保育現場からの生の声は「子供の命に差をつけるのか!?」
この記事の画像(5枚)安倍首相の突如の要請による全国一斉休校がスタートしたが、休校要請の対象とならなかった保育所などは、開園を続けている。こうした中、自民党の保育行政に明るい議員と保育関係団体が設立した「保育推進連盟」による「保育施設における新型コロナウイルス感染防止対策・勉強会」が3月4日に開催された。
前日に大阪で初めて保育士の感染が確認された状況で行われたこの会議では、保育園・幼稚園・学童保育など、今回の一斉休校の対象外となり、ウイルスから子どもたちの命を守り続ける最前線となった各現場による、悲鳴とも言える声があふれた。
例えば、会議に出席した日本保育士協会の理事らからは、保育園で預かる子供たちは小中高校の児童や生徒と比べて「免疫力が弱い」との指摘とともに、次のような悲痛な訴えがあがった。
「安全を考えると万が一の重篤化等の恐れもあり、どうしても不安が拭いきれません。保育園と小学校とでは何が違うんでしょうか?子供の生命・安全に差をつけるのは到底納得いきません」
さらには、保育園などは普段からギリギリの人員配置で運営している状態にも関わらず、現在は「子育て中の職員が休校措置による欠席・欠勤等もあり手薄な職員配置のままでの保育」だとして、「安全への配慮」や「休校と仕事の板挟み」など保育現場の抱える不安や悩みを訴えた。
要望書には「現実的でない対応を押しつけることないよう」と政府に厳しい指摘も
保育推進連盟は、一斉休校措置が要請されてからこの日までに可能な限り現場の声を聞き取ってきたとして、「新型コロナウイルス感染防止の為の学校臨時休校措置における保育園・こども園・学童クラブの開園に関連する問題点」と題した全10項目からなる要望書をまとめあげた。
その中ではまず、政府の方針として保育園や学童保育の開園に際しては感染防止策の実施が前提だが、「感染防止策の実施が困難となった場合の施設の対応方針について国の明確な指針」を求めた。また、「園児(児童)や職員の家族等、濃厚接触者が感染した場合の取扱い」についても各施設の判断は非常に難しく、対応が遅れるのではないかといった懸念も示された。
さらに、各自治体が『保護者の都合のつく場合には家庭での保育を行って頂く様な働きかけ(登園自粛)を要請できる様』にするためには、政府からも国民へ理解を求めることが必要だと指摘した。
また、要望書には政府への苦言とも言える内容も散見された。例えば、政府が表明している財政措置として、学童保育に関しては保護者負担を求めないとしているが、『長期休み期間は(中略)、追加の保護者負担金(加算保育料等)を徴収し運営を行っています』と指摘した上で、『保護者負担が無いままでは人件費を含め児童受入れに必要な費用の全てを賄う事ができません』と、政府の見通しの甘さを強調した。
政府が、感染拡大などにより保育園が休園したで場合でも、保育士による訪問保育等の代替措置を求めている部分には、保育士の個別家庭訪問だとすれば『あまりにも無謀な想定対応ではないかと感じております。(中略)現実的ではない対応を現場に押し付ける様な事の無い様対応策の検討を』との厳しい表現と共に、人員的に対応できないだろうとの見通しを示した。
「問題はスピードだ」など国会議員から後押しの声 政府の対応は…
保育の現場から出された様々な生の“悲鳴”に触れた自民党議員からは次のような声が出た。
「学童や保育園の基準をどうやって見直すかということだと思う」
「与党として緊急に手当てをしなければいけない。問題はスピードだ。いくら演説してもモノは届かない。スピード感に欠けている」
「厚労省の現場の体制の強化をしないと、何をしているんだということばかりだと答えは返ってこないと思う。しっかり充実させるように」
保育推進連盟はこの会議後直ちに、自民党の岸田政調会長に要請書を渡し、党を通じて政府に要望を伝えるよう求めた。一方で、出席者からは「時間が限られていたこともあったが、我々でできることはこのくらい」と、要望がどの程度実現するかは不透明だという声も聞かれた。
議員自らが「会議をいくらしても無駄だ」「スピード感だ」と述べたように、この日の会議が意義のあるものだったかどうかは、政府から必要な対策や物資がそれを求める現場に届くか否かという「結果」にかかっている。