“私的な空間”の喫煙を制限

2020年4月1日より受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が全面施行される。
これにより、飲食店など屋内が原則禁煙となる予定だ。

喫煙者を取り巻く環境はここ数年、厳しくなっているわけだが、大阪の寝屋川市では、23日、喫煙者にとってさらに厳しい条例が可決された。

子供の受動喫煙を防ぐためのもので、簡単にいうとこのようなものになる。

・家庭などで子供がいる部屋で喫煙をしない
・子供が同乗する自動車の中で喫煙をしない
・学校、児童福祉施設、公園、広場等、子供の周囲で喫煙をしない
・市長は路上喫煙禁止区域を指定できる
・路上喫煙禁止区域で違反した者は、1,000円の過料に処す

家庭や車内などいわゆる“私的な空間”の喫煙も制限する条例なのだ。
2020年10月1日から施行されるが、もし家庭や車内などで喫煙した場合どうなるのか寝屋川市の担当職員に聞くと、「この条例では、子どもと同室の空間での喫煙をしないよう求めておりますが、罰則の規定はなく、努力義務となっております。」という回答だった。
ちなみに、子供のいる部屋の隣の部屋での喫煙は、条例に含まれないため問題ないということだ。

今回のこの条例案は、寝屋川の広瀬慶輔市長により提出されたものだが、子供の受動喫煙を防ぐためとはいえ「行き過ぎでは」との意見もあるだろう。
一体、なぜこの条例を施行しようとしているのか?広瀬慶輔市長に詳しく話を聞いてみた。
 

寝屋川市長 広瀬慶輔
寝屋川市長 広瀬慶輔
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子供を守るためには、一歩踏み込んだ内容が必要

――そもそも広瀬市長はタバコは吸う?

タバコは吸いません。お酒も飲みません。
 

――4月1日から受動喫煙の防止対策が全面施行されるが、これについてはどう思う?

施行については、健康増進の面から評価できますが、寝屋川市としては、子どもを守るためには、さらに一歩踏み込んだ内容が必要だと考えています。
 

受動喫煙を放置することは「子どもへの虐待と同じ」

――なぜ条例案を提出することにした?

子育て世代の皆さんに選ばれる魅力あるまちとするため、これまでも進めてきた、全国初の取組みとして市長部局がいじめの初期段階から関与する施策など、『子どもに最善を尽くす』施策の一環として、「子どもの健康を守る」ことをテーマに実施するものです。
 

――行き過ぎという声もあったようだが、どう受け止めている?

事前に実施したパブリックコメントでは、「プライベート空間に制限を設けるのは行き過ぎ」といった声が一部寄せられましたが、子どもが日常的に受動喫煙にさらされているのも事実です。受動喫煙を放置することは『子どもへの虐待と同じ』と捉え、私的な空間での喫煙制限にまで踏み込んだ条例としました。

また、条例の効果を高めるため、受動喫煙の状況を可視化する尿検査を小学4年生に対象に実施し、保護者等の意識の醸成を図ります。
 

――喫煙者への風当たりが厳しい、今の状況をどう思う?

子どもを守ることを考えれば、特に厳しいルールがあるのは必要なことだと思います。
 

――なぜ寝屋川市はここまでやるのか?

寝屋川市が今後、安定的な行財政運営を行い、市民の皆さんへの充実したサービスの提供を継続的に行っていくためには、70歳以上の人口のボリュームゾーンのカウンターパートとなる子育て世代の誘引により、人口の年齢構成のバランスの悪さを解決していくことが極めて重要です。
子育て世代の皆さんに選ばれる魅力あるまちとするため、寝屋川市の取組が他の自治体のスタンダードとなる程の「新たな価値」を生み出す『子どもに最善を尽くす』施策を最優先に進めています。


 

寝屋川市長は、子供の健康を最優先に考え、今回の決断に至ったようだ。
今回の条例が他の自治体も取り入れるようなスタンダードなものになるのか、私的な空間については努力義務という中でどこまで効果を発揮するのか、寝屋川市の今後の動向を見守っていきたい。

 

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プライムオンライン編集部
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