のどかな風景が広がる村の一角に世界最大のロボットがあると聞き取材したいと考えた。
そして、ギネス世界記録に「人が乗ることのできる最大サイズ」と認定されたこのロボットを、誰もが持っている身近なカメラ「スマートフォン」でどこまで表現できるかをチャレンジしてみようと思った。

“世界最大”ロボットは「モノノフ=武士」

群馬県榛東村。
東京から車で2時間ほどのこの村の一角にある機械工場にそのロボットはある。

LW-MONONOFU(モノノフ)だ。
高さ約8.5メートル、重さ約7.3トン。
人を乗せて動くことができる有人搭乗型として最大サイズのヒューマノイド(人型)ロボットである。

最新版のギネス世界記録の表紙をめくれば最初に目に入るのがこのモノノフだ。
2019年9月にギネス世界記録に認定された。
外国人にも親しまれるように武士をイメージした姿から、「武士」の読み方の一つ「モノノフ」と命名された。

モノノフの生みの親、南雲正章さんは、「きっかけはその前から作っていたアミューズメントロボットで、もっと目立つものを作って会社の広告党になるようなものが欲しいと社長に言われて、モノノフを造りました」と語った。

6年かけて完成 操縦・歩行可能

南雲正章さん提供

2011年に製造を開始し6年かけて2017年12月に完成した。

モノノフはただの観賞用ではなく、胴体部分のコックピットに大人一人が乗って操縦することが可能。

両手を動かし、歩行することもできる。

製造したのは産業機械メーカー

製造した榊原機械株式会社は、人を楽しませる、いわゆるアミューズメントロボットの製造を専門とする会社ではない。

南雲さん:
畜産関係の環境機械という、糞尿を処理したり産廃を処理したりする機械を主に製作販売しております

宇宙ロケットの一部のように見える機械は、実は家畜の糞尿を処理するものだ。

同じ性能の機械が二つあった時、購入する人は最終的にはデザインで選ぶという社長の考えから、既成概念にとらわれない形にこだわっている。

生活や産業に密着した機械を専門とする機械工場が
一見、本業とは関係ないこのロボットを作った理由はなぜなのか。

南雲さん:
「アミューズメントというのもたまたまアミューズメントだっただけで、(本業の)畜産も昔からやっていたわけではなく土木の機械もやったりしていた。うちの会社で機械を造る、コンピュータを使う、基盤も作ったり、一から全部造ることができるので、その技術を使えるところの分野だったら出て行こうという考えでやっています」

一から全部造る。
自ら得意とする分野を、一見関係ないと思われる世界に活かす。
発想に境界を持たない、この「開拓者精神」こそが、世界一を生み出す原動力なのかもしれない。

編集後記

私が所属している報道局では通常はENGと呼ばれるカメラでニュース取材の撮影をしている。肩に担ぐ大きいカメラで皆さんも一度は見たことがあるのではないだろうか。
取材の時は、この他にも小型の業務用カメラやミラーレス一眼カメラで動画を撮る場面が多くあるが、それに比べ多くの人が所有しているスマートフォンはレンズもボディも遥かに小さい。

今回の取材はスマートフォンで行った。

テレビ局の取材が来ると聞いていた榊原機械の南雲さんは面喰らうのではないかと思ったが、意外にもそんなことはなかった。
というのもモノノフを造ってからというもの国内外の取材が殺到していて、あるところはENGカメラだったり小型の業務用カメラだったり、海外メディアは一眼レフカメラの動画モードで撮影したりとあらゆる撮影形態に慣れているようだった。

さすがにスマートファンだけで撮影する人はいなかったでしょう?と聞いたところ、海外のあるメディアはスマートフォンを使って中継までしたそうだ。

仮に私が今回のモノノフをENGカメラで撮影していたらどうなっていただろうか。

ENGカメラとスマホの動画機能を比べた場合、一番わかりやすい機能の違いとしてズーム機能がある。ENGカメラはレンズも巨大でズームしてかなりアップで撮影できる。モノノフのパーツだったり細かいところにズームしてディティールをもっと見せる映像表現をしたかも知れない。

スマホはズームしてアップの映像を撮ることが難しいのでその部分は割り切って今回撮影した。

今回VTRの編集もスマートフォンのアプリで行った。

製造者の南雲さんに提供していただいた製造途中のモノノフの写真もスマートフォンで撮影したものなので、スマートフォンの機能だけで今回のVTRは完成したのだ。本当にすごい時代になったと思う。

ちなみにスマートフォンのアプリでの編集を仕事の空き時間などに会社のデスクで行っていると、端から見るとただ勤務時間中にスマホでゲームしてるだけにしか見えないのがネックではある。

<取材・撮影・編集・執筆・ナレーション>石黒雄太
<撮影>三浦修、矢野冬樹