「それって、ホント?」と言いたくなるマナー、多くありませんか?
新入社員のキャトウさんも、そんな“もやもやマナー”に悩まされるひとり。
家族や友達との電話なら問題ないだろうが、ビジネスシーンでの電話ではNGな「もしもし」という言葉。
入社前の研修などで教わった人も多いかもしれないが、そもそもこの「もしもし」というワード、どうして会社では使っちゃいけないの?
そこで今回のテーマは…
さっそく、国内外の企業や大学などでのマナーコンサルティングや人材育成などのマナー指導を行っている、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんにお話を聞いた。
西出氏:
ビジネスシーンで使うのは好ましくない、と言えると思います。
もちろん、時代は変わった、いままでのビジネスマナーで「そこまで意識しなくてもいい」というものも多々あり、そういうものは、徐々になくしていってもいいものもあると思っています。しかし、ビジネスマナーは「プライベート」と「ビジネス」のときのコミュニケーションの区別、という考え方からなっています。理由は、ビジネスシーンには、個人ではなく、会社として動いているもので、そこにお客様やお取引先との金銭や利害が絡んできます。それゆえに、会社の一員としての立ち居振る舞いが問われます。自分勝手な言動が、会社の言動と評価をされてしまうのですね。
ですから、自社が「もしもし」を使用しても良い、といえば、社員やスタッフの皆さんはそれに従いますが、個人の勝手で会社の許可なく使用するのは、ビジネスマナーとしてよろしくないといえますね。
西出氏:
「もしもし」の語源が「もの申す」の「申す、申す」からきているという説があり、上から目線的な印象になるため、ビジネスシーンでは使用しない、控えたほうが良いとなったと言われています。
もちろん、どちらが上でどちらが下、ということではなく、お互いが互いに尊重し合うという気持ちから「電話の第一声で『もしもし』は使わない」でもよろしいのではないでしょうか。友人たちとの電話のように「もしもし」と言って電話に出ると、会社にいてもつい気が緩み、その後の会話もタメ口などになってしまう危険性もあるといえるのではないでしょうか。
ここでひとつ、確認したいことがあります。
ビジネス電話で「もしもし」は使わない、というのは、先の語源からそうなっていると思いますが、これはもともと、電話がかかってきたときの話から生まれた内容で、会話の途中で電話がきれたようだから「もしもし」ということは、ビジネスシーンであってもやむを得ないときはあると思います。ただし、前述の語源があるため、極力使用しないように意識をする、という姿勢はあって良いのではないでしょうか。
ビジネスシーンで「もしもし」を使うのが好ましくないのは、ズバリ「上から目線の言葉」であるため。
そのため、家族や友人との通話で「もしもし」を使うことは問題なくても、“上から目線”の言葉をかけるのがふさわしくない相手との会話、つまりビジネスシーンでの使用はふさわしくない。
ということは、ビジネスシーンでの電話とはいえ、後輩など“目下”の立場の人には「もしもし」を使ってOKなのだろうか?
西出氏:
語源からすると、「もしもし」を使うのが好ましくない相手は上司などの目上の方やお客様ということになりますが、“ビジネス電話”という捉え方でいうと、後輩などに対してもビジネスシーン・ビジネス関係者との電話では「もしもし」は使用しない、と大きくひとまとめに括っているほうがわかりやすいかと思います。
あくまでも、ビジネスシーンにおける電話では「もしもし」は使用しない、ということです。
もちろん、「もしもし」を言ってしまったからといって、それを「失礼」とか「マナー違反」などとはいいませんね。先の理由があるから、ビジネスシーンでは控えたほうが無難ですよ、ということです。
ビジネスシーンは、幅広い年齢の方々と金銭の絡むやりとりをします。相手がどのような受け取り方をするかがわからないから、トラブルにならない言葉を選んで使用することも大事なことですよ、ということを教えてくれているということです。
例えば、私のように「ビジネスシーンではもしもしは使わない」と言われて30年以上仕事をしてきた人からすると、会社に電話をかけて「もしもし」と言われたら、この会社は、ビジネスマナーの教育をしていないのかな、と思うこともあります。これは、会社の第一印象となりますから、その後の関係に影響を及ぼさないとは言いきれません。
西出氏:
ビジネスシーンの場合は、
かかってきた電話に出るとき…「はい。〇〇会社でございます」
電話をかけるとき…「わたくし、〇〇会社の〇〇と申します」
電話を取り次いでもらったとき…「お待たせいたしました。〇〇です」
相手の声が聞き取りにくかったり反応がなくなったとき…「〇〇さん、申し訳ございません。聞こえていらっしゃいますでしょうか…」
と呼びかけるなどの工夫とコミュニケーションは大切なことですね。
西出氏:
余談ではありますが、特に、マナー的には、相手の声が聞き取りにくいときの対応は注意が必要です。前述のとおり「申し訳ございません」のひと言を伝えるだけで、相手はマイナスの印象をもたなくなります。
よく「少々お声が遠いようですが」というセリフを耳にいたしますが、私は、この言い方はマナーの本質からは外れた言い方だと捉えています。理由は、明らかに相手に問題があるから聞こえない、もっと大きな声で話して、と言っているようにも受け取られるからです。
ビジネスシーンで「もしもし」を使うことは、即マナー違反!というわけではないが、極力避けたいもの。通話中の相手の反応がなくなってしまった時など、つい「もしもし?」と声をかけてしまいがちだが、ちょっとした言い換えで相手とのトラブルを回避できる、ということもあるだろう。
西出氏:
ビジネス以外であれば使用していいと思います。しかし、ビジネス以外のシーンでも目上の方はいらっしゃいますから、それは矛盾していますね。
とはいえ、一般的に、電話に出るときには「もしもし」を使用しているわけですから、ビジネス以外の場であれば、使用して良いでしょう。
しかし、プライベートの電話に出るときも、第一声は「もしもし」よりも「はい」が多くなったように思います。電話をかけたときに「もしもし」よりも「はい」と出てもらうほうが、いい感じがします。
現代は、誰から電話がかかってきたのか表示されることも多々ありますから、プライベートでは「もしもし」や「はい」を言わずにすぐに「〇〇さん、どうしたの?」とか「〇〇ちゃん、今電話しようと思っていたの」などの会話にスムーズに入っていくこともありますね。
今回の“もやもやマナー”、ビジネスシーンでは「プライベートとの線引き」にご注意を!
(漫画:さいとうひさし)