水で1万回繰り返し書ける習字練習用の半紙

日本の伝統文化である習字。書写の授業として小学生の時に習った人が多いと思うが、書く際に黒い液体の墨汁を使っていたら、気が付いたら跳ねていて、手や顔そして服に付いていた…という経験をした人も少なくないはず。

その悩みを解決する習字用紙が4月7日に発売された。
 

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それが、こすると消えるフリクションボールペンで有名な「パイロット」が、独自開発した『水書きお習字練習シート 水書用紙』だ。

墨汁でなく水で書けるというものだが、特長として、
(1)乾くと文字が消えるので何度も練習ができ、水を使うため手や衣服が汚れる心配がない。
(2)破れにくく、水に濡れて乾いた後も紙が波打ちしにくく、繰り返し使用が可能。1万回以上の筆記テストをクリア。
(3)墨汁で書いたようなにじみ、かすれなども再現ができ、文字のトメ・ハネ・ハライの表現にも優れている。

習字で使われる半紙サイズの他、書写の教科書と同じA4、B5サイズもラインアップがある。ちなみに、半紙サイズのみ文字のバランスが取りやすい罫線が入っている。

2020年度から施行される新学習指導要領に伴い、小学1、2年生の授業に「水書用筆等を使用した運筆指導」が取り入れられることに対応した商品ということだが、汚れる心配がないというのはありがたい。一体、どういった仕組みなのか担当者に話を伺った。
 

墨汁による汚れなどに「不安・煩わしさ」を感じている人が多かった

ーー開発に至った経緯は?

習字の練習において、墨汁による汚れや道具の手入れに「不安・煩わしさ」を感じているユーザーは多いです。墨汁を使わずに水によって練習ができる当製品は、それらを解消することでユーザーへ「習字の練習への取り組みやすさ」を提供できるものと考えました。

ーーどのようにして、この仕組みを考えた?

従来の紙をベースとした水筆紙は繰り返しの使用に弱いという問題点がありました。その解決のため、耐水性の合成紙に当社独自のインキ技術を合わせることで、当製品を開発しました。


ーーデザインのポイントは?

・毛筆の表現や書き心地を再現するために、表面の質感と吸水性を半紙に近付けたこと。
・文字のバランスや配置の理解を深められるように、紙面に基準となる線を設けたこと。
・「繰り返し使用できる」という機能が、反復が基本とされる「練習」という行為に合致した商品であること。

 

左側:半紙サイズ 右側:A4サイズ
左側:半紙サイズ 右側:A4サイズ

ーー開発者だから分かる「使用する際の注意点」は?

一度墨汁等を使った筆や、水以外の墨汁等を使用すると文字が消えなくなります。耐久性に優れた商品ですが、表面に水で透明になる特殊な印刷がしてあるため、硬いものなどで無理にこすると印刷層が削れ、文字が書けなくなるおそれがあります。

ーー交換の目安は?

弊社試験により1万回以上の筆記に耐えうることを確認しております。通常の仕様の範囲では1万回以上の繰り返し使用は考えづらいため、特に交換時期の目安は定めておりませんが、水で筆記しても変色しなくなる頃が交換の目安です。
 

仕組みのカギは「特殊水変色層」

なぜ水で書けるのか仕組みが気になるが、この用紙の下地の色はグレーで、その上に「特殊水変色層」というのがあるという。この層が不透明のため、筆記前は光の乱反射により、目に見える色が薄いという。

だが、水を使って筆記すると、水が浸透し「特殊水変色層」が透明になり、光の乱反射が抑制されるため下地の色が透けて見え、墨で書いたような筆跡が現れるというのだ。
 

水書用紙の発色の仕組み
水書用紙の発色の仕組み

ーー今回の開発商品の先は考えている?

水書の授業が実際に開始になりましたら、授業の動向や学校の先生など実際に使用している方のご意見を反映していきたく考えております。

ーー今回の水書用紙を使用する方へ伝えたいことは?

水書は水を使うことで服やまわりを汚すこともなく、安全・安心に文字を書いて頂けるものです。水書用品をお使いいただくことで、小さな頃から「書く」という文化に親しんで頂くことができれば幸いです。


パイロットコーポレーションは、筆記具メーカーとして「書く、を支える」をスローガンにしている。「私たちはこれからも『書く』というすばらしい文化を未来に伝えていくために、筆記具だけでなく、あらゆる方向から『書く』を支える製品開発に取り組んでいきます」と今後の意気込みを語ってくれた。

ちなみに価格は、半紙サイズ700円、 A4サイズ650円、 B5サイズ550円(※税抜き、各2枚入り)。汚れないというのは確かに習字に対するハードルが下がる。デジタルの発達で文字を書くこと自体が減ってきてはいるが、これでしっかり練習をして、達筆を目指してみるのはいかがだろうか。
 

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プライムオンライン編集部
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