初めてテレビ電話で開催したG7緊急首脳会議

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、G7=主要7カ国の首脳が日本時間の16日午後11時ごろから約50分間、緊急のテレビ電話会議を行った。G7首脳の間でテレビ電話会議が行われるのは初めてのことだ。

安倍首相は官邸内の一室でこの会議に出席した。メディアへの取材許可は下りなかったが、公開された写真では、安倍首相が向き合ったモニターにアメリカのトランプ大統領やドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領、イギリスのジョンソン首相らの姿が分割画面で表示され、夫人のコロナウイルス感染が判明し自主隔離中のカナダのトルドー首相も参加している様子が確認できた。

G7首脳テレビ電話会議 16日 官邸インスタグラムより
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会議の中で各国首脳は、新型コロナウイルスのパンデミックが世界経済にも大きなリスクを与えるとした上で、「パンデミックの前に想定されていた経済成長の水準を回復するのみならず、将来のより強い成長に向けた基盤を作ることを決意する」ことを確認し、世界経済への影響に対し、必要かつ十分な経済財政政策をG7で実行していくことで一致した。この内容は会議後に発表された首脳宣言にも盛り込まれた。

集団感染発生時の共通点などの経験を各国と共有

また、日本政府によると、会議の中で各国首脳からは、新型コロナウイルスの感染拡大防止策について紹介があり、安倍首相からは学校の休校や大規模イベントの中止、縮小の要請などの取り組みを紹介した。また、集団感染が発生した際の共通点など、各国の対策の参考となるような日本の経験も共有したという。

感染拡大終息のために早期の治療薬の開発で一致

今回の会議で安倍首相が主張した点は、「G7で協調し、必要かつ十分な経済再生政策を実行していく力強いメッセージを発出すべきだ」という点に加え、もう1つあった。それが「早期に治療薬を開発することの重要性」だった。

政府内では感染拡大の早期終息のために薬の開発を急ぐ声が強く聞かれる。政府高官は2009年に流行した新型インフルエンザについて「1年で終息できたのは特効薬、要は薬が開発されたことなんだ。だから、1日も早い終息のためには薬が開発されるのが一番なんだ」と語っている。

こうした期待を踏まえ安倍首相は今回の首脳会議でも、「何よりも治療薬を開発することが重要である。そのためにG7が協力し、世界の英知を結集して治療薬の開発を一気に加速すべきである」と各国首脳に呼びかけた。

安倍首相「完全な形でオリンピック・パラリンピック実現する」開催時期に言及はなし

一方、今回の会議において、最大の注目点とも言えたのが、7月24日に開幕する東京オリンピックとパラリンピックの開催についてだ。

安倍首相は会議後のインタビューの中で、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証として、東京オリンピック、パラリンピックを完全な形で実現するということについて、G7の支持を得た」と明かした。しかしながら、開催の時期についての言及があったかという記者の質問に対しては「完全な形で実施するということでG7が一致したところだ」と重ねて述べるにとどめ、明言を避けた。

会議の数日前、G7メンバーの1人であるトランプ大統領はツイッターで、東京オリンピック・パラリンピックの「1年間の延期」に言及したばかりだが、日本政府によると会議の中で各国首脳からは、開催時期や開催方法などについての具体的な言及はなかったという。

1年間の開催延期のツイートをしたアメリカ・トランプ大統領

ある政府関係者は会議後に、安倍首相が東京五輪について会議で言及した経緯について、「聞かれたから答えただけだ」と説明した。一方で別の関係者は会議前に「日本は一番そこ(五輪)に触れないといけない立場。会議の流れがあるから必ずというわけにはいかないが、こちらから何も話さないってわけにはいかない。話さなかったら各国が余計気になってしまう」と話すなど、G7会議の場で東京五輪について話題に上ることは想定通りだったことが伺える。

「完全な形での開催」とは?首相発言めぐり割れる解釈

この会議から一夜明けて、政界には安倍首相の「完全な形で実施」という言葉についての、様々な見方が飛び交った。

菅官房長官は「予定通りの開催に向けて準備を着実に進めていくという考えに変わりはない」と述べたほか、橋本聖子五輪相は、「完全な形というのは予定通りにしっかりと開催できるよう準備し、それに向けて連携していくということだ」と説明、安倍首相の発言は予定通りの五輪開催が前提だとの見解を示した。

一方で、ある閣僚は「完全な形で実現できるまで待つということしかないでしょう。普通そう捉えるよね。総理はそれを2回も言ったから何らかの意味があるんじゃないの。このままでは延期はやむを得ないということなのではないか」との見解を示した。政府内でも、「各国の感染状況を見極める必要がある。選手が来なければ開催はできない」という見方が出るなど、予定通りの開催は厳しいとの声がじわりと広がっていて、今回の安倍首相の発言もその延長線上にあるとする見方は少なくない。

G7首脳会議直前に組織委員会の森喜朗会長が安倍首相と会談

実はG7会議のおよそ5時間半前、大会組織委員会の森喜朗会長が首相官邸を訪れ、安倍首相と2人でおよそ10分間会談していた。

安倍首相と面会後、インタビューには答えず首相官邸を後にする森会長 16日

関係者によると、「森会長が19日、聖火の引き継ぎ式のためギリシャに渡航するのを前に、ギリシャでも感染者が増えている現状を踏まえて、総理に一言断りを入れておく目的」のための面会だったという。しかしある官邸関係者は「建前上はそう言われても、このタイミングで官邸にわざわざ来るっていうのに、それだけなんでしょうかね」と憶測を巡らすなど、会談が官邸内でも注目を集めていることが伝わってきた。G7会議での東京五輪に関する言及の仕方について何らかのすりあわせが行われた可能性も否定できない。

(テレビ電話会談後にインタビューに答える安倍首相 17日)

「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証」としての東京五輪開催を示せるか

東京オリンピック・パラリンピックをめぐっては、開催国である日本だけではなく世界的に見ても、代表選考で重要となるバドミントンのワールドツアーの中止決定や、野球のアメリカ大陸予選が延期になるなどの、直接の影響が出始めている。

こうした中、20日には国内での聖火リレーが中止になったギリシャから日本に聖火が到着し、26日には安倍首相出席のもと、福島県のJビレッジから日本国内での聖火リレーがスタートする予定だ。

世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京五輪の開催は、日本にとっての「復興五輪」という意味合いと共に、日本を含む世界にとっての「コロナ打破五輪」という重要な意義が加わることになったと言える。

安倍首相は会議後のインタビューで「首脳間のテレビ会議は大変有意義であった。必要な時にまたこの会議を行おうということでも一致した」と会議の意義を強調した。次にこの首脳会議が開かれた場合、安倍首相が訴えた「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証」としての東京五輪開催を示せる状況を作り出せているのかどうか、安倍首相をはじめとするG7首脳のコロナ危機終息に向けた、今後の具体的な行動に注目が集まる。

(フジテレビ政治部官邸クラブ 総理番記者 亀岡晃伸)