男性向けに初のガイドブック

がん治療による副作用で、髪や眉毛、爪などに現れる“外見の変化”に戸惑い、苦痛を感じている人は少なくない。

一般的に男性は、女性に比べて外見を気にしないイメージがあるが、国立がん研究センター中央病院・アピアランス支援センターが男性がん患者823人に対して実施した調査では、「外見が男性の仕事における評価に影響を与えると思いますか」という質問に対し、約60%が「そう思う」と答えている。
また、「仕事中に今まで通り装うこと(外見を以前と同じようにみせること)は重要だと思いますか」という質問に対しても、約65%が「そう思う」と回答している。

こうした中、国立がん研究センター中央病院・アピアランス支援センターは、男性のがん患者を対象として、“外見の変化”の対処法を考えるガイドブック「NO HOW TO(ノーハウツー)」を作成し、1月24日からホームページで公開した。
女性向けのものは複数発行されているが、男性向けは初めてなのだという。

「はじめて毛が抜けたとき、大声で泣いた」

ガイドブックでは、“外見の変化”の問題だけでなく、外見が変化した時に直面する“仕事の問題”、“家族や身近な人との関係”、“自分自身の生き方”や“ライフスタイルの揺らぎ”についての対応を、男性がん患者のリアルなコメントをもとに作成している。

たとえば…
「はじめて毛が抜けたとき、大声で泣いた。男は見た目が大切、と思ってきた。人の前に立つ機会が多かったから、もう人に会えない。もう、立ちたくない。それが、スタート地点だった(60代男性)」

「ハゲるのイヤだ。どうしてもイヤだ。ずっと髪が濃かったから、ハゲてる人を心の中で笑っていた。ハゲた自分じゃ、友達にも会えない。仕事をする気にもなれない。仕事をしないと生活できない。でも、ハゲはイヤだ(40代男性)」

「ウイッグをつけたら、『お父さんじゃない』と、子どもが笑顔でいってきた。これが今の私なんだ、このままでいいんだ、と自信がわいた(40代男性)」

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また、“外見の変化”の問題にとまどう男性患者が、はじめの一歩を踏み出すヒントとなるような、ウィッグのケアなど基本的な対処法も盛り込まれている。

どのような思いがあって、このようなガイドブックを作成、そして公開したのか?

国立がん研究センター中央病院・アピアランス支援センターの野澤桂子センター長に話を聞いた。

男性患者で外見が気になる人でも声を上げにくい状況

――がん患者さんの外見ケアについて。女性向けの情報は多いのに対し、男性向けの情報が少ない理由は?

社会一般に、男性は女性よりも外見のことを気にしないと考えられています。

その結果、男性自身も、外見を気にすることは恥ずかしいことであるという意識があり、気になる人でも声を上げにくい状況があります。


――実際のところ、がん治療による外見の変化に悩んでいる男性は多い?

悩みを訴えてくる人、という視点で、人数的に言えば、女性に比べて少ないです。

ただ、変化した外見でどのように社会生活を送ればよいのか、という悩みを持つ男性は少なくありません。

ガイドブックに込められた3つの思い

――どのような思いがあって、このようなガイドブックを作成した?

理由は大きく3つあります。

1つめは「悩んでいいです。声に出して良いです。相談してください」ということをお伝えしたい、ということ。

2つめは「対処方法が人によって違う」ということをお伝えしたい、ということです。

外見の症状を無人島で悩む人はいないように、「この外見から病気がわかってしまい、かわいそうな人などと思われてこれまで通りの対等な人間関係でなくなったらどうしよう」などど、必ず自分が関わる社会的な場面を想定して悩んでいます。

つまり、外見の悩みは、社会との関係・生き方にも直結するものです。

だから、対処方法もその人によって違うこと、たった一つのHOW TOではなく、たくさんの方法があるということをお伝えしたいと考えました。

3つめは「混乱しているときの最初の一歩になってほしい」という思いです。
混乱しているときに、最初の一歩になるよう、基礎的な対処方法を載せ、情報に振り回されないように、と考えました。


「元の髪型とそっくりなウイッグ」を装着し周囲の見方が変わった例も

――がん治療後、外見の変化に悩み、それを克服した男性のがん患者の方の具体例を教えて?

60代の会計事務所の責任者の方です。

がん治療の副作用によって、「脱毛」し、病気がバレたら、「銀行から融資を撤回されてしまうのではないか」、「取引先やクライアントを失うのではないか」と悩まれました。

そして、(元の髪型と)そっくりなウィッグを装着。
その結果、治療前より髪が増えたので、周囲には「若い嫁さんをもらったから(ウィッグ)」とすまして答えました。
それによって、周囲の見方は「脱毛をしているかわいそうな中年男」から「若い嫁さんをもらったうらやましい男」にかわったといいます。

ちなみに、この方、実際に、病気になる前に年下の女性と結婚されています。


――がん治療による外見の変化に悩んでいる方はどこに相談すればよい?

まずは、病院の相談支援センターがよいと思います。


国立がん研究センター中央病院・アピアランス支援センターは2月中旬、「脱毛」「皮膚」「爪」などの“外見の変化”に対する、より具体的な対処方法を解説する、「NO HOW TO別冊」を公開予定だという。


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