死後事務をお願いできる“おひとりさま信託”が登場

未婚率の上昇や核家族化などの影響を受け、2040年には単独世帯の割合が約40%に達するとの総務省の予測もある中、三井住友信託銀行が新たな信託商品の取り扱いを始めた。

「おひとりさま信託」というもので、契約者の財産整理やデジタル遺品消去などの死後事務をサポートしてくれるというのだ。

単独世帯率の推移と65歳以上の単独世帯数の推移“2020年以降は予測”(画像:総務省のHPより)

特徴は信託機能と死後の身の回りの実務を融合させたことで、契約者は身の回りのことに対する希望をまとめたエンディングノートを契約時に作成し、同信託銀行が預かる。

契約期間中はSMS(ショート・メッセージ・サービス)で定期的に安否確認を行い、死後実務は三井住友信託銀行と三井住友トラスト・ホールディングスが設立した一般社団法人安心サポートがエンディングノートの内容に従って実施。現在は都内の3店舗のみの取り扱いだが、順次店舗を増やしていくという。

単独世帯の増加などで、死後事務を頼める近親者がいないという人は確かに増えてくることだろう。また、最近話題になりつつあるデジタル遺品をどう消去するのかも気になるところだ。

“おひとりさま信託”をはじめた狙いやその具体的な中身を、三井住友信託銀行の担当者に話を聞いた。

(画像はイメージ)

単身世帯で死後の事務に不安を抱えている顧客が多くいる

ーーなぜこのような信託商品の取り扱いを始めた?

当社では、従来より遺言信託などの相続関連商品を取り扱っており、営業現場では単身世帯で死後の事務に不安を抱えている顧客が多くいることを認識していたため、そのような方々に安心できる商品を提供したく、本商品を開発しました。


ーー「おひとりさま信託」はどのような仕組み?

銀行が販売するのは特約付金銭信託であり、死後事務については一般社団法人「安心サポート」と契約締結いただきます。死後事務は、銀行ではなく、当該社団法人が外部提携会社等と履行します。


ーー死後の実務はなんでもお願いできる?

おひとりさま信託でご契約いただける死後事務の範囲は、エンディングノートに掲載している死後事務目録の範囲内です。具体的には、「葬儀・埋葬」「訃報連絡」「家財処分」「デジタルデータ削除」「公共料金・クレジットカード等の解約」「ペット輸送手配」等です。

死後実務で想定される内容(画像:三井住友信託銀行のHPより)

近年はデジタル遺品の消去に関心

そして、かつての身の回りの整理と言えば、アルバムや手紙、家財道具などのモノの処分が中心だったはず。しかし、現在増えているのがデジタル遺品の整理ではないだろうか。

総務省の「通信利用動向調査」」によると、2018年における個人のモバイル端末の保有状況は84%。モバイル端末をほとんどの人が利用する時代で、その端末にはメール履歴やプライベート写真が保存され、誰にも見られたくない個人情報のかたまりであるからだ。

編集部でも以前、PCデータやSNSの「黒歴史抹消計画」というサービスを紹介したが、自分の死後、秘密にしたいデータの行方に関心がある人も多いだろう。
(関連記事:PCデータ、SNS…死後に“黒歴史抹消”は神サービスか? 詳しく聞いた

具体的に、死後事務におけるデジタル遺品の消去とはどのようなものだろうか。引き続き、担当者に質問した。

(画像:総務省「平成30年調査の通信利用動向調査」)

他人が見る前に消去できる?

ーー今の時代だと、やっぱりデジタル遺品の消去への関心は高い?

デジタル遺品の関心は高く、終活にかかる各種アンケートでも財産整理、家財整理、公共料金/電話等各種サービス解約に次いでデジタル遺品が上位にあがります。


ーー消去は「スマホの写真だけ」などと端末内の一部データに限定はできる?

エンディングノートに記載いただいた全てのデータ削除になります。


ーー遺族らから「データ消去をやめて」と言われても、確実に消去することはできるの?

死後事務委任契約の履行となりますので、原則として契約に従い、データ削除を実施します。ただし、エンンディングノートに記載されているIDやパスワードと一致しない場合は、ロック解除等対応の結果、削除できない可能性もあります。


ーー契約者から「親族など他人が見る前に消去してほしい」との要望にも対応してもらえる?

死亡通知を受けた後、死後事務委任契約に従い速やかに死後事務を履行しますが、親族など他人がIDやパスワードを知っていた場合には「他人が見る前に確実に」とならない可能性はあります。


ーー「おひとりさま信託」の取り扱い開始から約1カ月。問い合わせや申し込みの状況は?

リリース以降は日々問い合わせがあり、契約済み・進談中のお客様も増えています。先行リリース店のみならず、地方圏含め全国で新規先・既先からの問い合わせがあり、商品パンフレットを希望されるお客さまも多くいらっしゃる状況です。

「他人が見る前に確実に」とならない可能性はあるということだが、デジタル遺品という新たな要望にもこたえた“おひとりさま”に特化した商品は、人生100年時代を迎える中、ますます注目されていくのではないだろうか。

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