停止させ、そこに後続のトラックが突っ込んだもの。
萩山さんと妻の友香(39)さんが死亡、娘2人が負傷し、石橋被告は、危険運転致死傷罪に問われている。この事故がキッカケとなり、あおり運転が社会問題化。道交法が改正され、あおり運転を「妨害運転」と規定し、厳罰化された。


事故をめぐって、一審の横浜地裁は、「危険運転罪」が成立するとして懲役18年を言い渡した。しかし二審の東京高裁は、横浜地裁での裁判の手続きに問題があったと判断。一審の判決を取り消し、裁判のやり直しを命じ、”異例”の展開となった
差し戻し審で改めて無罪主張
差し戻し審は、1月27日から横浜地裁で始まり、石橋被告は、初公判に、黒のスーツに青いネクタイ姿で入廷。「自分は事故になるような危険な運転はしていないし、人がけがをしたり、亡くなったりする事故はしていない」と起訴内容を否定した。

弁護側も「被告は危険運転行為をしていない。夫婦が死亡して娘がけがをしたのは被告の運転が原因ではない。(後続の)トラックが前の車に気付かず衝突したのが原因」と改めて無罪を主張した。
死亡夫婦の娘が涙「死刑よりつらいことになって・・・」
2月3日と7日には、亡くなった萩山さん夫婦の娘2人が証人として出廷。次女は4年前に横浜地裁で行われた第一審の裁判にも証人として出廷していた。
検察官から「お父さん、お母さんがいなくなったことを普段の生活で思い出すことはありますか?」と聞かれ、次女は「学校のイベントで他の子が保護者が来ているとき、自分はしょうがないけどさみしいなと思う」と涙をこらえながら説明。

さらに、石橋被告に対して言いたいことはあるか聞かれると泣きながらこう答えた。
萩原さん夫妻の次女:事故のない状態で、父母が帰って来るなら許すけど無理ですよね。本当は死刑とかそれよりつらいことになって反省してほしいけど、それはたぶん無理なので、できるだけつらい目にあってほしいです。
2月14日からは石橋被告に対する被告人質問が始まる。
(フジテレビ社会部・横浜支局 魚住菫)