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カルロス・ゴーン被告のレバノンへの国外逃亡という大ニュースが年末年始の日本を騒がせた。ゴーン被告はレバノンで記者会見を開き、多くの海外メディアの取材に応じる中で日本の司法制度に対する批判を多く繰り広げている。その主張をどうとらえるべきか、そこに正当性はあるのか、ゴーン被告を今後取り戻す方法はあるのか。今回の放送では森まさこ法務大臣・元東京地検特捜部検事 高井康行弁護士を迎え、日本の司法制度について議論を深めた。

ゴーン被告の逃亡に対する今後の捜査・措置はどうなる?

長野美郷キャスター:
森大臣のコメントは「できる限りの措置」。どこまで可能なのでしょう。

森まさこ法相:
実際の捜査に関わる話はなかなかできない。ただ一言言っておきたいのは「諦めません」ということです。

反町理キャスター:
継続的な取り組みとしての捜査の体制は? 専従班を作るようなことは行われるのでしょうか。

森まさこ法相:
捜査の内容に関わることを話せないのが悔しいですが、関係国・関係機関と密接に連携していくということ。その中で新しい情報も入ってきます。捜査機関は一生懸命やっているということは申し上げておきます。

森まさこ法相

元東京地検特捜部検事 高井康行弁護士:
個別の事件である一方、今回の本質は「日本の刑事司法そのものがコケにされている」ということ。だから日本の刑事司法制度の信頼を維持するために腰を据えてやらなくては。専従班が徹底的に追いかけるとか、そうした姿勢がない限り諸外国は協力してくれません。

森まさこ法相:
「諦めません」というのは最初に述べた通り。法を犯した者がいる、その恐れがある、嫌疑があるという場合常に捜査を行う。公判維持にも最大限努力する。それと切り離した問題として、日本の刑事司法が批判されているという問題がある。

「引渡し協定」「代理処罰」…ゴーン被告取り戻す方法はあるのか

反町理キャスター:
司法外交などの取り組みについては?

森まさこ法相:
法務省は最近、司法外交にも力を入れている。今年の4月には「京都コングレス」という国連の刑事司法についての会議があります。ここで日本の刑事司法制度が正当性を主張するし、あらゆる手段を通じて司法外交を進めます。国際的な共通課題、犯罪に対する連携して、お互いの国の刑事司法制度の共通理解が必要です。

反町理キャスター:
もしそこにレバノンの法務大臣を呼んで、森さんとサシで会談をやるなら、プライムニュースはしっかり取り上げますよ。向こうの言い分をぜひ聞きたい。引渡し協定がないということが不利だとよく言われるが、実際動きづらい?

森まさこ法相:
一般論で言うと、犯罪人引渡し協定があっても、ほとんどの国は自国民を引き渡さない。そこは難しい。相手国の法制度、被告人の国籍などを見た上で、できる限りの手段をとっていくということに尽きる。

反町理キャスター:
「代理処罰」という方法がある。「代理処罰」とは、逃亡先の国の政府に対し、相手国の法律に基づく処罰を要請することなどである。「代理処罰」についてはどうでしょう。レバノンにおいてゴーン被告の罪が問えるかわかりませんが、この道を探る可能性は?

元東京地検特捜部検事 高井康行弁護士:
それはありえない選択。日本の主権を一部譲り渡すことだから、次善の策としてもありえない。絶対に取り戻すというだけ。これは取引や交渉ではないのだから、原理原則から動いてはいけない。

森まさこ法相:
代理処罰は選択肢としても考えたことがありません

日本の司法における保釈のあり方について

高井康行弁護士

長野美郷キャスター:
今回、保釈の判断が甘かったのでしょうか?

元東京地検特捜部検事 高井康行弁護士:
甘かったが、しかしなぜ甘くなったか。裁判所も逃走の恐れを認識していたが弁護人が異例の保釈条件を提示し、その指導監督を信頼して保釈した。今思えばお人好しな判断だが、それなりの経営者と扱われていたゴーン被告がこのようにみっともない方法で国外に出るとは思っていなかった。日本人同士なら「恥を知る」となるが。

森まさこ法相:
保釈はこのところ広く認められるようになっている。子供に対する性犯罪の被告人さえも保釈される場合がある。そこで、今のような信頼を旨とする日本人の文化だけでいいのかという問題。公判前整理で被告人と弁護人が密に連絡をする必要性などを背景に保釈を広げてきて、今回のような不具合が出た。
そのため、逃亡や証拠隠滅ができないようにする工夫も必要。保釈中のGPS装着は国際的にも広く認められているが、人権侵害を指摘するご意見も勘案しながら検討を始めたところです。

「非人道的」「妻に会えない」ゴーン被告の主張に正当性はあるのか?

元東京地検特捜部検事 高井康行弁護士:
妻との接触禁止という条件は第1回保釈のときにはついておらず、特別背任罪で起訴となった2回目についた。この件に妻が共犯といえるレベルで関与し、彼女が通謀(示し合わせて犯罪などを企むこと)しているという証拠もあるということで、接触禁止がついた。「妻」との接触が禁止されたのではなく「共犯者」との接触が禁止されたということ。何も問題はない。
もう一つ、妻に会えないことを逃亡の理由としているが、ゴーン被告が逃亡を決意した時期はまだわからない。調べてみなければわからないが、この逃亡には相当の準備期間が要る。

反町理キャスター:
非人道的な扱いを受けていたという主張については?

森まさこ法相:
逃亡を正当化する理由にはならず、話にならない。ゴーン被告の主張では、日本の刑事司法制度において、保釈された場合も全ての人が家族に会えないと聞こえる。これは違います、許せない。一般的な場合は家族に会えるし、拘束中でも接見できるケースもある。

反町理キャスター:
国際世論戦の中で、ゴーン被告は情緒的な主張をしていますね。

森まさこ法務大臣:
日本の司法制度について批判し、あらゆる点から同情を誘うような感じですが、密出国は犯罪にあたりうるわけで、何ら逃亡を正当化する理由にはならない。
そもそも日本では、捜査機関が逮捕状を出すには裁判所の令状が必要。無令状逮捕が可能なことも多い諸外国より、相当に厳格な手続きをとっている。

日本の制度は本当に「人質司法」なのか?

長野美郷キャスター:
人質司法と批判されることもある日本の制度。今回のゴーン被告のケースについて、108日の勾留が長いという見方もあります。

元東京地検特捜部検事 高井康行弁護士:
108日の内訳、起訴前・起訴後の勾留がそれぞれ何日であったかを見なければなりません。起訴前は最長23日です。取り調べも連日行われるものではなく、10日で2回、1回あたり1時間ということもある。強調したいのは、起訴後は起訴した事実に関しては取り調べられないこと。海外メディアは自白させるために保釈しないのだと批判するが、大間違い。「自白を取る・取らない」と「保釈になる・ならない」は無関係の話。

森まさこ法相:
「人質司法」というワードを踊らせて言われることについては遺憾。拘束期間でいうと我が国は23日間、アメリカは逮捕から起訴まで30日に加えて延長もある。フランスには予審という制度があり、延長により最長4年8ヶ月まで拘束可能。わが国が諸外国に比べて長期拘束していることはない。実際ゴーン被告は保釈中であり、弁護人とも自由に会うことができた。

元東京地検特捜部検事 高井康行弁護士:
「人質司法」という言葉は日本国内から出てきた。日弁連の一部の人たちが使い始めた、正確な定義はなされていない言葉。それを海外のメディアがしっかり調べもせずに使っていると思う。

森まさこ法相:
制度の見直しは行ってきた。取り調べの録音・録画もできるようになった。また日本では、海外のようにおとり捜査や通信傍受などの捜査手法も認められておらず、立会人無しで被疑者・被告人が弁護人と接見することもできる。
これらを決して完璧だと言うつもりはない。指摘は謙虚に受け止めながらより良い制度を目指すということ。被告人にも被害者にも人権があり、その侵害とならないように感覚を研ぎ澄ませながら、その中で真実究明のために捜査を行う。結果として、日本は犯罪率の低い国になっている。この現実を理解してもらい、より良い制度を作っていきたい。

(BSフジLIVE「プライムニュース」1月17日放送分)