韓国もチャーター機で自国民を移送予定

日本で連日トップニュースとなっている中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大。

4人の感染者が確認され(2020年1月29日現在)地理的に中国により近い韓国でも緊張感が高まっている。ソウル市内のある大学病院には多くのマスク姿の人が集まり、感染防護服を着た病院職員もいた。入り口では中国への渡航の有無について聞かれ、氏名・連絡先を記入するよう求められるなどピリピリムードが漂う。

日本政府同様、韓国政府も感染拡大防止と自国民の保護に必死だ。交通が遮断されている武漢に取り残された自国民およそ700人を韓国に移送するべく、1月30日と31日にチャーター機を飛ばす予定だ。

この韓国政府の対応について「チャーター便もマスク支援も日本より一歩遅れた韓国政府」(中央日報)というタイトルの記事が出るのは、いかにも日本との比較が好きな韓国らしい。チャーター便を飛ばすタイミングが日本より遅い事や、日本の民間が中国にマスク100万枚を送り中国人から感謝の声が相次いだ事が悔しいようで「先制対応に失敗したという指摘も出ている」との内容だ。

ただ、自国政府の対応が適切なのかを他国の対応との比較で検証するのもメディアの役割なので、ここでは対応策を出すタイミングではなくその内容について比較していきたい。

症状が出ていない帰国者を2週間隔離する国も

武漢からの帰国希望者第一陣が29日チャーター機で帰国した

帰国を希望した日本人はおよそ650人だ。チャーター機で帰国後は、全員についてコロナウイルス感染の有無が調べられ、体調不良を訴える人は医師の診断を受けた上で必要ならば入院となる。体調に問題が無い人は、自宅あるいは政府が手配したホテルに移る事になる。移動後はウイルス感染が陰性だと確認されるまで外出しないよう日本政府は要請している。

ポイントは帰国後に全員を特定の施設に隔離することなく、症状が出ていない人は自宅やホテルに入れる事だ。この点が韓国やアメリカの対応とは大きく異なる。

体調不良を訴えた人は羽田空港から直接病院へ

韓国ではチャーター便で武漢から帰国した人は、体調不良が無くても全員韓国政府が用意した施設に入れられ、潜伏期間とされる2週間を目安に隔離される。外部との面会も禁止だ。隔離先はソウル近郊の公務員関連の施設で、医療スタッフが常時配置される。1日2回の検温と健康状態の検査が行われ、体温が37.5度を超えるか呼吸器に何らかの症状が出た場合には、直ちに医療機関に移送されるという。収容者には必要な物品も政府から提供され、生活に不便が無いようにする予定だ。

このような隔離政策を取る理由として、韓国では武漢から帰国した人たちからウイルスが拡散しかねないとの懸念の声が非常に多い事が挙げられる。中国の衛生当局は、症状が出ていない潜伏期間でもウイルスが他人に感染すると指摘しており、韓国国民の懸念を払しょくするために、症状が出ていない人を含めた隔離対策を取ったのだ。

またアメリカ政府も韓国と同様に、武漢から帰国した人は検査と経過観察のために最長2週間にわたり臨時の居住スペースに隔離する方針だ。オーストラリアのモリソン首相も、帰国する国民は検疫のため2週間島に収容して隔離する方針を発表している。フランス政府も同様に、チャーター機に乗って帰国したフランス人を2週間隔離する予定だ。

武漢からチャーター機で帰国した日本人が取材に応じ機内での様子を語った

他国とは異なる日本の対応は間違っていないのか

なぜ日本は対応が違うのか?

日本政府は中国衛生当局の見解とは異なり「陰性で症状がなければ感染リスクはほぼゼロに近い」と考えているためだ。一般的なコロナウイルスでは、症状が出ていない状態で別の人に感染する事は無いため、症状が出ていない人は自宅に帰っても感染が拡大するリスクは無く、症状が出た段階で対応すれば大丈夫という事だ。医学的に明確な根拠なしに長期間隔離するのは、人権の面から見て問題があると指摘される可能性もある。

最悪のケースを想定した感染拡大防止のための強い隔離対応を取るのか、無症状の人を帰宅させるのか、一長一短あるが日本政府はギリギリの判断を下したようだ。だが多くの国が隔離対策を取っている中で日本は異なる対策をとっており、この判断が原因で日本での感染が拡大した場合には、政府への批判の声が出るかもしれない。

チャーター機の利用料金にも差が

チャーター便の到着に伴い21台の緊急車両が出動し騒然となる羽田空港

日本政府はチャーター機で帰国する在留邦人に対して、利用料金として1人当たり約8万円を請求する予定だ。これは、東京~武漢間の片道分の正規エコノミー料金に相当するという。この8万円の支払いについては、ネット上で「請求は当然」「なぜ税金で賄わないのか」などと議論になっている。考え方は色々だろうが、ここでは海外の事例を紹介する。

韓国では成人1人あたり30万ウォン(約2万8000円)を請求する予定で、東京よりもソウルが武漢により近い事を考慮してもかなり安くなっている。チャーター費用の一部として、政府の在外国民緊急支援用予算という税金が投入されるためだ。今回のケースはもともと安全だった武漢に突然新型ウイルスが発生したものであるため、武漢在住の韓国人の「自己責任」が強く求められるような状況にはなっていない。そのため自国民保護の観点から税金が投入される事について、確認出来る範囲では韓国内で異論は出ていない。

またアメリカのメディアによると、武漢から脱出するアメリカ人には1000ドル(約11万円)が請求されるという。金額の多寡はあるが、帰国に伴うチャーター機の費用は本人が負担するというケースが多いのが事実だ。

29日、羽田空港に到着したチャーター機

【執筆:FNNソウル支局長 渡邊康弘】

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