【関連記事:「アイオワを制するものは大統領選を制す」のはなぜ? アメリカ大統領選挙の仕組みを9カ月かけて学ぶ

予想外の展開から見えてきたもの

ブティジェッジ氏が予想外のトップ、バイデン氏は屈辱の4位低迷。
それぞれの候補者の支持率=獲得代議員数を競う党員集会なので、順位に注目が集まるのは仕方ない。しかし、民主党の現状や予備選挙の行方を見通すには全く別の分析をしてみるのも面白い。(数字は集計率86%時点のもの)

リベラルに力強さ:
サンダース氏とウォーレン氏の合計支持率は43.7% 。対して中道のブティジェッジ氏、バイデン氏、クロブシャー氏の合計は54.7%
大都市がなく農村部が広がるアイオワ州は、中道~保守寄りといわれる。にもかかわらず、リベラル2人VS中道3人は10ポイント差。
リベラルの勢いをひしひしと感じる。

この記事の画像(4枚)

バイデンの弱さが際立つ:
中道の中でバイデン(15.9%)はブティジェッジ(26.7%)とクロブシャー(12.1%)の間に埋没した。前に11ポイント離されたのはショックだが、後ろに4ポイント差に詰め寄られたのも厳しい。全米支持率は高いのにアイオワで沈んだのは、知名度は高いが実際に会ってみたら期待ほどじゃなかったということ。ただし、クロブシャーの地元ミネソタ州はアイオワ州のお隣だし、ブティジェッジのインディアナ州もそんなに離れていない。地縁的親近感も働いたと思われる。

70代の年齢はマイナスじゃない:
サンダース(78歳)、ウォーレン(70歳)、バイデン(77歳)の合計支持率は59.6% 。他に有力候補者がいないからだが、トランプ大統領も73歳。今回に限っては70代は弱みにならない。
ただし私個人の印象だが、バイデン氏は年をとったなーと思う。副大統領の頃に比べ、話し方も身のこなしもスローだ。そこをみとがめられて、トランプに“Sleepy Joe”「寝ぼけたジョー(バイデン)」と揶揄されているに違いない。

2月これからの戦いの見どころ

2月の予備選挙は地理的にも人口構成面もばらけている
予備選挙は最初のアイオワ州が終わっただけだ。残る2月の戦いの見どころはというと;

ニューハンプシャー州予備選(11日)
アメリカ独立時の13州の一つ。
州のモットーは「自由に生きる、さもなくば死を」。
州人口の92%は白人。
独立自尊の気風とされ、選挙戦は典型的な「どぶ板選挙」だ。
サンダース(バーモント州)とウォーレン(マサチューセッツ州)の地元はいずれも隣の州なので知名度は高い。
1992年予備選挙では、アイオワ州で3位に終わったビル・クリントンが、続くニューハンプシャー州で同着1位に近い2位に入り復活。「カムバック・キッド」のニックネームを得て本選挙で大統領に当選した。
今回、アイオワ州で不本意な結果に終わった候補者は「カムバック」をかける。

ネバダ州党員集会(22日)
州人口のうち白人は51%、ヒスパニックが17%を占める。
年間の出生数は白人よりヒスパニックの方が多くなっている。
観光業やその周辺で働く労働者が多く、産業別労組や職域団体が党員集会のキー・プレーヤーに。
副大統領だったバイデンと2016年予備選を戦ったサンダースの知名度が高い。

サウスカロライナ州予備選(29日)
アフリカ系が州人口の27%あまりを占め、オバマ人気が根強い。
正副大統領コンビだったバイデン氏は、オバマ効果による支持率アップを期待したいところだ。

バイデン「撤退」あるか・・・?

アイオワでトップを取ったブティジエッジ氏は、2月を通じて勢いを継続できるかどうかが勝負ポイント。

バイデン氏は「復活」に手間取ると「撤退」の可能性が取りざたされることに。

サンダース氏は2016年に予備選挙を最後まで戦い抜いたことが財産になっている。固い支持層を築いているのでどの州でも大負けしそうにないことが強みだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋】
【表紙デザイン・図解イラスト:さいとうひさし】

「2020アメリカ大統領選」すべての記事を読む
「2020アメリカ大統領選」すべての記事を読む
風間晋
風間晋

通訳をし握手の感触も覚えていたチャウシェスクが銃殺された時、東西冷戦が終焉した時、現実は『過去』を軽々と超えるものだと肝に銘じました。
「共通の価値観」が薄れ、米も中露印も「自国第一」に走る今だからこそ、情報を鵜呑みにせず、通説に迎合せず、内外の動きを読み解こうと思います。
フジテレビ報道局解説委員。現在、FNN Live news α、めざまし8にレギュラー出演中。FNNニュースJAPAN編集長、ワシントン支局長、ニューヨーク支局記者など歴任。