「売り手市場」がまだまだ続いていて、就活生にとっては嬉しい状況のはずだが、一方で悩みもある。
それは、「内定辞退」の方法だ。
「内定辞退したいけど、どのような手順を取ればいいか分からない」「先方から怒られそうで、内定辞退を言い出しにくい」など、内定を出してくれた企業に対して辞退を伝えるのは気が重いだろう。編集部でも、内定辞退をめぐるマナーについて取り上げたことがある。
(関連記事:「内定辞退は直接会って言うべき?」 それってホント!?もやもやマナー)
そんな就活生の強い味方となってくれそうなアイテムが最近登場し、ネット上で話題を集めている。
日本法令が2019年12月に発売したこの「内定辞退セット」(税別500円)に入っているのは、
1. 手紙用便せん 4枚
2. キレイに内定辞退を伝えられる記載例入り下敷き 1枚
3. 郵送用封筒 2枚
そしてその表紙には、一般的な内定辞退の仕方や内定辞退の流れ、社会人としての最低限のマナーについての解説が書かれている。
その一例を紹介すると、
・手紙の文例
「私なりに悩んだ末、別業界に進むことを決意いたしました。内定までいただきながら、はなはだ勝手ではございますが、何卒ご了承いただきたく存じます 」
・人事担当者への電話のかけ方
「大変心苦しいのですが、いただいた内定を辞退させていただきたいと思います。ずっとお世話になりながら、勝手を言って本当に申し訳ありません」
・気をつけるべきマナー
「『一身上の都合で』という文言は、会社を辞める時に使う常套句のため、内定辞退の手紙では使わない」「始業後30分以降、お昼休みを避け、終業30分前までに人事担当者に電話する」
購入者用特設ページでも解説
さらに、購入者専用コンテンツとして、表紙に記載されたIDとパスワードを使って、公式サイトの商品ページから特設ページに飛ぶことも可能だ。
そこでは、「内定辞退セット」の監修を務めるハナマルキャリア総合研究所・代表取締役社長の上田晶美さんが「どこの会社を選んだらいい?内定先の選び方」(約5分50秒)「こんな迷惑も?!内定辞退の失敗談」(約6分20秒)などのテーマで行う解説動画を掲載。「自分がやっていけそうな仕事内容なのか吟味する」「人事担当者の心証を左右する場合があるため、内定辞退の理由をハッキリ答える必要はない」などのポイントを丁寧に説明。
また、内定先企業の担当者とのやり取りを想定した電話会話例など、計4つのコンテンツを用意し、学生にとって役に立つ情報を提供してくれる。
確かに、「内定辞退セット」の内容を一通り押さえておけば、不安は少し解消されそうだが、売れ行きの方はどうなのだろうか? また、大学関係者はどうとらえているのか?
日本法令の担当者に話を聞いた。
「ゼミの教授がまとめて購入しているケースもあります」
ーー「内定辞退セット」開発のきっかけは何?
ある大学の関係者より、「内定辞退の連絡をしないまま放置する人や、LINEやSNSを使って内定辞退の連絡をする人がいてトラブルになっている」という話を聞いたのが、商品を作るきっかけとなりました。
ーー「内定辞退セット」でこだわって作った部分はどこ?
このセットがあれば、内定辞退が迷わずできるという点に力を入れました。手紙の書き方、電話のかけ方など、内定辞退するうえでの必要情報を専用サイトより動画で確認することができます。
ーーアイテムの中で勧めているのは電話と手紙どちら?
まず、手紙で感謝とお詫びの気持ちを伝えた後、電話をかける、という方法を想定しています。
ーー実際のところ、売れ行きはどうなの?
売り切れる店舗が多くあり、品薄の状態になっております。また、問い合わせも多くきており、売れ行きは好調です。
ーー「内定辞退セット」について、大学側の反応はどうなっている?
大学の購買部からの問い合わせは多いです。また、大学のゼミの教授がまとめて購入しているケースもあります。詳しくは分かりませんが、「このようなものがある」といった形で紹介しているようです。
背景に“学生と企業間のギャップ”
発売されたばかりだが、当事者の学生のみならず、大学関係者からも注目されているようだ。
続いて、「内定辞退セット」が注目される背景についても聞いてみた。
ーー「内定辞退セット」が注目される理由を何だと分析する?
時代が変わり、コミュニケーションの方法が簡略化されていっております。その結果として、学生が考えているコミュニケーションの仕方と、企業が求めているコミュニケーションの仕方にギャップが生じていることが理由としてあるのではないかと思っております。
ーー注目を浴びているのは、売り手市場ということも影響している?
影響していると思います。
ーー「内定辞退セット」が企業、就活生にあたえるメリットは?
企業と就活生の間でトラブルにならないことがメリットであると考えております。 また、そうした状況を願っております。
ーーところで、「退職代行」も話題になっているが、「退職セット」なども考えている?
退職については、「退職願セット」という商品をすでに発売しております。
ーー最後に、内定辞退や進路に悩んでいる人たちへ一言を。
内定を辞退することはとても勇気がいり、怖くなったりすることが多いと思いますので、このセットで何かお役に立てればと考えております。
就職活動を初めて経験する学生にとっては参考になるだろうし、企業にとっても「内定辞退」をめぐる学生の言動にイライラさせられることも少しは減るだろう。
こうした無用のトラブルを避けながら、是非双方にとって、いいマッチングの就活となるようにしてほしいものだ。
画像提供:日本法令